[11月4日07:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は3連休最終日で、仕事の無い日は遅くまで寝ている主義なのだが、今朝に関してはいつもの平日と同じ時間に目が覚めてしまった。
もう少し寝ていようかと思ったが、目が冴えてしまって眠れない。
仕方なく起きることにした。
私が洗面所で顔を洗っていると……。
リサ:「愛原先生、おはよう……」
愛原:「おっ、リサ。おはよう。絵恋さんは?」
リサ:「まだ寝てる」
愛原:「どうせ今日は休みだ。ゆっくり寝かせといてあげよう」
リサ:「はーい。……でも、お腹空いた」
愛原:「そうか。じゃあ、朝飯にしよう。パンとコーヒーくらいなら何とかなるだろう」
ところが、リサの部屋が勢い良く開けられた。
斉藤絵恋:「ちょーっと待ったぁーっ!朝ご飯なら私が用意しますよ!」
愛原:「えっ、作れるの?」
絵恋:「こっちのマンションからメイドを呼んで来て、フルコースでも満漢全席でも作らせますから!……あ、それともイギリスみたいにサンデーローストにします?牛1頭屠ってローストビーフ作るやつ!」
愛原:「朝から元気だねぇ……。いや、いいよ。朝は軽食がいい。高橋ならトーストにベーコンエッグとか作ってくれるんだけど?」
リサ:「サンドイッチー、サンドイッチー」
絵恋:「了解しました!サンドイッチ作りまーす!」
愛原:「できるのかい?」
絵恋:「メイドが作っているところ、見てましたから」
リサ:「補足。家庭科の調理実習でもやった」
愛原:「そうなのか。じゃあ、お願いしようかな」
絵恋:「何にします?」
リサ:「BOWサンド」
愛原:「BLTサンドだろ!」
絵恋:「ボーイズ・ラブ……?」
愛原:「ベーコン・レタス・トマトだよ!」
いつでもどこでも、私がツッコミ役……。
そして……。
絵恋:「お待たせしました!できました!」
結局、リサも手伝った。
愛原:「おー、なかなかの出来じゃないか。見た目はちょっとアレだけど……。ま、ちょうどコーヒーも入ったし、頂こうか」
私は少女達の作ったBLTサンドを頬張った。
ブリティッシュ・レールロード・トランスポーテーション(英国鉄道交通)の略ではない。
私はそれでボケようと思ったのだが、彼女らの方が上手であった。
ん?鉄道はrailwayじゃないのかって?
それはアメリカ英語。
イギリス英語ではrailroadと呼ぶ。
和訳すると前者は『鉄道』で、後者は『鉄路』かな。
とはいえ、どちらも通じるとのこと。
愛原:「おー、美味い美味い。なかなかの出来だよ」
絵恋:「ありがとうございます。ささ、リサさんもどうぞ」
リサ:「ん。さすがサイトー。美味しい」
絵恋:「萌えへへへ……。ま、まあね」
愛原:「ところで絵恋さん」
絵恋:「何ですか?」
愛原:「高橋はいつ帰してくれるのかな?」
絵恋:「今日の9時には監禁……もとい、ホテルをチェックアウトする予定です」
愛原:「そうか。ちゃんと高級ホテルを出発するに相応しい高級ハイヤーで送ってもらいたいものだね」
絵恋:「も、もちろんです。少なくとも、そんじょそこらのタクシーより高級ですわ」
愛原:「それならいい」
もっとも、都内のタクシーの中には、タクシーでありながらハイヤーにも使える高級車を使用している会社も存在する。
愛原:「絵恋さんはその前に帰りなさい」
絵恋:「ええっ、どうしてですか?」
愛原:「どうしてって……。キミ、高橋にしたことを忘れたのか?高橋のヤツ、絶対キミを許さないぞ?一応、俺からも宥めておくから、キミは火の粉の振り掛からない所に帰りなさい」
絵恋:「私……もう少しリサさんと一緒にいたいです」
愛原:「あのねぇ、ああ見えても高橋だって怒らせると怖いんだよ?あいつは元ヤンで、今でも現役の後輩達を沢山知っている。最下級国民として、上級国民に対するテロをいざなったらするくらいの勢いだぞ」
無差別バイオテロには私と一緒に戦う高橋も、民衆の不満が爆発した暴動に関しては容認派であるという。
この辺は左翼と変わらんか?
