[5月15日21:00.天候:雷雨 アメリカ合衆国アーカンソー州某所DC Inc.アーカンソー研究所]
所内の居住区。
アルバートはエミリーとシンディの侵入に気づいていた。
アルバートに付き従っている最高傑作達が血相変えて、居住区を飛び出して行ったからだ。
居住区にもモニタはあり、それでアルバートはシンディ達の動きをチェックしていた。
(やはりだ……。やはり……あいつらは……。何故……)
アルバートは唇を噛んで悔しそうな顔をすると、後ろを振り向いて誰もいないのを何故か確認した。
そして机の下に隠すように置いていたノートPCを取り出し、無線LANと接続する。
『DCの皆さんへ。私は今、研究所の……』
そして、何やらメールを打っていたが、そのタイピングをしている最中に、
「マスター。何をしてらっしゃるんですか?」
「!!!」
振り向くと、さっきいなかったはずのルディがそこにいた。
「い、いや、その……キミ達の稼働についてちょっとレポートを……」
「僕達の稼働実験は終了したはずでは?」
「そ、そうなんだが、キミ達はまだ試作の段階だ。まだ色々とリサーチする必要がある。このモニタを見ているのだって、キミ達と日本製マルチタイプの違いについて、研究者として……」
ボーン!
「!!!」
ルディは右手人差し指からレーザービームを放った。
それはさっきタイピングしていたノートPCに直撃する。
ノートPCは無残に破壊された。
「僕達を信用していないんですか?」
そして、ズイッと前に出る。
「な、何!?」
「僕もジャニスも、あの役立たずのバージョンA達に変わって侵入者共と戦っているんです。僕もそうですが、ジャニスもマスターのお役に立つようにと必死なんです。どうか最後まで見ていてくれませんか?」
「お、オマエ……私に命令する気か?」
アルバートの額に冷や汗が浮かんでいるのが分かった。
何故なら、モニタの明かりに反射して光っていたからだ。
「命令?僕達はマスターの忠実なしもべですよ?これはお願いです」
「お、お願いってお前……!」
しかし、ルディは右手人差し指に、再びパワーを集めていた。
まるでまたレーザーを撃たんとしているかのように。
「僕達はマスターの安全を最優先に考えています。どうか、勝手な行動を慎んでください。お願いします」
その時、ルディの頭に最愛の姉から通信が入った。
{「ルディ。『出来損ない』の準備、できたよー」}
「了解」
その通信はアルバートが左耳に付けているインカムにも入った。
「出来損ないって何だ?」
「倉庫Gに廃棄待ちで保管されている、あれですよ」
「お、おい!まさかあれを……!?」
「どうせ廃棄処分にするヤツでしょ?だったら、ちょうど良いではありませんか」
「バカ、やめろ!あんな危険な……!」
しかしその時、ルディの右手人差し指からレーザーが発射され、アルバートの顔のすぐ横を飛んでいった。
レーザーはアルバートの背後のコンクリートの壁に当たり、そこに焦げ目がついた。
「!!!」
「あっ、ゴメンナサイ。暴発しちゃいましたw 今度は気をつけますので、お許しください。それでは……」
ルディは恭しく製作者にお辞儀をすると、居住区を出て行った。
「……!」
アルバートは抜けた腰を立て直すのに必死だった。
そんな中、モニタに映し出されたのは、所内の廊下を走るエミリーとシンディの姿だった。
「もはや、こいつらに期待するしかない……。敷島社長……あなたの言うことが、正しかった……」
[同日同時刻 天候:雷雨 研究所内地下倉庫]
エミリーとシンディはルディの言葉通り、倉庫に続く階段を下りた。
「それにしても、生きている人間は1人もいないね」
「これだけの・大きな・研究所だ。100人以上の・関係者が・いたと・思われる。だけど……」
エミリーとシンディのカメラ(目)に、また人間の姿が映った。
しかし、それは生きている人間ではない。
全身から血を出し、周辺には無数のマシンガンの薬莢が落ちている。
誰がやったのかは分からないが、マシンガンに蜂の巣にされたようである。
それはバージョンAかもしれないし、ジャニスかもしれない。
実はここに来るまでの間、こうした銃殺死体を何体も見ていた。
「ヒドいわね。まるで、昔の私達と変わらないじゃない」
「本来なら・破壊されるべき・者達だ」
そんなことを話しながら、最後のドアを開ける。
小さな倉庫のドアが立ち並ぶ区画であるが、その中にアルファベットのGが振られたドアが、激しく向こうから叩かれていた。
「絶対何かいるし」
「行くぞ。きっと・あれが・ルディの・言っていた・中ボスだ」
エミリー達がそのドアに近づくと、ついにドアがこじ開けられた。
「ほら、来た!」
中から出て来たのは……。
敷島:「ボブ・サップ!?」
平賀:「本人に失礼ですよ!」
その通り、倉庫Gから出て来たのは黒人男性を模した巨漢ロイドであった。
身長は2mほどあり、ガイノイドでも高身長で設計されているシンディ達よりも更に高い。
巨漢なだけに、体重もそれなりにありそうだった。
名前が分からないので、便宜上、ボブと名付ける。
「これが中ボス!?」
シンディ達は急いで間合いを取った。
ボブはキュルキュルキュルと人工知能で何かを処理する音を立て、シンディ達を見た。
最初は焦点の定まらぬ目であった。
「ちょっとそこのアンタ。ルディって奴から、所長室のドアを開ける認証コードをアンタが持ってるって聞いて来たんだけどね?おとなしく渡してくれる?」
「アー……!」
するとボブはシンディを見たが、すぐに視線を逸らし、エミリーに合わせた。
その時、ギラッとボブの両目が光る。
「Ohhhhhhh!It’s a beautiful woman!My bride!」
「はあ!?」
敷島:「平賀先生、ボブ・サップは何て言ったんですか?」
平賀:「ですから、ボブ・サップじゃないですって。何か……ヤツはエミリーに一目惚れしたようです」
敷島:「はあ!?」
平賀:「『俺の嫁』と言っています」
アリス:「エミリー、モテモテねぇ……」
敷島:「モテ過ぎるのも困りもんですなぁ……」
「なーにが『俺の嫁』よ!デブのくせにキモい!」
「シンディ、離れろ!組み付かれたら・一たまりもない!」
「分かってるわよ!」
「I need huuuuuuuug!!(ハグしてくれー!)」
「キモいんだよっ!」
シンディは右手をライフルに変形させると、間合いを取ってボブに発砲した。
「Ouch!……It’s a joke.Hahahahahaha!」
「効いてるの!?効いていない!?」
「効いている・はずだ。もう1発・撃て!」
「あいよ!」
シンディは間合いを取って、ボブを撃とうとした。
だが、ボブは巨漢に似合わず、間合いを詰めようとシンディに接近してきた。
「Wooooo!」
「くっ!」
シンディに組みついてこようとしたので、シンディはジャンプしてボブの頭上を飛び越えた。
ボブはシンディが自分の頭上を飛び越えて行く様を見上げた。
「シンディのパンツは青のビキニw」
「何故・そこだけ・日本語!?」
敷島:「何故そこだけ日本語!?」
平賀:「何故そこだけ日本語!?」
アリス:「Why!?」
シンディがライフルでボブの気を取っているうちに、エミリーが攻撃しないことへのツッコミは無しなのであろうか?
所内の居住区。
アルバートはエミリーとシンディの侵入に気づいていた。
アルバートに付き従っている最高傑作達が血相変えて、居住区を飛び出して行ったからだ。
居住区にもモニタはあり、それでアルバートはシンディ達の動きをチェックしていた。
(やはりだ……。やはり……あいつらは……。何故……)
アルバートは唇を噛んで悔しそうな顔をすると、後ろを振り向いて誰もいないのを何故か確認した。
そして机の下に隠すように置いていたノートPCを取り出し、無線LANと接続する。
『DCの皆さんへ。私は今、研究所の……』
そして、何やらメールを打っていたが、そのタイピングをしている最中に、
「マスター。何をしてらっしゃるんですか?」
「!!!」
振り向くと、さっきいなかったはずのルディがそこにいた。
「い、いや、その……キミ達の稼働についてちょっとレポートを……」
「僕達の稼働実験は終了したはずでは?」
「そ、そうなんだが、キミ達はまだ試作の段階だ。まだ色々とリサーチする必要がある。このモニタを見ているのだって、キミ達と日本製マルチタイプの違いについて、研究者として……」
ボーン!
