報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「出発前の準備」 2

2016-05-14 20:41:38 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月13日14:00.天候:曇 デイライト・コーポレーション・ジャパン(略称、DCJ)成田営業所]

 京成成田駅でDCJ社員の鳥柴達と合流した敷島達。
 そこからDCJ社員の車で、営業所へと向かった。
 駅から車で15分ほど、成田空港とは反対方向に走った感じである。
「デイライトさんが成田に営業所を構えている所以って何ですか?」
 8人乗りミニバンの、真ん中のシートに座っている敷島。
 助手席に座る鳥柴に聞いた。
 彼女は成田営業所の営業主任という肩書きである。
 だが、こうして敷島達の迎えに来たということは、営業系の仕事は表向きで、別の意味での裏方の仕事もしているのではないかと思われた。
 普通、そういうのは総務とか、あるいは専門の部署とかが存在しそうなものだが、そもそもが成田営業所という所自体が裏方の仕事を行う場所ではないかと敷島は思ったのだ。
「やはり、成田空港の近くであるということですね。同じ成田市内とはいえ、少し離れてはいますが……。アメリカの本社と日本の本社とで、色々やり取りがある場合の仲介役として、です」
 と、鳥柴は答えた。
「なるほど。確かに今、やり取りが行われている最中ですな」
 敷島は大きく頷いた。
「いや、マルチタイプを空輸する手続きを行って下さるということで、そういった専門の部署なのではないかと思ったのですよ」
「……ハズレでは無いと思います。アメリカ本社で開発したロボットを、こちらに空輸したことがありますから」
「それ、初めて聞いたよ?」
 アリスが目を丸くした。
 鳥柴とは部署こそ違えど、同じDCJの社員である。
「空輸した直後、右腕にⅢと記載されたマルチタイプに破壊されてしまいました。残念です」
「シンディ!お前か!」
「……メモリーのダウンロードに時間が掛かりそうだけど、何かブッ壊した気がするねぇ……。もしそうだとしたら、申し訳無い」
 シンディは頭を下げた。
 もちろんそんなことしたのは、テロリズム用途として稼働していた前期型ボディの頃だろう。
「いえいえ。マルチタイプの力、知ることができましたから」
 鳥柴は微笑を浮かべた。

 車が市内の小さなビルの前に止まる。
 5階建てのビルであった。
「何か、菊川時代のうちの事務所を彷彿とさせるねぇ……」
 と、敷島。
 もっとも、その時の事務所は4階と5階に入居していただけであったが、こちらは全フロアが成田営業所なのだという。
 DCJの自社ビルなのか、はたまたテナントビルをまるまる一棟借りしているのかは分からない。
 尚、税金対策なら後者である。
「ここでシンディ達を梱包するわけですか」
「そうです」
 車を降りて、ビルの中に入る。
 梱包すると言っても、ただ単に電源を落として箱詰めすれば良いというものではない。
 万が一に備えて、データやメモリーのバックアップを取らなければならないし、超小型ジェットエンジンなどは取り外しておかなければならない。
 しかもマルチタイプは右手が銃火器に変形するタイプなので、本来ならそれも取り外さなければならないのだが、標準装備である以上、それはムリである。
 ドクター・ウィリーがどうやってシンディを持ち込んだのかは不明だが、南里の場合はエミリーをほとんどバラバラにした状態で日本に持ち込んだという。
 ほぼ、密輸である。
 恐らくウィリーもそのようにしてシンディを持ちこんだと思われるが、裏社会にも通じていたため、そちらのルートを使ったと考えられなくもない。
「危険物と思われる物は、全て取り外してください」
 エレベーターで地下1階へ降りる。
 するとそこは、ちょっとした研究施設になっていた。
 やはり、成田営業所自体が秘密の研究所であったらしい。
 秘密の研究所は埼玉県秩父市に移転したのではないかと思われるが、あちらは公然の秘密なのに対し、こちらは本当の秘密なのかもしれない。
「じゃあ、作業を始めるよ」
「まずはエミリーから」
「イエス」
「2機同時にできんのか?」
 と、敷島はアリスに言った。
「できなくはないですが、できれば同じ技術を持った人間が一緒にいる方がいいです」
 平賀は複雑な顔をして、敷島の疑問に答えた。
「そうなんですか」
「それに、ここの研究員の人達も見たいらしいですし」
 いつの間にか、作業服の社員達が数名集まっていた。
 ロボット研究者と言えど、生物学や薬学、医学などではないので、白衣ではない。
「あらまっ。……じゃあ、私はもう2機、用意してきますかね」
「もう2機?」
 平賀は首を傾げた。
「デイライトさんが興味を示しているロイドは、マルチタイプだけではないということですよ。ちょっと迎えに行ってきます。私はここでは何もやることは無さそうですし」
 すると鳥柴が、
「私が車を出しますね。一緒に行きましょう」
 と、申し出た。
 すぐにアリスが、
「シンディ!どうせ今は、あなたも待機しているだけだから一緒に行って!」
「かしこまりました」
「お前、何か疑ってるか?」
 敷島は眉を潜めてアメリカ人妻を見据えた。

