報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 悪魔の人形 3

2021-07-03 20:02:56 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月26日11:10.天候:晴 東京都台東区某所 東京中央学園上野高校・教育資料館(旧校舎)1F]

 稲生:「だ、誰だ!?」

 稲生が振り向くと、そこにいたのは、稲生が2度と見たくないものだった。

 呪いの人形:「…………」
 稲生:「うわっ!?」

 そこには無表情をしたマネキン人形がいた。
 大きさは中学生くらい。
 顔と髪があって、それだけが人間に近く、あとはマネキン人形そのものだった。
 その人形は稲生を見据えると、ダッと廊下を一目散に逃げて行った。

 稲生:「ま、待てっ!」
 マリア:「どうした!?」
 沼沢:「どうした!?」

 マリアと沼沢には見えなかったのだろうか。
 あの時と同じだ!
 人形の姿は生贄のターゲットにされた者にしか見えないのだ。

 ???:「おっと!」

 その時、稲生は廊下を歩いて来た人物とぶつかりそうになった。

 稲生:「す、すいませ……!」
 ???:「いきなり飛び出ると危ないよ?」
 稲生:「す、すいませんでした」

 そこにいたのは50代後半くらいのガッチリとした体型の男だった。
 髪はまだ黒いが、オールバックにしている。

 沼沢:「こ、校長!?」
 校長:「沼沢先生。何をしてらっしゃるんですか、ここで?」
 沼沢:「あの……うちの卒業生が訪ねて来ましてね。教育資料館を見たいというので、見せてあげてるんですよ」
 稲生:「ぼ、僕は第○×回卒業生で、沼沢先生のクラスにいた稲生勇太と申します」
 校長:「ほうほう、そうですか。私は校長の新井と申します。せっかく来てくれて申し訳無いのだが、最近、うちの学校で事故が発生してしまいましてね。卒業生と言えど、みだりに校内に入ってもらっては困るのです」
 稲生:「すいません。ちょっとこの人形を見たくて……」
 校長:「見たいのはその人形だけですか?」
 稲生:「ええ、そうですが……」
 校長:「分かりました。せっかく来てくれたのだから、それだけは許可しましょう。気が済んだら、速やかに退校してください」
 稲生:「わ、分かりました」
 校長:「沼沢先生も、こういう状況であることを自覚しないとダメじゃないですか」
 沼沢:「申し訳ありません」
 校長:「それでは……」

 校長はそう言うと、教室から出て行った。

 稲生:「沼沢先生、すいませんでした」
 沼沢:「いやいや、いいんだよ。それより、その人形には歴史的価値があるそうだが、それを知って来たのかい?」
 稲生:「そうなんです。マリアさんは人形作りが趣味でして、アンティーク人形にも造詣が深いんですよ」
 沼沢:「なるほど……」

 マリアはここにいる人形と『会話』した。

 マリア:「ミスター沼沢。この人形はあなたの仰る通り、歴史的価値の深いものです。もっとこの学校の生徒達に見てもらうべきです」
 沼沢:「と、仰いますと?」
 マリア:「できれば、向こうの新しい建物で展示してあげると良い。この人形がアメリカからやってきた意義を考えると、そうするべきです」
 沼沢:「そ、そうですか。それでは、今度の職員会議で上げてみます」
 マリア:「よろしくお願いします。とはいうものの、今はダメだ」
 沼沢:「どういうことですか?」
 マリア:「勇太」
 稲生:「沼沢先生、先日、この学校の生徒が突然死した事件がありましたね?」
 沼沢:「あれは事件じゃなくて事故だよ。警察の捜査の結果、事件性無しということになった」
 稲生:「死因は何ですか?」
 沼沢:「……心臓発作ということだ。金井はちょっと最近、具合が悪そうにしていたから……」
 稲生:「沼沢先生の知っている生徒ですか?」
 沼沢:「あっ……!」
 稲生:「本当の死因について、御存知なんですね!?」
 沼沢:「聞いてはいるが、部外者に喋ることではないから……」
 稲生:「衰弱死じゃないですか?」
 沼沢:「!」
 稲生:「それも、昨年も同じ死因で突然死した生徒がいるんじゃないですか?」
 沼沢:「な、何故それを!?」
 稲生:「沼沢先生なら御存知のはずです。『人形の呪い』のことを!」
 沼沢:「な、なな、何のことだ?!」
 稲生:「僕が先生のクラスの教え子になった時、2年生でした。その時、先生は、『これでもう誰も死ななくて済む』と仰ってたじゃありませんか!」
 沼沢:「カンベンしてくれ、稲生。教職員としての立場上、迂闊なことは話せんのだよ」
 稲生:「分かった。分かりました」

 稲生は踵を返すと、教室を出て行った。

 マリア:「勇太、どこへ行く?!」
 稲生:「校長室ですよ!『呪いの人形』はあそこにいるに決まってる!」
 マリア:「待て、勇太!ここでの目的は果たした!あとはどうなろうが、私達は関与できない!」
 沼沢:「その通りだ、稲生!頼むから、揉め事は起こさないでくれ!」
 稲生:「先生は自分の教え子が悪魔の生贄にされて、悔しくないんですか!?」
 沼沢:「……!」
 稲生:「アスモデウス!」
 アスモデウス:「ハーイ♪未来のマスター」
 稲生:「この学校に巣くう悪魔がどこにいるか、教えろ。正式契約してやるから」
 アスモデウス:「了!それじゃ、この契約書にパパッとサインしちゃって」
 稲生:「ついでにその悪魔を倒して、人形を滅することも契約書に書き足しておくからな!」
 マリア:「勇太、契約書よく読め!報酬の量がゼロ1個書き足されてるぞ!」
 稲生:「ええっ!?」
 アスモデウス:「ちぇっ、バレちった♪」
 ベルフェゴール:「キミも下級悪魔みたいなことするねぇ……」
 沼沢:「な、何だこいつらは!?いつの間に現れた!?」
 稲生:「沼沢先生、この際だから白状しますけど、僕の今の仕事は魔道士なんです。こいつらはキリスト教に出て来る有名な悪魔、アスモデウスとベルフェゴールです。あの校長先生が契約している悪魔なんかより、ずっと上級で強い悪魔達です。『流血の惨を見る事、必至であります』が、『血で血を洗う』、『毒には毒を以て制す』ことも時には必要かと」
 マリア:(勇太のヤツ、会話しながら呪文を唱えたナ……)
 稲生:「それじゃ行くぞ!」

 真昼間の校長室に大絶叫や断末魔が上がったことは言うまでも無い。
 尚、『平成の悪魔人形事件』では、荒井校長は悪魔に肉体ごと魂を持って行かれて行方不明となった。
 しかし、今回の『令和の悪魔人形事件』においては、新井校長は、悪魔が稲生達に退治されてしまった為、死なずに済んでいる。
 但し、悪魔退治の際に発生した衝撃で、校長室の窓ガラスをブチ破って外に出たことで大怪我をしてしまい、救急車で病院に運ばれた。
 魂が足りずに稼働できなかった『新井人形』にあっては、魔道士達が魔法で処分した。

 稲生:「魂が12か。あと1個だったんだな……」
 マリア:「それってつまり、勇太が卒業して、そんなに間もなくまた事件が発生したことになるよ?」
 エルフェゴール:「いや、違う。ここ数年の間だ。あの中級悪魔は下級から昇級したことで、調子に乗って年に数個ずつの魂を集めたようだな」
 アスモデウス:「ま、下級が中級になったところで、所詮ウチらの敵じゃないしぃ」
 マリア:「人間が契約できる悪魔なんて、中・下級がいいところだろ。……ん?じゃあ、何でオマエはまだ人間だった頃の私と契約したんだ?」
 ベルフェゴール:「そりゃ将来、立派な魔道士になって、ボクのステータスになれる人材だと思ったからだよ。ボク達、上級悪魔は目先の契約に捉われず、契約相手が本当にボク達に相応しい人物かどうかを見定めてから契約するかどうかを決めるのだよ」
 アスモデウス:「『怠惰』の悪魔がヒマし過ぎてたもんで、たまたま散歩してたらアンタを見つけただけだよ」
 マリア:「どっちもウソっぽいな」
 稲生:「校長の記憶まで消してくれて、学校から僕達が校内にいた記録まで全部消してくれて、本当に助かったよ」
 アスモデウス:「フフン♪そうでしょ?」
 マリア:「ジェシー(教育資料館にいた『青い目の人形』の名前)から新たな情報は得られた。今度はもう少し難しそうだぞ」
 稲生:「今度は何ですか?」
 マリア:「『マリアンナを助けてほしい』だって」
 稲生:「マリアさんを!?」
 マリア:「私と同じ名前の人形が、またどこかの暗闇に閉じ込められているらしい。それをまた無事に探し出すことができたら、今度こそクエストクリアだ」
 稲生:「100年近く前の人形ですけど、探せば案外まだあるものですなぁ……」