リサ:「サイトー、愛原先生に迷惑を掛けちゃダメ」
絵恋:「リサさん!」
リサ:「もしどうしても私と一緒にいたいのなら、高橋兄ちゃんに謝って」
絵恋:「ええっ!?」
リサ:「先生、サイトーが兄ちゃんに謝るというのならいいでしょ?」
愛原:「うーむ……。それとて危険だと思うが……。もう少しほとぼりが冷めてからの方がいいんじゃないかな?」
ああ見えて高橋もサバけた感じはあるから、私が宥めておだててやれば、台風も過ぎ去るような気がするのだ。
その時に絵恋さんに来てもらって、謝ってくれればOKのような気がする。
リサ:「サイトーはやり過ぎたと思うけど、兄ちゃんも先生の言う事聞かなかったから罰が当たった」
愛原:「俺は仏様かい」
リサ:「兄ちゃんや私にとっては、神様仏様」
愛原:「ああ、そうかい。……分かったよ。ただ、あれだ。それでも、やはり最初に俺から話をしておいた方がいいと思う。それまでは絵恋さん、リサと一緒に部屋に隠れてるんだ」
絵恋:「ありがとうございます」
それから2時間ほど経って……。
愛原:「おおっ、黒塗りのベンツSクラス。確かに高級車だ」
マンションの前に、高橋を連れて来たと思われる車が止まった。
そこから黒いスーツを着た男達が、高橋の両脇を抱えて降りて来た。
運転手は車で待機していて、リアシートの男達が高橋の両脇を抱える役。
助手席の男が先導役のようだ。
愛原:「高橋、大丈夫か!?」
高橋:「先生……生きてて良かったっス……」
愛原:「う、うんうん。生きてて良かった」
黒服:「こちらがお土産です」
愛原:「お土産!?」
先導役の黒服は大きな鞄を持っていたが、私にそれごと差し出した。
高橋:「あの女ども……最後には餞別をくれたんです……」
開けてみると4℃ブランドの指輪とか入ってるぞ?
何だこりゃ?
黒服:「うちの女性職員が皆この男に骨抜きにされて、プロポーズの品々です。お詫びの品として受け取って頂けると幸いです」
愛原:「いや、あのね!」
ホストに貢ぐ女性客かよ!
指輪とかの他にはラブレターまで。
高橋のヤツ、すげェな!
高橋:「できればゴミとして処分して頂けると幸いです」
愛原:「大黒屋にでも持って行くよ、全部!」
高橋:「それよりあのクソガキは……?」
愛原:「あー、それなんだけど……」
黒服:「キサマ、御嬢様をクソガキとは何だ?」
愛原:「まあまあまあ。送ってもらってありがとうございました。あとはこっちで何とかしますんで、どうか速やかにお引き取りのほどを……!」
私は高橋だけ引き取り、あとは全員追い出した。
愛原:「高級貴金属は後で換金するとして、絵恋さんのことだな?お前の気持ちはよく分かる。しかしだな……」
え?高橋に貢いだ女性達に貴金属は返さないのかって?
