報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「学校であった怖い話」 中盤

2021-07-28 20:58:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月2日15:30.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校1F新聞部部室]

 リサ:(何だか、作り話みたいでつまんないなぁ……)

 リサは自分も語り部達の話をメモすることにした。
 もちろん、石上が話したイジメの話もである。
 石上が部室から立ち去ったので、部室内は6人となっていた。
 そして、7人目は未だに来ない。
 2話目を話した3年生男子の古堂真は、かつてこの学校を仕切っていた不良グループに纏わる怖い話をしてくれた。
 体育会系に見えた古堂は、見た目に硬派系の不良という感じにも見受けられたが、どうやら後者であったらしい。
 実は運動部にまつわる怖い話も知っているということだが、今回はその話をしたという。

 古堂:「……以上で俺の話は終わりだ。この学校でヤンキーになるというのは、別の意味で命懸けってことだからな。何事も、ほどほどにってことさ。他にも運動部にまつわるネタもあるんだが、それはまあ、またの機会に話させてもらうぞ」
 田口:「ありがとうございました。それでは次は……」
 笠間:「じゃあ、今度はボクが話させてもらおうかな」

 男子4人の中ではイケメン……というより、優男と言った方が良い顔立ちの男子生徒が手を挙げた。

 笠間:「ボクの名前は笠間亘。3年3組だ。悪いけど、ちょっと怖い話としては趣旨がズレてるね、石上も古堂も」
 古堂:「あァ?」
 笠間:「だってそうじゃない。あくまでも趣旨は、この学校で起きた怖い話だよ。それなのに石上と来たら、結局死人は家で出ているし、愛原さんを勝手に妹の仇と決めつけて襲っただけ。古堂も、結局は学校の外で起きた怖い話じゃないか」
 古堂:「誰も校舎ん中限定の話だなんて言ってねーだろうが!」
 笠間:「その点、ボクはちゃんと学校の中限定の怖い話をしてあげるよ。皆、理事長の石像は知ってるよな?……そう。正門から入ってすぐの所にある、あの理事長の石像だ。実はね、あれは真夜中2時になると独りでに動き出すんだ。終わり」
 田口:「……はい?」
 リサ:「えっ?」
 古堂:「あ?」
 笠間:「うん。だから、終わりだよ。怖かっただろ?あの理事長の石像が勝手に動くなんて。しかも、ボクは宣言した通り、ちゃんと学校の敷地内で起こる怖い話をしてあげたよ。何か不満かい?」
 古堂:「短すぎるだろ、オメーよ!」
 田口:「す、すいません。古堂先輩の仰る通り、ちょっとこれでは短過ぎて記事にならないので、もっと詳しく話して頂けませんか?例えばそれで、誰か痛い目に遭ってしまった方とかいらっしゃらないんですか?」
 笠間:「痛い目か……。あの石像には、とんでもない秘密がある。今のところ誰もその秘密には触れていないみたいだから、痛い目に遭ったという話は聞いていないんだ。だけど、ボクはあの石像の秘密を知っている。どうやら、その秘密を人に話して初めて痛い目に遭わされるらしい」
 リサ:「そ、そんなに!?」
 田口:「どうか、そこをお話ししてくださいませんでしょうか?」
 笠間:「うーむ……」

 笠間はしばらく考え込んだ。

 リサ:(理事長先生の石像が動くなんて、他の学校の怪談でもありそうだ。私が昔いた研究所でも、アメリカのアンブレラの創業者スペンサーの銅像に仕掛けがあって、それを操作すると隠し扉が開くなんてのもあったっけ)
 笠間:「キミはどうなんだい?愛原さんと言ったね?」
 リサ:「あ、はい。是非聞きたいです」
 笠間:「分かったよ。よく見たら、2人とも可愛いもんな。可愛い後輩の女子達に頼まれたら、嫌とは言えないのが男子たるものだ」
 古堂:「なにカッコつけてんだよ。石上の前じゃ、そんなこと言えねーくせによ」
 田口:「古堂先輩、石上先輩のことを御存知なんですか?」
 古堂:「同じ3年だからな。廊下とかで見たことがある程度だ。多分、向こうもそうだろうよ。あいつ、軽い男は嫌いだってんで、とあるイケメンクソ野郎をカッターで逆襲しようとしていたぜ」
 笠間:「ああ、あいつか。自業自得だね。ありがとう。石上にはボクも注意しておくよ」
 古堂:「分かったら、さっさと続きを言え」
 笠間:「分かった。実はあの理事長の石像なんだが、痛い所があってね。その秘密を知ることにより、自分も痛い目に遭わされるんだろう。どんな痛い目に遭わされるか分かるか?」
 リサ:「さっきの古堂先輩の話みたいに、不良の幽霊に追い回されてボコボコにされる」
 笠間:「そんな野蛮なものじゃない。それは笑い死にだ。分かるか?」
 リサ:「笑い死に?」
 笠間:「そう。それが石像の秘密を知ったばかりに遭わされる痛い目なんだ。あの理事長の石像は見たことがあるだろう?あの石像は、理事長がまだ50歳くらいだった頃の姿をモデルにして作ったものらしいんだな。まだ50歳だ。下から見る限り、髪の毛もフサフサしている。だが、あの石像を校舎のとある窓から見ると……ハゲてるんだよ。顔立ちがキリリとした映画俳優みたいなのに、ハゲとのギャップが凄い!……あぁあ、いま思い出したら笑いが……!あーっはははははははははは!!」
 リサ:「……これ、ネタになる?」
 田口:「すいません。やっぱりカットにしようと思います」
 古堂:「笠間!テメェ、後で体育館裏に来いや、コラ!」

