報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの帰宅」

2019-11-12 19:07:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月3日14:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はリサが大手製薬会社経営の斉藤秀樹社長の娘さんと一緒に帰って来る日だ。
 楽しいお泊り会になっただろうか。
 と、そこへ玄関のインターホンが鳴らされた。
 どうやら今、帰って来たようだ。

 愛原:「おっ、やっと帰って来たか」

 私は玄関のドアを開けた。
 因みに今、高橋は夕飯の買い出しに行っている。
 今日は肉じゃがとのこと。

 愛原:「はーい、はいはい」
 リサ:「先生、ただいま」
 愛原:「おー、お帰り」
 斉藤絵恋:「お邪魔します……」
 愛原:「ん?」
 リサ:「先生、今日はサイトーを泊めてあげて」
 愛原:「んん?」

 部屋に上げて事情を聞くと、別に家出というわけではないようだ。
 良かった良かった。
 一瞬びっくりした。

 リサ:「私がお世話になったから、その御礼がしたい。学校は明日まで休みだし、今日1日だけ」
 愛原:「俺は別に構わないけど……」
 斉藤:「お父さんは海外に出張に行きましたし、お母さんはお祖母ちゃんの介護で帰省中なんです。なので、家には執事とメイドと運転手しかいません。その者達には言っておきましたので」
 愛原:「そうかい。キミが家出すると警察は元より、私設捜索隊として大手警備会社の黒服SP軍団と大日本製薬社有ヘリコプターが出動する騒ぎになるとのことだからね」
 斉藤:「ちゃんと言っておきましたから。スマホも、いつでも繋がるようにしてますし」
 リサ:「私が『脱走』すると、特殊部隊と武装ヘリが出動する」
 斉藤:「リサさん、超VIPぅ!」
 愛原:「いや、それVIPちゃう!」

 それでも私が懸念していることがあった。
 高橋のことである。

 愛原:「うちには怖いお兄さんがいるからな。そのお兄さんの許可が無いと……」
 斉藤:「私からお願いしますので、だからどうか……」
 愛原:「待ちなさい待ちなさい。俺から電話してみる」

 私は自分のスマホを取り出した。

 愛原:「あー、もしもし。高橋か?今、電話いいか?」
 高橋:「はい。今、買い物終わったところです。今帰ります」
 愛原:「あー、申し訳無いんだけど、もう一人分材料買い足しといてもらえるか?」
 高橋:「どういうことです?」
 愛原:「急に来客が泊まることになったんだよ」
 高橋:「アネゴ、ついにマンション追い出されました?w」
 愛原:「それ、本人の前で言ってみろよ?」
 高橋:「殺されます。冗談ですよ。アネゴじゃないなら誰です?」
 愛原:「斉藤絵恋さんだ。リサが昨日泊めてくれた御礼を今してあげたいんだってさ」
 高橋:「当然、先生はお断わりしましたよね?」
 愛原:「いや。別に断る理由無いじゃん」
 高橋:「俺は反対です!せっかくの先生との連休が台無しじゃないですか!」
 愛原:「いや、リサが元々いるだろ。そんなのは理由にならん!」
 高橋:「俺は絶対反対です!あんなキモレズ女……」
 愛原:「俺にとってはゲイの方がキモいけどな。まあ、分かった。じゃあ、本人に代わるから、直接言え」

 私はスマホを斉藤さんに渡した。

 愛原:「物すっごくお願いするんだよ?いいね?」
 斉藤:「はい……。も、もしもし?どうか私を泊めてもらえないでしょうか?」
 高橋:「冗談じゃねぇ、バーカ!」
 斉藤:(イラッ……
 高橋:「だいたいよー、どうせ先生への崇拝じゃなくて、リサが目的なんだろ?その性癖直した方がいいぜ。キモいんだよ、女同士なんて!」
 愛原:「男同士も十分キモいからな?」

 この辺りは『特定の宗教をやっているというだけでドン引き』というのと似ているかもしれないな。

 斉藤:「…………」

 斉藤さんは高橋の罵詈雑言を聞き流しながら、片手で自分のスマホを取り出し、無言で器用に何かメッセージを送っていた。

 高橋:「おい、聞いてんのか!?レズ女!」
 斉藤:「……今日1日、高級ホテルへ御招待しますわね?ゲイ野郎……!
 高橋:「あぁっ!?てめ、誰に向かって口聞いてんだ、コラ!!」

 と、電話口の向こうで車が急停車する音が聞こえた。

 高橋:「な、何だ!?何なんだ、テメーラ!?あぁっ!?放せ、コラ!……アッー!」

 そして、電話が切れる音がした。
 どうやら高橋の前に車が止まり、そこから降りて来た何者達かによって拉致られたらしい。

 斉藤:「交渉成立ですわ、先生?」

 斉藤はドSな笑みを浮かべて私に報告した。

 愛原:「どうぞごゆっくり……」
 斉藤:「大丈夫。お兄さんは明日になったら解放しますわ」
 愛原:「お手柔らかに……。てか、食事当番どうするんだよ!?特に今日の夕食!?」
 斉藤:「それなら心配ありませんわ」

 斉藤さんは持って来たバッグの中から封筒を取り出した。
 開けてみると、諭吉先生が10人分ほど入っていた。

 斉藤:「この中から宿泊代と食事代を出させて頂きます」
 愛原:「こんなに要らないよ!」

 それでも“おぼっちゃまくん”の御坊家よりはずっとスケールの小さい額なんだよなぁ……。

 愛原:「……食事代だけもらうよ。仕方ないから、今夜は外食だ」
 リサ:「おー!」
 斉藤:「お世話になります」
 リサ:「早速、サイトーを私の部屋に案内する」
 愛原:「その前に、昨日来た服を脱衣カゴに入れておきなよ」
 リサ:「大丈夫。もう洗濯してもらった」
 愛原:「え、そうなの?何だか申し訳無いなー」
 斉藤:「いいんですよ。私が無理にリサさんにお願いしたんですから」
 愛原:「後で俺からも御礼を言っておこう……」

 私は頭をかいて自分の部屋に戻った。
 リサと斉藤さんは、隣のリサの部屋に向かう。
 リサのベッドだけセミダブルだから、JC2人が寝てもそんなに狭くはないだろう。
 それにしても、夕飯はどうしよう……?
 リサや高橋の普通の友達くらいなら近くのファミレスでもいいんだけど、斉藤さんとなるとなぁ……。
 かといって、こんな下町じゃ高級料理店なんてそうそう無いし。
 ちょっとネットで検索してみるか。
コメント
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