高橋がもらったものを私が引き取ったのだ。
所有権は私にある。
権利者の私が如何様に処分しようが自由だ。
全く、俺より先にプロポーズされやがって……って、違う違う。
何とか高橋を宥めすかした私は、彼を絵恋さんと引き合わせた。
一触即発かと思ったのだが、リサもちゃんと絵恋さんに口添えしていたらしく、一応素直に謝ったことで何とか収束した。
この騒動で1番得したのは……オンナ的には高橋だろうが、カネ的には私かなw
どっちがいいかは、【お察しください】。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は3連休最終日で、仕事の無い日は遅くまで寝ている主義なのだが、今朝に関してはいつもの平日と同じ時間に目が覚めてしまった。
もう少し寝ていようかと思ったが、目が冴えてしまって眠れない。
仕方なく起きることにした。
私が洗面所で顔を洗っていると……。
リサ:「愛原先生、おはよう……」
愛原:「おっ、リサ。おはよう。絵恋さんは?」
リサ:「まだ寝てる」
愛原:「どうせ今日は休みだ。ゆっくり寝かせといてあげよう」
リサ:「はーい。……でも、お腹空いた」
愛原:「そうか。じゃあ、朝飯にしよう。パンとコーヒーくらいなら何とかなるだろう」
ところが、リサの部屋が勢い良く開けられた。
斉藤絵恋:「ちょーっと待ったぁーっ!朝ご飯なら私が用意しますよ!」
愛原:「えっ、作れるの?」
絵恋:「こっちのマンションからメイドを呼んで来て、フルコースでも満漢全席でも作らせますから!……あ、それともイギリスみたいにサンデーローストにします?牛1頭屠ってローストビーフ作るやつ!」
愛原:「朝から元気だねぇ……。いや、いいよ。朝は軽食がいい。高橋ならトーストにベーコンエッグとか作ってくれるんだけど?」
リサ:「サンドイッチー、サンドイッチー」
絵恋:「了解しました!サンドイッチ作りまーす!」
愛原:「できるのかい?」
絵恋:「メイドが作っているところ、見てましたから」
リサ:「補足。家庭科の調理実習でもやった」
愛原:「そうなのか。じゃあ、お願いしようかな」
絵恋:「何にします?」
リサ:「BOWサンド」
愛原:「BLTサンドだろ!」
絵恋:「ボーイズ・ラブ……?」
愛原:「ベーコン・レタス・トマトだよ!」
いつでもどこでも、私がツッコミ役……。
そして……。
絵恋:「お待たせしました!できました!」
結局、リサも手伝った。
愛原:「おー、なかなかの出来じゃないか。見た目はちょっとアレだけど……。ま、ちょうどコーヒーも入ったし、頂こうか」
私は少女達の作ったBLTサンドを頬張った。
ブリティッシュ・レールロード・トランスポーテーション(英国鉄道交通)の略ではない。
私はそれでボケようと思ったのだが、彼女らの方が上手であった。
ん?鉄道はrailwayじゃないのかって?
それはアメリカ英語。
イギリス英語ではrailroadと呼ぶ。
和訳すると前者は『鉄道』で、後者は『鉄路』かな。
とはいえ、どちらも通じるとのこと。
愛原:「おー、美味い美味い。なかなかの出来だよ」
絵恋:「ありがとうございます。ささ、リサさんもどうぞ」
リサ:「ん。さすがサイトー。美味しい」
絵恋:「萌えへへへ……。ま、まあね」
愛原:「ところで絵恋さん」
絵恋:「何ですか?」
愛原:「高橋はいつ帰してくれるのかな?」
絵恋:「今日の9時には監禁……もとい、ホテルをチェックアウトする予定です」
愛原:「そうか。ちゃんと高級ホテルを出発するに相応しい高級ハイヤーで送ってもらいたいものだね」
絵恋:「も、もちろんです。少なくとも、そんじょそこらのタクシーより高級ですわ」
愛原:「それならいい」
もっとも、都内のタクシーの中には、タクシーでありながらハイヤーにも使える高級車を使用している会社も存在する。
愛原:「絵恋さんはその前に帰りなさい」
絵恋:「ええっ、どうしてですか?」
愛原:「どうしてって……。キミ、高橋にしたことを忘れたのか?高橋のヤツ、絶対キミを許さないぞ?一応、俺からも宥めておくから、キミは火の粉の振り掛からない所に帰りなさい」
絵恋:「私……もう少しリサさんと一緒にいたいです」
愛原:「あのねぇ、ああ見えても高橋だって怒らせると怖いんだよ?あいつは元ヤンで、今でも現役の後輩達を沢山知っている。最下級国民として、上級国民に対するテロをいざなったらするくらいの勢いだぞ」
無差別バイオテロには私と一緒に戦う高橋も、民衆の不満が爆発した暴動に関しては容認派であるという。
この辺は左翼と変わらんか?
