報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「停電」

2016-05-25 19:17:41 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月16日00:00.天候:晴 DC Inc.アーカンソー研究所]

 平賀:「ああ、済まなかった。エミリー、シンディに協力してくれ。お前にも鏡音リン・レン並びにアルバート所長の救出、そしてジャニスとルディの捕獲もしくは破壊を命じる」

「かしこまりました。プロフェッサー平賀」
 先へと進もうとする鋼鉄姉妹。
「鏡音リン・鏡音レンが・ここにいる・ということは・通信すれば・応答が・あるはずだ」
「電源が入って、稼働していればの話だけどね」
 シンディはリンとレンに通信を送った。
「……ダメ。応答が無い」
「では・どうする?」
「ザコロボット締め上げて、居場所吐かせる?」
「恐らく・知らないと・思う」
「それじゃ元も子も無いじゃない!」

 敷島:「それじゃ、こういうのはどうだろう?その研究所はかなりデカい。恐らくどこかに、防災センターがあるはずだ。防災センターなら……所内のあちこちに仕掛けられた監視カメラに、もしかしたらリンとレンが映っているかもしれない。ついでに、アルバート所長もな」

「なるほど。それもそうね!」
「さすがは・敷島社長・です」
 エミリーとシンディは、自分達にインストールされた館内のマップをダウンロードした。
「防災センターは地下1階にあるみたいね」
「さっき・行った・倉庫とは・反対側だ」
「OK.そこに行ってみましょう」
 と、その時だった。

 敷島:「!? 画面が真っ暗になった!」
 平賀:「どういうことだ!?エミリー、応答しろ!」

「プロフェッサー平賀。どうやら・停電が・起きた・もようです」

 平賀:「停電!?」
 鳥柴:「どうやら、夜半前の雷雨の影響で、送電線に不具合が起きたようです。電力会社の話によると、それは比較的簡単なもので、すぐに修理できるレベルとのことです。ただ……」
 敷島:「ただ?」
 鳥柴:「あの研究所には安全装置が設置されていて、例えまた電力会社からの送電が行われても、自動的に復電するわけではありません」
 敷島:「まあ、確かに。家のブレーカーも、落雷で停電したら、自分でブレーカー戻さなきゃいけないしね。つまり、そういうことですね」
 鳥柴:「はい」

 平賀はマイクを取った。

 平賀:「聞いた通りだ。お前達のことだから、停電で真っ暗になっても、暗視カメラで行動に支障が出ることはないと思う。現に、今こちらのモニタでも、暗視カメラの映像として比較的鮮明に映っている。だが、所内の設備を利用しなければならないだろう。ましてや、次の目的地は防災センター。停電したら1番マズい所だ」

「イエス。プロフェッサー平賀」
「じゃあ、どこに行って復電すればいいの?」

 敷島:「電気室だな。電気室に大きなブレーカーがあって、それが落ちたと思われる。直ちに、電気室を確認しろ」

「了解!」
「かしこまりました」

 平賀:「電気室も施錠されているだろうから、防災センターには行ってみる価値があると思う。そこに鍵も置いてあるだろう」

「イエス。プロフェッサー平賀」
 こうして、エミリーとシンディは防災センター並びに電気室に向かうことになった。

[同日00:30.天候:晴 同研究所内・防災センター]

 防災センターは比較的簡単に行くことができた。
 途中、電子ロックされていたドアがあったが、停電になっているせいか作動しておらず、フリーで開けることができた。
 防災センターは所長室ほど荒らされていなかったが、それでも急に事件が発生したのだろう。
 ここにいた警備員達が、どれほどまでに浮足立ったかが分かるほどに荒れていた。
 そして案の定、センター内は非常灯が点灯していたものの、肝心のモニタは停電で全部消えていた。
「連絡手段が色々あるけれど、電話で外に掛けることはできないみたいね」
 シンディは電話機1つ取ってみたが、全く音が聞こえてこなかった。
 センター内には所内の設備について監視するコーナーがあり、往時はここに設備員が詰めていたのだろう。
 ここも無人だった。
 しかし停電になっていても、予備電源がその分動いたのか分からないが、設備員用のPCは稼働していた。
 当然、何やらエラーが出ており、それによると、所内で停電が発生したので、至急、電気室を確認せよというものだった。
 そして、停電になってしまったことで止まったものや、予備電源で動いているものの一覧が出ていた。
「一部のエレベーターは動いていて、一部のエレベーターは止まっていると……」
「そういう・ことだ。電気室は・地下4階に・ある。そこへの・エレベーターは・動いている・ようだ」
「行ってみましょう」
「ちょっと・待って」
 エミリーはセンター内のキーボックスを開けた。
 何でも開けられるカードキーがあり、普通の鍵を何でも開けられるマスターキーもあった。
 そして、エレベーターを起動させるエレベーターキーも。
 必要そうな鍵は、全て持ち出すことにした。
 警備員用の防犯監視盤を見ると、停電で全ての電子ロックが開放状態になってしまったという警告が出ていた。
「逆にこの辺は都合が良さそうね。他にも、別の認証コードでないと開かないドアとかありそうだし」
「カードキーは・手に入れたから・その辺の・心配は・無いが」
「とにかく、行きましょう。停電を復旧させないと」
 エミリーとシンディは、更にセンター内にあった弾薬を見つけて補充した。
 ボブ戦でだいぶ銃弾を使ったのは事実であるし、未だにちょこちょこザコロボットはやって来ているので。