 確かに、痛い目に遭う話ではあったようだ。

 田口:「えーと……。それでは、次の話に移りたいと思います。次は、愛原さん、お願いできますか?」
 リサ:「私?いいよ。えーと……自己紹介からだっけ。私は1年5組の愛原リサです。よろしくお願いします。私がこれからするのは、旧校舎に括りつけられている“トイレの花子さん”の話。今から何十年も昔に起きた、怖くて悲しい話です」

 リサは旧校舎に巣くう“トイレの花子さん”の話をした。
 リサの語り口調は、けしてプロの語り部とは違い、素人そのものであったが、聞く者を引き込む何かがあった。

 リサ:「……そういうわけですから、けして“花子さん”は悪霊じゃないんです。少なくとも、あの石上さんから見れば、絶対に悪霊認定はされないと思います」
 田口:「今でも“花子さん”がいらっしゃるんですか」
 リサ:「そう。あと1人……生涯独身を貫いた為に子供がおらず、そのせいで『加害者の子供に代わりに復讐する』という目的が果たせず、未だに“花子さん”を旧校舎に閉じ込めているヤツが1人いる。それはこの学校に昔、科学教師として赴任していた白井伝三郎。あの世界的に悪名高いアンブレラの日本支部で働いていた白井。そいつと同級生。“花子さん”は白井に直接復讐すると言っている。だけど、白井が見つからない。だから私は、白井を捜しているの。皆さんも有力な情報があったら、よろしくお願いします」
 田口:「いきなり壮大になりましたね。……ちょっと休憩を挟みましょう。それまでに7人目の人が来てくれるといいのですが……」

 リサは白井のことを直接話そうか迷ったが、やはり“花子さん”の悲劇は語り継いで行く必要があると思い、この話をすることにした。
 奇しくも石上とは、同じ『イジメ問題』という共通点が発生していた。

 リサ:(もっとも、ややもすると、私もイジメっ子。“花子さん”に怒られないようにしないと……)

 石上の妹を自殺に追いやったイジメ加害者グループのリーダーも、リサにはこっ酷い目に遭ったこともあり、リサには怯えている。
 その怯え方から、まるでリサの方がイジメたと誤解されそうだ。
 恐らく石上はその話を聞いて、リサが黒幕だと誤解したのだろう。
 リサがその加害者リーダーに放った最後のセリフ、『明日は体育の授業中に脱糞させてやろうか?それとも、朝礼中にオシッコお漏らしの方がいい?好きな方を選べ』。
 ……うん、まるでリサの方が加害者だ。
 イジメの加害者を痛い目に遭わせてやったということで、“花子さん”には『よくやった!追撃の手を緩めるな!』と、逆に煽られたが。

 田口:「あ、あの……」
 リサ:「ん?」
 田口:「トイレ、行きますよね?」
 リサ:「行くけど?」
 田口:「い、一緒に行ってくれませんか?怖い話を聞いたせいで、その……怖くなっちゃって」
 リサ:「ふーん……。まあ、いいよ」
 田口:「ありがとうございます!あの、愛原さんは怖くないんですか?」
 リサ:「別に」
 田口:「そ、そうですか。愛原さんは強いんですね」
 リサ:「まあね。ある意味、あなたも勇気がある」
 田口:「えー、そんな……。私、怖い話は苦手で……。本当はこの企画の担当、断ろうと思ってたんですよ」
 リサ:「そんなことないでしょ。(私自身が怖い話のネタになる側だというのに、それにも気づかず一緒にトイレに行こうなんてヤツ、勇気あるに決まってるじゃない)」

 リサは田口より先に立つと、一瞬だけだが瞳を赤く鈍く光らせ、両手の爪を尖らせた。

 リサ:(こいつの老廃物と少しの血を啜ってやろうか……!)
コメント (1)
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