リサ:「サイトー、愛原先生に迷惑を掛けちゃダメ」
絵恋:「リサさん!」
リサ:「もしどうしても私と一緒にいたいのなら、高橋兄ちゃんに謝って」
絵恋:「ええっ!?」
リサ:「先生、サイトーが兄ちゃんに謝るというのならいいでしょ?」
愛原:「うーむ……。それとて危険だと思うが……。もう少しほとぼりが冷めてからの方がいいんじゃないかな?」
ああ見えて高橋もサバけた感じはあるから、私が宥めておだててやれば、台風も過ぎ去るような気がするのだ。
その時に絵恋さんに来てもらって、謝ってくれればOKのような気がする。
リサ:「サイトーはやり過ぎたと思うけど、兄ちゃんも先生の言う事聞かなかったから罰が当たった」
愛原:「俺は仏様かい」
リサ:「兄ちゃんや私にとっては、神様仏様」
愛原:「ああ、そうかい。……分かったよ。ただ、あれだ。それでも、やはり最初に俺から話をしておいた方がいいと思う。それまでは絵恋さん、リサと一緒に部屋に隠れてるんだ」
絵恋:「ありがとうございます」
それから2時間ほど経って……。
愛原:「おおっ、黒塗りのベンツSクラス。確かに高級車だ」
マンションの前に、高橋を連れて来たと思われる車が止まった。
そこから黒いスーツを着た男達が、高橋の両脇を抱えて降りて来た。
運転手は車で待機していて、リアシートの男達が高橋の両脇を抱える役。
助手席の男が先導役のようだ。
愛原:「高橋、大丈夫か!?」
高橋:「先生……生きてて良かったっス……」
愛原:「う、うんうん。生きてて良かった」
黒服:「こちらがお土産です」
愛原:「お土産!?」
先導役の黒服は大きな鞄を持っていたが、私にそれごと差し出した。
高橋:「あの女ども……最後には餞別をくれたんです……」
開けてみると4℃ブランドの指輪とか入ってるぞ?
何だこりゃ?
黒服:「うちの女性職員が皆この男に骨抜きにされて、プロポーズの品々です。お詫びの品として受け取って頂けると幸いです」
愛原:「いや、あのね!」
ホストに貢ぐ女性客かよ!
指輪とかの他にはラブレターまで。
高橋のヤツ、すげェな!
高橋:「できればゴミとして処分して頂けると幸いです」
愛原:「大黒屋にでも持って行くよ、全部!」
高橋:「それよりあのクソガキは……?」
愛原:「あー、それなんだけど……」
黒服:「キサマ、御嬢様をクソガキとは何だ?」
愛原:「まあまあまあ。送ってもらってありがとうございました。あとはこっちで何とかしますんで、どうか速やかにお引き取りのほどを……!」
私は高橋だけ引き取り、あとは全員追い出した。
愛原:「高級貴金属は後で換金するとして、絵恋さんのことだな?お前の気持ちはよく分かる。しかしだな……」
え?高橋に貢いだ女性達に貴金属は返さないのかって?
高橋がもらったものを私が引き取ったのだ。
所有権は私にある。
権利者の私が如何様に処分しようが自由だ。
全く、俺より先にプロポーズされやがって……って、違う違う。
何とか高橋を宥めすかした私は、彼を絵恋さんと引き合わせた。
一触即発かと思ったのだが、リサもちゃんと絵恋さんに口添えしていたらしく、一応素直に謝ったことで何とか収束した。
この騒動で1番得したのは……オンナ的には高橋だろうが、カネ的には私かなw
どっちがいいかは、【お察しください】。