 エレベーターは防災センターから大して遠くない所にあった。
 まあ、電気室は設備員の直接管理だし、防災センターからの導線も便利にしておかないと、ということか。
 エレベーターのスイッチ自体は切られていたが、これはセンターから持ち出したエレベーターキーを使用して起動させた。
 地下4階に止まっていたエレベーターを呼び戻す。
 その間、シンディは思った疑問を口に出した。
「それにしても、リンもレンも……ううん、あのジャニスとかルディって奴もどこにいるのかしら?モニターに姿を現しただけで、さっぱり私達の前に姿を見せない」
「何か・会えない・理由でも・あるのかも・しれないな」
 エレベーターのドアが開いて、エミリー達はそれに乗り込んだ。
 すぐに地下4階のボタンを押して、ドアを閉めた。
 油圧式のエレベーターは、滑車式(ロープ式)のそれと違って動きは遅い。
 シンディは防災センターで手に入れたマグナム弾を、右手を変形させたマグナムにリロードした。
「いざ、地獄の底へ」
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“Gynoid Multitype Cindy” 「事件の謎と真相」

2016-05-25 16:07:32 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月15日23:00.天候:曇 デイライト・コーポレーション・インターナショナル アーカンソー研究所・所長室]

 荒らされた所長室にて、アルバートの残した研究ノートを発見したシンディ。
 日記形式で書かれていたそれを日本語訳し、以下に抜粋する。

『3月31日 日本の埼玉という町にあった研究所が閉鎖され、代わりにロボット未来科学館なる設備ができたらしい。我が社の業績を世間に知らしめる為のパビリオン施設とのことだが、日本人はくだらぬを考えている。そんなものは我が社の製品で知らしめるべきだ』

『4月2日 私の所にマルチタイプの開発・製造命令が来てから早5年。あの世界的なマッド・サイエンティスト、ウィリアム・フォレスト博士の孫娘が持っていたマルチタイプの設計データを元に製造してはみたものの、こんな化け物をよく造ったものだ。見目麗しい外見をしているのも、偏に化け物ぶりを隠す為だろうか。尚、このことについて、私は実際にマルチタイプを稼働させている日本人を紹介された。アリス氏の夫で敷島孝夫氏という。日本発祥のボーカロイド専門の芸能プロダクションを立ち上げ、芸能活動をさせていることで有名だが、私は彼の別の名前を知っている。日本一マルチタイプを使いこなしている男ということで、何か参考になればと私は連絡してみた。彼はあの世界的なロボット・テロリスト、KR団を壊滅させたことでアメリカでも有名だ。私もロボットを使ったテロは許さない人間なので、話をしてみたいと思っていただけに良い機会に恵まれたものだ』

『4月3日 ついに私の傑作が完成した。α号機をジャニス、β号機をルディと名付けた。本来はジャニスだけの製造だったのだが、会社から予備機としてもう1機製造するようにと指示を受けたので、参考資料として頂戴したボーカロイド双子、鏡音リン・レンをモデルにしてみた。しかし彼らは14歳。対テロとして投入するには幼い。そこは当初の参考資料だった日本のマルチタイプを参考にした。彼女らは成人女性をモデルにしているので、これなら対テロ用途に使えるだろう』

『4月4日 実験も兼ねて、ニューヨーク州で起きたイスラム過激派のテロに投入してみた。彼らはよく働き、あっという間にテロリスト達を駆逐してくれた。政府からの賛辞も強く、マルチタイプが人類の平和に貢献できると証明される日は近いであろう』

 敷島:「科学者として自信に満ち溢れた書き込みですな」
 平賀:「しかし、これ自体は特に問題が無いように思えます。一体、何が問題なんでしょう?」

 アルバートのノートの内容に変化が見られたのは、5月になってからだった。

『5月1日 先日、敷島孝夫氏と会談し、日本法人のパビリオン施設(埼玉のロボット未来科学館)を見学させてもらったが、如何に日本人は平和ボケなのかが分かった。私のマルチタイプは、メイドや執事で終わるようなものではない。それならメイドや執事ロボットを作れば良い。私のジャニスとルディは機能美・造形美共に優れたものだ。元々旧ソ連で設計されたマルチタイプとは違う』

『5月2日 会社に更なるマルチタイプの開発・研究費の増額を求めたが、却下された。まだロクに実績も積んでいないのに、増産体制は認められないという非常にチキンで下らない理由だ。私が憤慨していると、ジャニスとルディは私の気持ちを理解してくれた。そして私の為に何が何でも尽くすと誓ってくれた。マルチタイプは最高だ。そこらのデキの悪い人間よりも、よほど優れている』

『5月3日 私はついに行動を起こした。ジャニスとルディを連れて会社から独立する。既に実績としては、テロ組織やマフィア組織をいくつも潰している。これで十分のはずだ。事前に私の動きを察知していた会社が、DSSを使って私を捕えようとしたが、ジャニスとルディが応戦してくれた。何とも頼もしいコ達だ』

 だが、状況は一変する。

『5月6日 ジャニスとルディはとても優秀なマルチタイプだ。彼らは自ら考え、学習する人工知能を持つ。また、未だ製造工程は秘密である“感情”、喜怒哀楽の感情も豊富で、まるで人間のようである。人間は愚かだ』

『5月9日 本当に人間は愚かだ。だが、私もそんな人間であったことをどうして忘れてしまったのか。かの有名なフランケンシュタイン博士の気持ちが今では分かる。ジャニスとルディの奴、自らが完璧なマルチタイプであるという誇りを持ったはいいが、同時に人間を見下す言動・行動を取るようになった。私は急いで修整を掛けようとしたが、ルディの奴、私を研究所から出さぬつもりだ』

『5月11日 DSSの特殊部隊が突入してきたが、既に化け物同然のジャニス達には叶うものではない。ジャニス達、私が銃撃をやめるよう命令しても、お構いなしである。』

『5月12日 誰かジャニスとルディを止めてくれ』

 敷島:「ひ、平賀先生!?」(口をあんぐり開けて平賀を見る敷島)
 平賀:「うーん……。KR団の言ってることが正しかったと証明されてしまいましたか……」

 平賀も頭を抱えた。
 KR団の活動目的は、人間そっくりのロイドの実用化を阻止することにあった。
 人間に取って代わられることなど、あってはならないと。
 奴隷にするにしても、それが人間に取って代わるようなことは絶対にあってはならない。
 それはイコール人類の滅亡を意味するものだから、と。
 最初はそれが目的で研究者達を拉致したり、虐殺するKR団は何としてでも潰さなくてはならないと思っていた。
 実際、それは実現できた。
 だが……。

「……社長。次の御命令を」
「プロフェッサー平賀。私達は・次は・何をすれば・よろしいですか?」
 マルチタイプから指示を求める通信が入る。
 だが、敷島達はそれに答えることができなかった。
 代わりにアリスが、通信機のマイクを取る。

 アリス:「リンとレン、それとアルバート所長の救助を。ジャニスとルディの捕獲……不可能なら破壊でもいいわ。それを実行して」

「了解しました」
「…………」
「姉さん、行くよ」
 アリスの言う事はあまり聞かないエミリーだが、妹のシンディに促され、所長室をあとにした。

[同日同時刻 同研究所・居住区]

「ほら、キリキリ歩け!」
「何するんだよっ!」
 ルディがリンとレンを引っ張る。
 首に首輪を付けられ、それにリードを付けてルディがリンとレンを引っ張っているのである。
 因みに首輪とは別に、リンとレンには手枷も付けられている。
 にも関わらず、ルディはリンとレンに首輪を付け、そこに紐を付けて引っ張っているのだ。
「我らがマスターがお話くださるのだぞ!?ありがたく思え!」
「ボク達はお前らなんかの味方にならないぞ!……うわっ!」
「きゃっ!」
 リンとレンに高圧電流が流される。
「無駄口たたくと、電流の刑だぞ?」
「リンは関係無いだろ!?」
「連帯責任で、一緒に電流が流れるようになっている。次、抵抗したら1000Vのヤツを流すぞ?」
 ルディは悪魔ような笑みを浮かべた。
「…………」
「リン、しっかりしろ!」
 リンの出力が低下していた。
 人間で言う“失神”しかかっているのだ。
「分かったら、おとなしくついてこい」
「……!」
 そして、居住区に到着する。
「マスター。ご指示の通り、ボーカロイド達を連れて来ました。……マスター?」
 しかし、室内にアルバートはいなかった。
「マスター!?」
 ルディは慌ててホテルのシングルルームのような部屋の中を探した。
「……に、逃げられた!……アハハハハハっ!逃げられたーっ!ハハハハハハハハハハーッ!!」
「!!!」
「な、なに!?」
 ルディが狂ったように笑い出した。
「……ハッ、所詮はあいつも愚かな人間だったか」
 そして、リンとレンを見る。
「お前らのせいだぞ!!」
「な、何がだ!?」
 ルディがレンに殴り掛かって来る。
 手枷と首輪で不自由な状態であったが、レンは持ち前の素早い動きでルディの拳を交わした。
 壁にめり込んだルディの拳。
「……ハハ、ハハハハハハっ。だからお前達にも、責任を取ってもらう」

 ルディの不気味な笑みについて、レンは後に語る。
「東京決戦で暴走したシンディ(前期型)がドクター・ウィリーを惨殺した時の顔って、あんな感じ?」
 と。
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“Gynoid Multitype Cindy” 「アルバートは暴走していない?」

2016-05-25 11:04:45 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月15日22:00.天候:不明 デイライト・コーポレーション・インターナショナル アーカンソー研究所]

 研究所の地下倉庫にて、まるでボブ・サップのような黒人アンドロイドと遭遇したエミリーとシンディ。
 マルチタイプや他のセキュリティロボットと違い、銃火器の装備は無いもよう。
 しかし巨漢からは想像できぬ猛タックルは、間合いを取って銃撃することを得意とするシンディを苦戦させた。
「I want Huuuuuuuuuug!!(抱かせろォォォォォォォォッ!!)」
 便宜上、ボブと名付けられた黒人アンドロイドは、今度はエミリーに向かって突進してきた。
「!」
 ズダーン!ズダーン!とエミリーが右手を変形させたショットガンで、ボブに打ち込む。
 効いてはいるのだろう。
 被弾した頭部からは、赤い血のようなオイルが滴り落ちている。
「カスタムパーツで強化した姉さんのショットガンを頭に食らっても、オイルが滴り落ちるだけ!?何て奴なの!」
 シンディは同じく右手を、強化改造したライフルに変形させていたが、ライフルは遠距離からの狙撃用。
 近距離で撃っても、その強さは発揮できない。
「I so love yoooooooou!!」
「そんな状態で愛の告白しても、姉さんは靡かないわよ!!」

 ガシィッ!!(エミリーがボブに組み付かれた!)

「なにいっ!?姉さん!?」
「シンディ!私が・押さえているうちに・背中を・撃て!」
「背中!?」
「肩甲骨の・間に・こいつの・燃料タンクが・ある!」
「わ、分かった!何とか持ちこたえてよ!?」
「I need kiss!!」

 ブチュッ!!(ボブ、エミリーに無理やりキスをする)

 平賀:「うわっ、画面が真っ暗になった!?」
 敷島:「さすがのエミリーも、いきなりキスは出力一気にダウンする事態だったようですね」
 アリス:「違うわ!奴の頭がデカいから、エミリーの視界を遮っただけよ!」
 敷島:「シンディ!早くしろ!エミリーがレイプされる!!」

「分かってるわよ!……このクソ野郎!姉さんを汚すんじゃないよっ!!」
 シンディはエミリーを押し倒しているボブの肩甲骨の中央をロックオンすると、何度もライフルを放った。
「グォォォォォッ!?」
 ボブは慌てて立ち上がったが、同じく立ち上がったエミリーからヘッドバッド(頭突き)を食らった。
「…………………」
 ボブ、意識が朦朧とした状態(いわゆる、ピヨッた状態)になり、フラフラとなる。
 そこを更にシンディが燃料タンク目掛けて3発ほど発射した。
 最後の1発がLPガスタンクに穴を開け……。

 チュドォォォン!

