報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「新宿駅・湘南新宿ラインホーム」

2019-11-28 19:41:22 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月23日12:39.天候:雨 東京都新宿区新宿 JR新宿駅]

 “成田エクスプレス”は空港第2ビル〜東京間、ノンストップである。
 千葉駅を通過したら隣に黄色い中央総武線が、都内に入ったら入ったで別の通勤電車が並走するようになる。

 エレーナ:「稲生氏、質問があるみたいだぜ」
 稲生:「えっ?」

 ローブのフードを深く被った魔女がエレーナやマリアに耳打ちしてくる。
 彼女らは数少ない日本国内への永住者である為、観光ビザで入国してきた他の魔女達よりは日本国内のことを知っているだろうとのことで。
 しかし、本来は唯一の日本人である稲生に聞くのがベストである。
 だが、彼女達はそうしない。
 別に内規でそう決まっているわけではなく、人間時代に受けたトラウマでできないのだ。
 内規では別に門内での恋愛・結婚は自由とされているが、場合によっては禁止した方がいいこともある。
 しかしそれをしないのは、トラウマでできない者が多い為、あえて禁止にする必要が無いということなのだ。

 エレーナ:「東京スカイツリーだ?いや、この電車じゃ行けねーよ」
 マリア:「勇太、東京都庁って新宿だっけ?」
 稲生:「新宿です」
 エレーナ:「東京タワーの行き方?ホウキで直接行きゃいいだろ。乱気流凄いけどw」
 マリア:「勇太、サンシャイン60って池袋駅から何分?」
 稲生:「その隣の東池袋駅から行った方がいいですよ。……って、何で皆して超高層建築物に昇りたがるんですか」

 ホウキ乗りの魔女にとって、その超高層建築物を飛び越えることがステータスにでもなっているのだろうか。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、新宿です。中央快速線、中央・総武緩行線、山手線、小田急線、京王線、地下鉄丸ノ内線、地下鉄副都心線、都営地下鉄新宿線と都営地下鉄大江戸線はお乗り換えです。新宿の次は終点、池袋です〕

 稲生:「おっと!もう到着だ。先生達に教えてあげなきゃ」

 稲生は急いで席を立った。

 エレーナ:「1人じゃ大変だな〜」
 マリア:「私もいるから」

 マリアは勇太についていった。

 エレーナ:「おいおい。マリアンナまで行ったら、残りの奴らが干されるだろうが。……ったく。おい、みんな!降りる駅だぜ!」

 仕方が無いので、同じ永住者のエレーナが11号車の弟子達に声を掛けた。

 ルーシー:「相変わらずねぇ……」

 ルーシーは荷棚に置いた自分の荷物を降ろしていた。

 エレーナ:「アホか、アンタ!使い魔の黒蛇、ちゃんと隠せ隠せ!」

 エレーナは他の魔女に注意する。

 魔女A:「こんにちは。ルーシー」
 ルーシー:「え?ああ、こんにちは」
 魔女A:「マリアンナと仲がいいの?」
 ルーシー:「同じイギリスだしね。それが何か?」
 魔女A:「マリアンナがさっきの日本人と男女の関係ってホント?」
 ルーシー:「本当よ。レアケースだから、やっぱり目立つのね」
 魔女A:「ふーん……あのマリアンナがねぇ……。ふーん……」
 エレーナ:「おい、デッキのバッグ、アンタのか!?早く持ってって!」
 魔女A:「はーい」

 “成田エクスプレス”のデッキには、大型のキャリーケースが置けるスペースが設けられている。

〔しんじゅく〜、新宿〜。ご乗車、ありがとうございます。次は、池袋に止まります〕

 稲生達はぞろぞろと列車を降りた。
 因みに乗車時には12両編成だった列車も、東京駅で分割されて、今は6両編成になっている。
 要は6両で1編成の車両を2編成繋いでいたのだ。

 稲生:「先生方、お疲れさまでした。それではですね、次の乗り換え先の電車がこの隣のホームから出ます」
 イリーナ:「おお、凄い便利だねぇ……。聞きました、先生?」
 ダンテ:「さすがは将来のクロックワーカーに相応しい。時刻の使い手だ。基本はどうやらできているようだな」
 イリーナ:「ありがとうございます」
 稲生:「僕はただ時刻表を見ながら列車を予約しただけですよ」
 ダンテ:「時間にルーズな者は、そのトリックが使えぬのだ。それだけでキミは素質があると見受けられる」

 イリーナ組がそういうやり取りをしている中、ルーシーは……。

 ルーシー:「先生、お疲れさまです」
 ベイカー:「いやいや。私はダンテ先生のお傍にいられるだけで幸せだで……。それより、あなたは好きなことをしていなさい。ダンテ先生は、私達の弟子が生き生きしている所を見られるのが好きなんだ」
 ルーシー:「は、はい!」

