[11月2日14:30.天候:晴 東京都新宿区新宿 JR新宿駅→埼京線1407K電車10号車内]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は新宿で行われた全日本探偵協会の懇親会に参加した。
昔は招待されるだけで精一杯だったが、今では色々と他の事務所から興味を持たれるまでになった。
もっとも、その興味の目というのは、どちらかというと奇異の目に近い。
物凄く珍しい物を見るかのような目で見られることが多くなった。
しかし、それは致し方ない。
率先してバイオテロやバイオハザードに巻き込まれる探偵など、日本全国……いや、世界中探しても私達くらいのものだろう。
ましてや、それからちゃんと生還しているともあらば……。
んでもって、政府エージェントからは正式にバイオテロに巻き込まれた際は特別に銃火器の使用を許可されている探偵なんて……。
色々と興味を持って質問されることもあったが、どちらかというと冷やかしとか、興味本位というか、そういった感じで聞かれることが多かった。
いつ高橋がガチギレするか気が気でないのだが、さすがの高橋もそこは空気を読んだようである。
そんな懇親会が終わって、JR新宿駅に向かったのが14時過ぎ。
そこでは事務所から1人で地下鉄でやってきたリサと合流した。
愛原:「おー、リサ、1人で来れたか」
リサ:「大丈夫。もう1人で乗れる」
都営新宿線そのものはともかく、新宿駅は上級者向けだからな。
私でもヘタすりゃ迷子になる話だ。
南口から西武新宿駅に向かえって言われた日には、もう……。
あれは新宿駅じゃなく、歌舞伎町駅とか北新宿駅とか名乗った方が良い。
高野:「偉いねぇ」
高橋:「だったら先に向かった方が良かったんじゃねーの?」
リサ:「私は皆と行きたい」
リサは学校の制服姿だった。
しかも、着替えなどが入ったバッグを持っている。
これだけだと、部活の行き帰りの中学生にしか見えない。
高野:「でも、泊まるのはリサちゃんだけですよね?」
愛原:「一応な」
本当なら夕食会に参加して、夜そのまま帰るはずだった。
しかし何故か斉藤社長の娘、斉藤絵恋さんがリサを強く宿泊するよう勧めたのである。
絵恋さんはリサのことが大好きで、高橋に言わせると恋愛感情の塊であるという。
もちろん絵恋さんは女子中学生、リサもそうだ。
つまり、【お察しください】。
リサの方はノーマルで、絵恋さんのことは親友と思っている程度に留まっているはずだ。
愛原:「ま、行ってみよう」
高橋:「はい」
私達は多くの人達でごった返している新宿駅構内を進んだ。
リサ:「これだけ人が多いと一思いに薙ぎ払いたくなる」
愛原:「3連休の初日だからな、そりゃ賑わうよ」
高橋:「俺もウザくなってきた。リサに薙ぎ払ってもらいたくなってくる」
愛原:「俺は許可しないからな?」
高橋:「はっ、先生がそう仰るのでしたら……」
リサ:「一思いに薙ぎ払う」
高橋:「って、コラ!お前は先生の御心が分かってねーのかよっ、ああっ!?」
高野:「言い回しがケンショーブルー……」
高橋:「何だ、姐御?」
高野:「何でもない」
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の電車は、14時31分発、各駅停車、大宮行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、池袋に止まります〕
埼京線で向かうことにした。
昼食は探偵協会の懇親会、夕食は斉藤家で行われる夕食会だ。
今日だけは朝食を除いて、食事は豪華なものになりそうである。
新宿始発の電車に乗り込む。
高野:「女性専用車両。新宿線といい、先生はこの車両に乗り込むのが好きですね」
高野君が含み笑いをしてくる。
もちろん女性専用車が適用されるのは、平日の特定の時間帯のみだ。
土休日は一切適用されない。
愛原:「埼京線はこの車両が1番空いてるの」
リサ:「ここ、ここ!」
リサは運転室に近い4人席に座り込んだ。
愛原:「ちょうど4人か」
高橋:「こら、先生の隣は俺の席だぞ」
愛原:「別にいいじゃないか」
高野:「マサも先生のことが大好きだもんね」
高橋:「当たり前だ。俺は唯一無二の師匠、愛原先生に断固としてお応えして参る決意だぞ」