「!!!」
ルディは右手人差し指からレーザービームを放った。
それはさっきタイピングしていたノートPCに直撃する。
ノートPCは無残に破壊された。
「僕達を信用していないんですか?」
そして、ズイッと前に出る。
「な、何!?」
「僕もジャニスも、あの役立たずのバージョンA達に変わって侵入者共と戦っているんです。僕もそうですが、ジャニスもマスターのお役に立つようにと必死なんです。どうか最後まで見ていてくれませんか?」
「お、オマエ……私に命令する気か?」
アルバートの額に冷や汗が浮かんでいるのが分かった。
何故なら、モニタの明かりに反射して光っていたからだ。
「命令?僕達はマスターの忠実なしもべですよ?これはお願いです」
「お、お願いってお前……!」
しかし、ルディは右手人差し指に、再びパワーを集めていた。
まるでまたレーザーを撃たんとしているかのように。
「僕達はマスターの安全を最優先に考えています。どうか、勝手な行動を慎んでください。お願いします」
その時、ルディの頭に最愛の姉から通信が入った。
{「ルディ。『出来損ない』の準備、できたよー」}
「了解」
その通信はアルバートが左耳に付けているインカムにも入った。
「出来損ないって何だ?」
「倉庫Gに廃棄待ちで保管されている、あれですよ」
「お、おい!まさかあれを……!?」
「どうせ廃棄処分にするヤツでしょ?だったら、ちょうど良いではありませんか」
「バカ、やめろ!あんな危険な……!」
しかしその時、ルディの右手人差し指からレーザーが発射され、アルバートの顔のすぐ横を飛んでいった。
レーザーはアルバートの背後のコンクリートの壁に当たり、そこに焦げ目がついた。
「!!!」
「あっ、ゴメンナサイ。暴発しちゃいましたw 今度は気をつけますので、お許しください。それでは……」
ルディは恭しく製作者にお辞儀をすると、居住区を出て行った。
「……!」
アルバートは抜けた腰を立て直すのに必死だった。
そんな中、モニタに映し出されたのは、所内の廊下を走るエミリーとシンディの姿だった。
「もはや、こいつらに期待するしかない……。敷島社長……あなたの言うことが、正しかった……」
[同日同時刻 天候:雷雨 研究所内地下倉庫]
エミリーとシンディはルディの言葉通り、倉庫に続く階段を下りた。
「それにしても、生きている人間は1人もいないね」
「これだけの・大きな・研究所だ。100人以上の・関係者が・いたと・思われる。だけど……」
エミリーとシンディのカメラ(目)に、また人間の姿が映った。
しかし、それは生きている人間ではない。
全身から血を出し、周辺には無数のマシンガンの薬莢が落ちている。
誰がやったのかは分からないが、マシンガンに蜂の巣にされたようである。
それはバージョンAかもしれないし、ジャニスかもしれない。
実はここに来るまでの間、こうした銃殺死体を何体も見ていた。
「ヒドいわね。まるで、昔の私達と変わらないじゃない」
「本来なら・破壊されるべき・者達だ」
そんなことを話しながら、最後のドアを開ける。
小さな倉庫のドアが立ち並ぶ区画であるが、その中にアルファベットのGが振られたドアが、激しく向こうから叩かれていた。
「絶対何かいるし」
「行くぞ。きっと・あれが・ルディの・言っていた・中ボスだ」
エミリー達がそのドアに近づくと、ついにドアがこじ開けられた。
「ほら、来た!」
中から出て来たのは……。
敷島:「ボブ・サップ!?」
平賀:「本人に失礼ですよ!」
その通り、倉庫Gから出て来たのは黒人男性を模した巨漢ロイドであった。
身長は2mほどあり、ガイノイドでも高身長で設計されているシンディ達よりも更に高い。
巨漢なだけに、体重もそれなりにありそうだった。
名前が分からないので、便宜上、ボブと名付ける。
「これが中ボス!?」
シンディ達は急いで間合いを取った。
ボブはキュルキュルキュルと人工知能で何かを処理する音を立て、シンディ達を見た。
最初は焦点の定まらぬ目であった。
「ちょっとそこのアンタ。ルディって奴から、所長室のドアを開ける認証コードをアンタが持ってるって聞いて来たんだけどね?おとなしく渡してくれる?」
「アー……!」
するとボブはシンディを見たが、すぐに視線を逸らし、エミリーに合わせた。
その時、ギラッとボブの両目が光る。
「Ohhhhhhh!It’s a beautiful woman!My bride!」
「はあ!?」
敷島:「平賀先生、ボブ・サップは何て言ったんですか?」
平賀:「ですから、ボブ・サップじゃないですって。何か……ヤツはエミリーに一目惚れしたようです」
敷島:「はあ!?」
平賀:「『俺の嫁』と言っています」
アリス:「エミリー、モテモテねぇ……」
敷島:「モテ過ぎるのも困りもんですなぁ……」
「なーにが『俺の嫁』よ!デブのくせにキモい!」
「シンディ、離れろ!組み付かれたら・一たまりもない!」
「分かってるわよ!」
「I need huuuuuuuug!!(ハグしてくれー!)」
「キモいんだよっ!」
シンディは右手をライフルに変形させると、間合いを取ってボブに発砲した。
「Ouch!……It’s a joke.Hahahahahaha!」
「効いてるの!?効いていない!?」
「効いている・はずだ。もう1発・撃て!」
「あいよ!」
シンディは間合いを取って、ボブを撃とうとした。
だが、ボブは巨漢に似合わず、間合いを詰めようとシンディに接近してきた。
「Wooooo!」
「くっ!」
シンディに組みついてこようとしたので、シンディはジャンプしてボブの頭上を飛び越えた。
ボブはシンディが自分の頭上を飛び越えて行く様を見上げた。
「シンディのパンツは青のビキニw」
「何故・そこだけ・日本語!?」
敷島:「何故そこだけ日本語!?」
平賀:「何故そこだけ日本語!?」
アリス:「Why!?」
シンディがライフルでボブの気を取っているうちに、エミリーが攻撃しないことへのツッコミは無しなのであろうか?