 ルーシーは出て行く“成田エクスプレス”の車両をカメラに収めた。

 ルーシー:「ん?稲生とマリアンナは?」
 エレーナ:「予約していた昼飯の弁当を取りに行ったぜ。40人分だから相当な量だろう」
 ルーシー:「うわ……」

〔まもなく6番線に、当駅止まりの列車が参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください。折り返し、13時ちょうど発、特急“きぬがわ”5号、鬼怒川温泉行きとなります。……〕

 ルーシー:「ワゴン販売で買えばいいんじゃないの?」
 エレーナ:「それが無いから弁当屋に注文したらしいぜ」
 ルーシー:「凄いねぇ。私は手伝わなくていいかな?」
 エレーナ:「アンタも観光ビザの入国者なんだから、先生のお守りでもしてたらどうだ?」
 ルーシー:「エレーナは?」
 エレーナ:「大師匠様の御相手で忙しいってんで、追い返されたぜ」
 ルーシー:「皆同じなのね……」
 エレーナ:「それより今度乗り換える電車は、新幹線的なスタイルのヤツだ。さっきの電車も近代的なスタイルだったが、今度のヤツもなかなか個性的たぜ」
 ルーシー:「エレーナ、詳しいね」
 エレーナ:「なぁに。前に東京スカイツリー越えにチャレンジした時、よく見かけたもんだぜ」

 ロクな結果にならなかったことは言うまでもない。

 稲生:「すいませんね。わざわざここまで運んでくれて……」
 弁当屋:「いえ、いいんですよ」
 マリア:「一応、酒入ってる」
 稲生:「ビールとかチューハイくらいは飲むって聞いたから」
 マリア:「ま、飲めるのは先生達くらいか」

 そんなことを話しながらホームに戻って来た稲生達。

 エレーナ:「稲生氏、稲生氏!」
 稲生:「エレーナ、どうした?」
 エレーナ:「今、乗り換え先と思われる電車がやってきたんだけど……」
 稲生:「うん、また1番後ろの車両だよ。ってか、グリーン車の無い電車だったんだけど、ドン引きだったかな?」
 エレーナ:「いや、どうせ私達はそれでもエコノミークラスにしか乗れないんだから、そんなことはどうでもいいんだ。それより……」
 稲生:「それより?」
 エレーナ:「何か想像してたのとは違う電車がやってきて、ルーシーがカメラ片手に固まってるぜ」
 稲生:「あー……」
 マリア:「Huh?」

 それは何故か?

 1:東武100系スペーシアじゃなかったから。
 2:東武200系りょうもう号の車両だったから。
 3:ぶっちゃけ通勤電車だったから。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「ダンテ一門の移動」

2019-11-28 17:19:28 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月23日11:16.天候:雨 千葉県成田市 JR空港第2ビル駅]

 ダンテ門流魔法道の創始者、ダンテ・アリギエーリを乗せた飛行機が着陸した。
 飛行機はイギリスのロンドンからやってきたもので、日本までのアテンド役はベイカー組に任された。
 ベイカー組は“魔の者”(の眷属)に弟子を2人殺されてしまったので、現在在籍している弟子はルーシー・ロックウェルしかいない。
 それでも無事に到着できたことで、出迎えた直弟子(1期生)達は大喜びだった。
 孫弟子(2期生。一部3期生含む)達は喜びよりも、むしろ緊張の色の方が大きい。
 特にアテンド役の1人であるルーシーは、本来なら自分自身の訪日とマリアとの再会を大きく喜びたいところなのだろうが、それどころではなかった。

 稲生:「全部で40人か。結構な参加だな……」
 エレーナ:「それでも半分以下だぜ?新規入門者を入れれば、もう100人以上はいるから」
 マリア:「日本まで来るのは大変だからね。まず見習は勇太を除いて参加できないし、だからアナスタシア組も意外と人数は少ないわけ」
 エレーナ:「数だけ多いけど、実際は見習だらけってことだな」
 稲生:「大師匠様はもちろん、大魔道師の先生方はグリーン車だ。僕達は普通車になるけどね」
 エレーナ:「私らの立場を理解すれば当たり前だぜ」

〔まもなく東京、大船、池袋行き、“成田エクスプレス”16号が到着します。黄色い線まで、お下がりください〕

 地下ホームに接近放送が鳴り響く。
 当然ながら日本語放送の後で英語放送が流れた。
 そして轟音と強風を伴って、12両編成の特急列車がホームに入線してくる。

 稲生:「先生方が乗られるのは12号車のグリーン車です」
 イリーナ:「センセ、1番後ろのようですわ」
 ダンテ:「うむ」

 ダンテは黒い山高帽にグレーのマフラーを首に巻き、黒いスーツの上から黒いローブを羽織っていた。
 さながら“ゴッドファーザー”のようであり、手に魔法の杖さえ持っていなければ、どこからともなくトンプソンを取り出して、敵を蜂の巣にしそうな勢いである。