愛原:「また、どこかで聞いたようなセリフを……」
〔この電車は埼京線、各駅停車、大宮行きです〕
〔This is the Saikyo line train for Omiya.〕
〔「埼京線の各駅停車、大宮行きです。途中駅での快速の待ち合わせはございません。まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕
発車の時間になって、ホームから発車メロディが聞こえて来る。
〔2番線の埼京線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕
ドアが閉まるが、駆け込み乗車があったのか、1度再開閉してそれから閉まった。
車内には空気清浄機の作動する音だけが聞こえている。
もうクーラーの爆音を聞く時季ではなくなった。
そして、電車がゆっくりと発車していく。
ホームの北の方に向かう度、人の数が増えていくのが分かった。
新宿駅は南側よりも北側の方が賑わっているということだ。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、大宮行きです。次は、池袋です〕
〔This is the Saikyo line train for Omiya.The next station is Ikebukuro(JA12).〕
リサは緑色のブレザーのポケットからスマホを取り出すと、それを操作し始めた。
愛原:「絵恋さんに連絡かい?」
リサ:「うん。サイトーに頼まれた。『埼京線に乗ったら連絡する』『池袋駅を出発したら連絡する』『板橋駅を出発したら連絡する』『十条駅を出発したら連絡する』『赤羽駅を……』」
愛原:「ちょっと待て!各駅ごとにLINEする気か!?」
リサ:「サイトーに頼まれた」
高橋:「なにリサにストーカーさせてんだよ、あのレズ女め」
高野:「よっぽど寂しがり屋さんなんだねぇ……」
高橋:「ドン引きだぜ」
愛原:「高橋だけはこの会話に参加することを禁止する」
高橋:「ええっ!?何でですか!?」
愛原:「自分の胸に手を当てて考えてみろ!」
都営バスに乗った時、バス停を通過する毎にLINEしてきやがって、こいつは……。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は新宿で行われた全日本探偵協会の懇親会に参加した。
昔は招待されるだけで精一杯だったが、今では色々と他の事務所から興味を持たれるまでになった。
もっとも、その興味の目というのは、どちらかというと奇異の目に近い。
物凄く珍しい物を見るかのような目で見られることが多くなった。
しかし、それは致し方ない。
率先してバイオテロやバイオハザードに巻き込まれる探偵など、日本全国……いや、世界中探しても私達くらいのものだろう。
ましてや、それからちゃんと生還しているともあらば……。
んでもって、政府エージェントからは正式にバイオテロに巻き込まれた際は特別に銃火器の使用を許可されている探偵なんて……。
色々と興味を持って質問されることもあったが、どちらかというと冷やかしとか、興味本位というか、そういった感じで聞かれることが多かった。
いつ高橋がガチギレするか気が気でないのだが、さすがの高橋もそこは空気を読んだようである。
そんな懇親会が終わって、JR新宿駅に向かったのが14時過ぎ。
そこでは事務所から1人で地下鉄でやってきたリサと合流した。
愛原:「おー、リサ、1人で来れたか」
リサ:「大丈夫。もう1人で乗れる」
都営新宿線そのものはともかく、新宿駅は上級者向けだからな。
私でもヘタすりゃ迷子になる話だ。
南口から西武新宿駅に向かえって言われた日には、もう……。
あれは新宿駅じゃなく、歌舞伎町駅とか北新宿駅とか名乗った方が良い。
高野:「偉いねぇ」
高橋:「だったら先に向かった方が良かったんじゃねーの?」
リサ:「私は皆と行きたい」
リサは学校の制服姿だった。
しかも、着替えなどが入ったバッグを持っている。
これだけだと、部活の行き帰りの中学生にしか見えない。
高野:「でも、泊まるのはリサちゃんだけですよね?」
愛原:「一応な」
本当なら夕食会に参加して、夜そのまま帰るはずだった。
しかし何故か斉藤社長の娘、斉藤絵恋さんがリサを強く宿泊するよう勧めたのである。
絵恋さんはリサのことが大好きで、高橋に言わせると恋愛感情の塊であるという。
もちろん絵恋さんは女子中学生、リサもそうだ。
つまり、【お察しください】。
リサの方はノーマルで、絵恋さんのことは親友と思っている程度に留まっているはずだ。
愛原:「ま、行ってみよう」
高橋:「はい」
私達は多くの人達でごった返している新宿駅構内を進んだ。
リサ:「これだけ人が多いと一思いに薙ぎ払いたくなる」
愛原:「3連休の初日だからな、そりゃ賑わうよ」
高橋:「俺もウザくなってきた。リサに薙ぎ払ってもらいたくなってくる」
愛原:「俺は許可しないからな?」
高橋:「はっ、先生がそう仰るのでしたら……」
リサ:「一思いに薙ぎ払う」
高橋:「って、コラ!お前は先生の御心が分かってねーのかよっ、ああっ!?」
高野:「言い回しがケンショーブルー……」
高橋:「何だ、姐御?」
高野:「何でもない」
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の電車は、14時31分発、各駅停車、大宮行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、池袋に止まります〕
埼京線で向かうことにした。
昼食は探偵協会の懇親会、夕食は斉藤家で行われる夕食会だ。
今日だけは朝食を除いて、食事は豪華なものになりそうである。
新宿始発の電車に乗り込む。
高野:「女性専用車両。新宿線といい、先生はこの車両に乗り込むのが好きですね」
高野君が含み笑いをしてくる。
もちろん女性専用車が適用されるのは、平日の特定の時間帯のみだ。
土休日は一切適用されない。
愛原:「埼京線はこの車両が1番空いてるの」
リサ:「ここ、ここ!」
リサは運転室に近い4人席に座り込んだ。
愛原:「ちょうど4人か」
高橋:「こら、先生の隣は俺の席だぞ」
愛原:「別にいいじゃないか」
高野:「マサも先生のことが大好きだもんね」
高橋:「当たり前だ。俺は唯一無二の師匠、愛原先生に断固としてお応えして参る決意だぞ」
愛原:「また、どこかで聞いたようなセリフを……」
〔この電車は埼京線、各駅停車、大宮行きです〕
〔This is the Saikyo line train for Omiya.〕
〔「埼京線の各駅停車、大宮行きです。途中駅での快速の待ち合わせはございません。まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕
発車の時間になって、ホームから発車メロディが聞こえて来る。
〔2番線の埼京線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕
ドアが閉まるが、駆け込み乗車があったのか、1度再開閉してそれから閉まった。
車内には空気清浄機の作動する音だけが聞こえている。
もうクーラーの爆音を聞く時季ではなくなった。
そして、電車がゆっくりと発車していく。
ホームの北の方に向かう度、人の数が増えていくのが分かった。
新宿駅は南側よりも北側の方が賑わっているということだ。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、大宮行きです。次は、池袋です〕
〔This is the Saikyo line train for Omiya.The next station is Ikebukuro(JA12).〕
リサは緑色のブレザーのポケットからスマホを取り出すと、それを操作し始めた。
愛原:「絵恋さんに連絡かい?」
リサ:「うん。サイトーに頼まれた。『埼京線に乗ったら連絡する』『池袋駅を出発したら連絡する』『板橋駅を出発したら連絡する』『十条駅を出発したら連絡する』『赤羽駅を……』」
愛原:「ちょっと待て!各駅ごとにLINEする気か!?」
リサ:「サイトーに頼まれた」
高橋:「なにリサにストーカーさせてんだよ、あのレズ女め」
高野:「よっぽど寂しがり屋さんなんだねぇ……」
高橋:「ドン引きだぜ」
愛原:「高橋だけはこの会話に参加することを禁止する」
高橋:「ええっ!?何でですか!?」
愛原:「自分の胸に手を当てて考えてみろ!」
都営バスに乗った時、バス停を通過する毎にLINEしてきやがって、こいつは……。