 稲生とマリアは取りあえず、稲生の実家へと帰って行った。
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“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 悪魔の人形 2

2021-07-03 15:43:59 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月26日10:00.天候:晴 埼玉県蕨市 JR蕨駅→961C電車10号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうごさいます。今度の1番線の電車は、10時ちょうど発、快速、蒲田行きです。次は、西川口に止まります〕

 約束の週末になり、稲生とマリアは東京中央学園に向かうことにした。

 稲生:「昨夜、変な夢を見てね……。僕を襲ったあの人形が、枕元に立ったんだ」
 マリア:「それはもう本当だろうな。呪いの人形が、また現れてしまった」

〔まもなく1番線に、快速、蒲田行きが参ります。危ないですから、黄色い線まで、お下がりください。次は、西川口に止まります〕

 マリア:「だけど今回の私達の目的は、『青い目の人形』だ。『呪いの人形』じゃない。誰かからの依頼があればともかく、余計なことに首を突っ込むわけにはいかない」
 稲生:「……分かったよ」

 電車がやってくる。

〔わらび、蕨。ご乗車、ありがとうございます。次は、西川口に止まります〕

 南浦和始発で今日最初の快速は空いていた。
 座席に座ると、すぐに発車メロディが鳴る。

〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車のドアとホームドアが閉まって、電車が走り出した。
 東京中央学園だけが日常から切り離されているのかと思うほど、ここは日常的だ。
 いや、魔道士2人が乗って来たというだけで、もうこの電車も日常から切り離されてしまったのかも。

〔次は、西川口です〕
〔The next station is Nishi-Kawaguchi.JK40.〕

 稲生達は普通の人間と変わらぬ状態で乗っている為、辛うじてこの電車は日常を走り続ける。
 もしも魔法を使おうものなら、【お察しください】。
 そして、本来なら日常であるはずの東京中央学園上野高校も、新たな悪魔が棲み付いてしまったが為に、日常から切り離されてしまったのだ。

 稲生:「マリア。やっぱり僕は、あの呪いの人形について調べたいよ」
 マリア:「それは、先輩として許可できない。今回の『青い目の人形』の件だって、元々はミスター田部井からの依頼が始まりだ。今はその成り行きに従っているだけに過ぎない。師匠からも、今は『成り行きに従って』という指示だからね」
 稲生:「では、その成り行きに『呪いの人形』が関わってきたら?」
 マリア:「その時はその時だ。もしも敵対してくるような事があれば、その時はブッ潰してやるといい」
 稲生:「分かりました」
 マリア:「もっとも、姑息な悪魔が、そんなことをするとは思えないけどな」

[同日10:24.天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅]

〔まもなく上野、上野。お出口は、右側です。新幹線、高崎線、宇都宮線、常磐線、上野東京ライン、地下鉄銀座線、地下鉄日比谷線と京成線はお乗り換えです。上野の次は、御徒町に止まります〕
〔The next station is Ueno.JK30.The doors on the right side will open...〕

 田端~上野間は快速電車として通過する。
 本来なら次の御徒町駅も通過していたのだが、地元商店街関係者の根強い反対運動により、休日ダイヤは停車するようになった。
 ついでに何の通過反対運動も無かったと思われる神田駅にまで停車するようになり、ますます快速電車の存在意義が薄れることになった。いっそのこと、高輪ゲートウェイは通過でいいのでは?
 で、日暮里駅には意地でも停車しないw

 稲生:「天気もいいし、緊急事態宣言も解除されて行楽日和。とても、悪魔が関わっているようには見えません」
 マリア:「悪魔ってのはそんなものさ。人間の日常に、しれっと忍び込んで来る。私だって神に祈った時、手を差し伸べて来たのは悪魔だったからな」

〔うえの、上野。ご乗車、ありがとうございます。次は、御徒町に止まります〕

 電車が到着してホームに降りる稲生達。
 都内のターミナル駅の1つである上野駅は、多くの人で賑わっていた。
 但し、多くの鉄道会社が乗り入れて来る池袋駅や新宿駅よりは歩きやすいと思う。
 稲生が呪いの人形に取り殺されそうになった時も、同じように上野駅から学校に向かった。
 その時は、呪いの人形が護衛するように歩いていた。
 今その位置を、契約が内定している悪魔アスモデウスが歩いている。
 今はパリピ系ギャルの姿をしているが……。