 稲生:「こちらです」

 12号車はダンテ一門の貸切になっている為、ガラガラの状態であった。
 アテンド役の稲生は先にダンテ達をグリーン車に案内した。
 グリーン車の座席は革張りのレザーシートである。

 稲生:「大師匠様と先生方はこちらの車両をご利用ください。下車駅は新宿です」
 ダンテ:「おっ、ありがとう」

 稲生は自分を含む残りの孫弟子達を11号車に案内する。
 さすがに11号車は貸切ではなく、12号車寄りの3分の1くらいのスペースが貸切なだけである。

 エレーナ:「稲生氏、一緒に座ろうぜ。この座席、クルッと向かい合わせにして」

 ダンテ達とは車両が違うだけで気が楽になるエレーナ。

 稲生:「まあ、いいけど。僕は1番こっち側の方がいいね」

 稲生は12号車へのデッキに最も近い席に座った。
 そうこうしているうちに、新型の特急列車はインバータの音を響かせて発車した。

 マリア:「ルーシーもこっちに座ろう」
 ルーシー:「うん」
 エレーナ:「大師匠様のアテンド役、大変だったな?」
 ルーシー:「飛行機に乗ってしまえば、大師匠様はファーストクラスだし、私と先生はビジネスクラスに乗れば良かったから。でも、時々先生が大師匠様の所へ行かれるのは緊張したかな」

 基本的に機内ではダンテの相手をしたのはベイカーであったので、ルーシーはただ見ているだけで良かったのだが。
 本当にそれでいいのか、自分も何かしないといけないのではないかという緊張で一杯だったという。

 エレーナ:「帰りもアテンドだろ?大変だな」
 稲生:「笑っているけど、もしも大師匠様がウクライナに行かれることになったら、今度はキミがアテンド役だよ」
 マリア:「その通り」
 エレーナ:「ど、どうせしばらく無ーよ」

 そこへ車掌がやってくる。

 車掌:「失礼します。12号車のお客様方の幹事様は……?」
 稲生:「あ、はい。僕です」
 車掌:「恐れ入りますが、団体乗車券の確認を……」
 稲生:「あ、はい」
 
 ダンテ一門は『訪日観光団体』として乗車している。
 学生団体より割引率は低い。

 稲生:「あとこの車両の、そこの座席までですね」
 車掌:「かしこまりました」

 車掌の車内改札を受ける。

 稲生:「乗り換え先でも、多分検札あるな」
 ルーシー:「当たり前でしょ」

 ルーシーがさも当然のように言った。

 エレーナ:「おっ、さすが鉄道員の娘」
 ルーシー:「いや、常識だって」

 マリアはモスグリーンのダブルのブレザーを着ているが、ルーシーも今回はラフな服装ではなく、えんじ色のシングルのブレザーを着ている。
 スカートは同じ色のタイトスカートだった。
 マリアが日本の学校制服をモチーフにしたのに対し、ルーシーはイギリスの女子学生の服をモチーフにしたのかもしれない。
 少なくとも、現役時代の制服をそのまま持って来たわけではないようだが……。

 エレーナ:「それにしてもホウキで空港まで向かうの大変だったぜ」
 稲生:「ホウキで向かったの!?」
 エレーナ:「だいぶ手前で降下しないと、飛行機にぶつかって危ねー」
 稲生:「いや、そりゃそうだろ!」
 マリア:「アホか、オマエ」
 ルーシー:「ただでさえローマ教皇の来日で、教会の関係者達が警戒してるというのに何してるの」

 エレーナの奇行にマリアはツッコみ、ルーシーは呆れた。

 エレーナ:「先生達の様子は見に行かなくていいのか?」
 稲生:「うちの先生がいいって。大師匠様も長旅でお疲れだろうから、少なくとも電車の中では静かにするみたいだよ」
 エレーナ:「本番は今夜の宴会か……」

 エレーナはニヤリと笑った。

 稲生:「ファーストクラスはベッドのようにフラットの状態になるんだろう?それでも疲れるのかい?」
 ルーシー:「長旅は色々と気を使うから、ビジネスクラスもフラットになるタイプだったけど、私も殆ど寝れなかった」
 エレーナ:「おい、大丈夫かよ?」
 ルーシー:「一応、回復魔法は使えるから。HPはこれで回復する」
 エレーナ:「そしたら今度はMPが減るだろ?良かったらエリクサー、売ってやるぜ?」
 稲生:「売る気かよ」
 エレーナ:「エリクサーはポーションより高いんだ。当たり前だぜ。今なら魔界価格で売ってやる」

 魔法薬は全て魔界で調達する為、現地で買った方が断然安い。
 にも関わらず、ゲーム終盤になると高くなるRPGの不自然さ。

 ルーシー:「考えておくわ。もしかしたら先生方が元気に盛り上がるのは今日じゃなくて、最終日の東京のホテルかもしれない」
 稲生:「なるほど。ある程度休んでからの方がいいってか」

 ダンテ一門は、まずは都内へと向かった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする