報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 束の間の休息 1

2021-07-04 22:52:53 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月26日16:10.天候:晴 埼玉県蕨市 JR蕨駅]

〔まもなく蕨、蕨。お出口は、右側です〕
〔The next station is Warabi.JK41.The doors on the right side will open.〕

 東京中央学園での戦いが終わり、稲生はマリアを連れて一旦は埼玉の実家に戻ることにした。
 電車に乗ってから、稲生は母親に実家に向かっていることを伝えた。
 すると……。

 稲生:「今、父さんとイオンモールで買い物中だって」
 マリア:「ああ。確かこの町にもイオンモールはあったな」
 稲生:「実際は川口だけどね。取りあえず、合流しよう。駅からバスで行けるから」
 マリア:「分かった」

〔わらび、蕨。ご乗車、ありがとうございます〕

 今日最後の快速電車に乗って帰って来た稲生達。
 田端から先は各駅に止まるので、『快速』の表記はそこまで。
 今は『各駅停車』の表記になっている。
 JRは停車パターンが変わると種別表記を変更するが、東武東上線のように、途中駅から各駅停車になっても意地でも速達列車の表示を変えない路線もある。
 魔道士はRPGの世界でも戦士などに比べれば体力の劣る職業というイメージがあるのだが、2人はまだ若いこともあってか、駅の階段をヒョイヒョイと登って行く。

 稲生:「西口始発だから、そこに行こう」

 改札口を出ると、左方向に向かう。
 蕨駅は東口のロータリーが手狭で西口は広い。
 また、蕨市の中心街は西口にあるので、普通なら西口が駅の正面と思うだろう。
 しかし、JRでは正面口に近い方からホーム番線を振る習慣が国鉄時代からあり、それによると1番線は東口側にある。
 また、京浜東北線そのものも東側を通っており、西口は長い跨線橋を渡る必要があることから、東口が正面なのだと思われる。
 跨線橋を渡っていると、足の下から中距離電車や貨物列車の轟音が聞こえて来た。
 さいたま市に住んでいた頃は、その轟音を立てて通過する中距離電車に乗っていたものだ。

 稲生:「先生を家に招くことができなくなるかなぁ……」
 マリア:「どうして?」
 稲生:「今までは新幹線を降りて、すぐ車に乗り換えれば家だったけど、今は京浜東北線に乗らないとダメだから……」
 マリア:「師匠はそんなこと気にする人じゃないよ。それに、どうしてもだったら、これで車に乗るくらい造作も無いから」

 マリアはアメリカンエキスプレスのプラチナカードを取り出して言った。

 稲生:「ま、まあ、それもそうか……」

[同日16:24.天候:晴 JR蕨駅西口→国際興業バスSC01系統車内]

 西口のロータリーからバスに乗り込む。
 本数は12分に一本という高頻度であったが、時間が中途半端だからなのか、そんなに乗客は多くなかった。
 2人は1番後ろの席に座った。

 稲生:「取りあえず、バスに乗ったことを母さんに伝えよう」
 マリア:「勇太のダディもそこへ?」
 稲生:「そうだよ」

 発車の時間になって、バスにエンジンが掛かった。
 クーラーの吹き出し口から、冷風が出て来る。

〔「16時24分発、イオンモール川口前川行き、発車致します」〕

 一昔前までの中扉開閉合図はブザーだった。
 しかし、今は電車のドアチャイムのようなものが流れる。

〔発車致します。ご注意ください〕

 バスは定刻通りに西口ロータリーを出発した。

〔♪♪♪♪。毎度、国際興業バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。このバスは、イオンモール川口前川行きです。途中お降りの方は、お近くのブザーでお知らせ願います。次は蕨駅東口、蕨駅東口でございます。……〕

 稲生の母親の佳子から返信が来た。
 モール内のスタバで待っているという。

 稲生:「モール内のスタバか……。まあ、比較的バス停から近いからいいか」
 マリア:「スタバって、どこにでもあるね」
 稲生:「そうだねぇ……」
 マリア:「アメリカよりも店舗数多くない?」
 稲生:「いや、それはどうだろう……?イギリスにもあるよね?」
 マリア:「あるよ」

 マリアは水晶玉を取り出した。
 手を翳すと、ボウッと何かの画像が浮き出て来る。
 そこに映っていたのは、ルーシーだった。

 マリア:「リーズのスタバで、コーヒー飲んでたところらしい」
 稲生:「へえ……。リーズって何県?」
 マリア:「イングランドの北部にある町だよ。私は行ったことないけど」
 稲生:「でもまあ、スタバがあるくらいだから、そんなに田舎ってわけでもないか」
 マリア:「まあ、そうだね」

[同日16:36.天候:晴 埼玉県川口市前川 イオンモール川口前川]

〔♪♪♪♪。イオンモール川口前川、イオンモール川口前川。終点でございます。お忘れ物の無いように、ご注意願います。ご乗車ありがとうございました〕

 バスが終点に到着する。
 乗客数は蕨駅東口から乗車した客達によって、だいたい席が埋まるくらいにまでなった。
 国道122号線を横断する時、バス路線の県道側の方が赤信号が長い為(国道と県道とでは、どうしても国道の方が優先道路になる)、そこで少し待たされた感がある。
 そこを過ぎると、イオンモールは近い。
 他の行き先のバスだと県道上のバス停で降りざるを得ないが、イオンモール川口前川が終点のバスだと、敷地内まで乗り入れる。
 イオンモール与野と違うのは、正に路線バスが敷地内まで乗り入れてくれることだ。
 全国のイオンモールの中でも、そういう所とそうでない所があって面白い。
 但し、イオンモール与野の場合は専用のタクシー乗り場があって、大抵は空車のタクシーが客待ちしているが、イオンモール川口前川にも一応タクシー乗り場はあるものの、その待機場所が無い為、利用客は建物入口にある専用電話でタクシーをその都度呼ぶ形となる(イオンモール与野にも専用電話はある)。

 稲生:「ここにも久しぶりに来るなぁ……」

 バスを降りて、最も近い入口に向かう。
 中に入ると……。

 稲生:「えーと……スタバは確か向こうだ」

 イベントなどが行われるホールに行くと、スタバが見えた。

 稲生:「ああ、あそこにいた」

 店内のテーブル席に、稲生の両親がいた。

 マリア:「合流して帰るのか?」
 稲生:「買い物がまだ終わってないみたいだから、付き合わされそうだよ」
 マリア:「何日も泊めてもらったのだから、それくらい当然だよ」

 マリアは納得しているかのように頷いた。

 稲生:「さすがだねぇ……」

 稲生は肩を竦めた。
 そして、両親の待つスタバへと向かった。
コメント (3)
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