[同日14:30.天候:曇 JR成田駅]

 敷島達は京成成田駅で降りたが、今度向かった場所はJRの成田駅。
 そこの駅前に行くと、金髪碧眼の姉弟ボーカロイドが仲良く待っていた。
「よお、リン・レン」
「社長、お疲れ様です」
 敷島が車から降りると、リンとレンはパタパタと走ってやってきた。
「千葉でのミニライブ、ご苦労さんな。一緒に行けなくて悪かった」
「いいえ。新しいマネージャーさんが一緒でしたから」
「成田までの電車が分からなくて、テンパってたけどね〜」
「そ、そうか?快速“エアポート成田”で、一本だと思うんだが……」
 敷島は首を傾げた。
「ま、皆が皆、社長みたいな鉄オタってわけじゃないってことよ」
 シンディがリンとレンの荷物を車に積み込んで言った。
「あれ?シンディ、梱包の準備をしてるんじゃ?」
 と、リン。
「先にエミリーからだって。どうせ待ってるだけなら、あんた達の迎えに行きなってアリス博士に言われたの」
「大変ですね、マルチタイプも」
 レンは小さく笑って車に乗り込んだ。
「ま、ロイドは人間に使われてナンボだから……」
「じゃあ、いいですか?また営業所に戻りますよー?」
 運転席に座ってる鳥柴が言った。
「あ、はい。お願いします」
「お姉さん、誰ー?」
 と、リン。
「こらこら、人を指さすな。失礼だぞ」
 敷島はリンを注意した。
「デイライト・コーポレーションの人よ。失礼の無いようにね」
 シンディも補足するように言った。
「はぁーい」
 車が再び営業所に向かって走り出す。
 リンはシンディを慕っていることもあって、シンディにベッタリくっついている。
 シンディはたまにボーロカイド達のヘアメイクも行っているのだが、特にリンはシンディにそれをされたがった。
 シンディも、まるで妹ができたみたいでリンを可愛がったことも、慕われる大きな一因であっただろう。
 そんなリンも仕事が忙しくなった上、リンよりもタイプの近いアルエットが妹機として存在するようになったため、リンがシンディにくっつく所は最近ではあまり見かけない。
 が、今でもたまにあるということを改めて認識させられた。
 シンディも時折、リンの特徴である頭の大きな白いリボンを引っ張ったりして遊んでいる。
「見た目はジャニスとルディに似てますね?」
 鳥柴がルームミラーを見ながら言った。
「アルバート所長は、中身はシンディ達を参考にしたのかもしれませんが、外側はリン達を参考にしたのではないかと思わざるを得ませんね」
 敷島も頷いて鳥柴に同調した。
 リンとレンの設定年齢は14歳であるが、ジャニスとルディはそれにプラス10歳ほど年齢をプラスしたといった感じである。
コメント (1)
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