[同日10:40.天候:晴 同地区内 東京中央学園上野高校]

 件の学園に到着すると、さすがに規制は解除されていた。
 だが、敷地内に入ると、魔道士達は学園内の異様な雰囲気に体を震わせることになる。

 マリア:「何だこの瘴気は?」
 稲生:「あ、あれだ。僕達が魔界の穴を封鎖する前の空気と同じだ」
 マリア:「んん?やっぱり魔界の穴がまた開いたのか?だけど、それは私達の仕事じゃない。依頼でもされない限りはね」

 魔道士の世界も徹底した契約社会である。
 契約に無いことは基本的に行わない。
 但し、利害関係が発生していたり、顧客サービスの一環として何か行う場合はこの限りでは無い。

 稲生:「せっかく苦労して塞いだのになぁ……」

 稲生は悔しそうな顔をして、まずは事務室に向かった。
 そこで沼沢教諭と会う約束になっている旨を伝えた。
 週休2日制の高校だが、さすがに今週一杯はあの事件のせいで休校になったそうだ。

 沼沢:「よう、稲生。この前はすまなかったな」
 稲生:「いえ、沼沢先生も大変でしたね」
 沼沢:「教育資料館だったな。鍵を持って来たから、開けてやる」
 稲生:「お手数お掛けします」
 マリア:「……!」

 マリアは事務室の前の廊下の奥に何かを感じて、透視するかのように見据えた。

 稲生:「やっぱり何かいますか?」
 マリア:「多分な。でも、私達には関係無い」
 沼沢:「稲生、そちらの外国人さんは?」
 稲生:「僕の仕事の先輩で、マリアンナ・スカーレットさんと言います」
 マリア:「マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレットです。よろしく」
 沼沢:「メチャクチャ日本語上手いですね。私が英語を話すまでもなさそうです」
 マリア:「いや、だったら英語でお願いします」

 因みに今のマリア、別に日本語を喋っているわけではない。
 喋った英語を、聞く者には日本語に聞こえる通訳魔法具を使用しているのだ。
 マリアの話し方が硬いのは、通訳の仕方のせいである。

 稲生:「そういえば沼沢先生、英語の先生だった!」
 沼沢:「そうだよ。忘れてたのか?」
 稲生:「すいません」

 一旦、現校舎の外に出る。

 マリア:「ところで勇太。さっき私が見ていた廊下の奥には何がある?」
 稲生:「何がって、色々あるよ。職員室だったり校長室だったり、トイレだったり……」
 マリア:「そうか……」

 そして、木造2階建ての旧校舎に到着した。

 マリア:「そうだそうだ!この角度、やっぱり間違いない!」
 稲生:「この校舎だったとは……」

 沼沢は古めかしい大きな鍵で、正面玄関のドアを開錠した。

 沼沢:「はい、どうぞ」

 中に入ると、現校舎とは違う空気や匂いが漂っていた。
 稲生が現役だった頃は現校舎以上に怪談話の宝庫ではあったが、今では逆に旧校舎の方が落ち着いているように思える。

 マリア:「ここにはあまり悪魔は来ないみたいだな」

 一応のリニューアルはされているので、板張りの廊下についても傷んだ板については交換されている。
 その奥に入り、元は教室だった部屋に通された。

 沼沢:「『青い目の人形』というのはあれですね」

 かつては木製の古い机や椅子が放置されていた教室であったが、それは撤去され、代わりにショーケースが置かれている。
 その中に、古い西洋人形がショーケースに入れられて展示されていた。

 マリア:「あれだ!間違いない!」
 稲生:「沼沢先生、あの人形をショーケースから出せますか?」
 沼沢:「ああ、分かった」

 沼沢は持っていた鍵の一本で、ショーケースの鍵を開けた。
 マリアが鑑定と透視をする為、その人形に手を伸ばした時だった。

 稲生:「!!!」

 突然、背後に突き刺さるような視線を感じ、振り向くとそこにいたのは……。

 1:呪いの人形
 2:トイレの花子さん
 3:リサ・トレヴァー
 4:校長
 5:得体の知れないモノ
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