 爆発、バラバラの鉄塊と化した。
「ふう……。これで中ボスかぁ……。姉さん、大丈夫?」
「何とか……」
 エミリーは乱れた着衣を直すと、バラバラになったボブの部品の山を漁った。
「あった!認証コード」
「おおっ!これで所長室のドアが開くわね!」
 鋼鉄姉妹達は新たな認証コードを手に、再び所長室に向かった。

[同日同時刻 同研究所内・居住区]

「おおっ!さすがは日本製のマルチタイプだ!あの化け物を倒すとはっ!」
 アルバートは感心した様子でモニタを見た。
(いや、この研究所には、あれ以上の化け物達がいるな……)
「ジャニス!作戦変更だ!」
「OK!」
 浮足立ったジャニスとルディら、アメリカ製マルチタイプ。
 ジャニスは慌てて居住区を出た。
「あー、ルディ」
「何でしょうか、マスター」
「お前達が連れて来たボーカロイド達。彼らと話がしたいのだが……」
「なりません。ボーカロイド共は、僕達の作戦に必要な……。!?」
 ルディがアルバートの要望を拒否しようとした時、アルバートはジャケットのポケットからある物を取り出した。
「! それは!?」
「私の言う事が聞けないというのなら、こいつを起動させるが良いか?」
「キュルキュルキュルキュル……」
 ルディは人工知能を働かせて考えた。
「……分かりました。但し、マスターをお連れすることはできません」
「なにっ!?」
「外は危険です。日本からのマルチタイプが、マスターのお城を未だ荒らし回っています。僕がボーカロイド達をここへ連れて来ますので、ここでお待ちください」
「どうしても、私をここから連れ出さない気か?」
「外は危険です」
 ルディの目(といってもカメラだが)は真剣で、どうあっても曲げないという気持ちが伝わって来る。
「……では、そうしてくれ」
「かしこまりました」
 ルディは会釈のようなお辞儀をすると、居住区から出て行った。
(くそっ!どこだ!?どこに彼らのプログラミングに問題があったというのだ!?)
 アルバートはドンッと机を殴り付けた。
 モニターには、シンディ達が所長室の中に入って行く様子が映されていた。
(あの中には私の……ジャニスとルディの研究記録が残されている。恥ずかしい話だが、あれで現状を理解してもらう他は無い。そして、私もこのままでは良くないな)
 アルバートは天井を見上げた。

[同日22:15.同研究所・所長室]

 ピー!(電子ロックが解除された音)

「認証が完了したわ」
「ようやく・所長室に・入れるな」
 ドアを開けて中に入る。
 所長室は、どういうわけだか荒らされていた。
「社長、室内にアルバート所長の気配無し。どうする?」

 敷島:「マジか!?ドアロックを二重にしていたくらいだから、ここに籠もっていると思ったんだがな。まあいい。所長室なら、この事件が起きる直前までの記録が、もしかしたらあるかもしれない。所長室内を捜索して、その研究所で何があったか調査してくれ」

「了解」
「かしこまりました」
 エミリーとシンディは荒らされている室内を捜索した。
 大きな机もひっくり返され、その上に置かれていたデスクトップPCも無残に破壊されていた。

 敷島:「どうせなら所長室にある資料をごっそり持って行きたいところですな」
 平賀:「さすがにこの状況ではムリでしょう。エミリー、アルバート所長の最近の動向が詳しく分かるものと、ジャニスとルディの開発・製造記録が収められているものを探してくれ」

「かしこまりました」
 エミリーが応答する。
 そして、
「あった!」
 シンディが、ひっくり返った机の引き出しから、ジャニスとルディについて書かれたアルバートの研究ノートを発見した。

 敷島:「それだ!中身を確認させてくれ!」

「了解!」
 シンディは早速、最初のページから開いた。

 敷島:「こ、これは……!?」
 平賀:「敷島さん、何か分かりますか?」
 敷島:「英語の筆記体……。尚更読めねぇ……」
 平賀:「だーっ!」(←ズッコケる平賀)
 アリス:「あーもうっ!アタシが訳してやるわよ!」

 相変わらず英語力の弱い日本人ダンナに苛立つアメリカ人妻のアリスだった。
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