[5月15日19:00.天候:雷雨 アメリカ合衆国アーカンソー州某所・DC Inc.アーカンソー研究所]
強い雨が降り、雷が鳴る中、『走る司令室』は山地の中にポツンと建つアーカンソー研究所に通じる1本道の入口に到着した。
ここには厳重なバリケード付きのゲートが設置され、デイライト・コーポレーション直営の警備会社DSS(Daylight Security Service)の警備員が常時監視を続けていた。
警備員といっても日本のそれとは違い、彼らの乗って来る車は警察びっくりの装甲車で、装備も警察の特殊部隊並みであった。
アメリカの警備会社は、登録手続きさえすれば銃の所持が許可されるが、ここまで本格的な装備を行う警備会社はアメリカ広しと言えど、なかなか無いのではないか。
また、日本の警備員が現行犯逮捕しか犯人を逮捕できないのに対し、アメリカでは警察並みの捜査権を持つこともできる。
キースが運転する『走る司令室』がそのゲートの前に到着した。
すぐに、ショットガンで武装する警備員がバスに近づいて来る。
この警備員とキースとクエントは顔見知りのようだった。
ドアを開けて、乗り込んでくる。
「遅かったな。キース、クエント」
するとクエントが肩を竦めて、
「バックレるよりはマシだろ?ほら、日本からのエージェントさん達だ」
「日本からはるばるご苦労さん。私はDSSの特務班、チャック・マーレイだ。よろしく」
「チャック、エージェントさん達に現況の説明をしてくれ」
と、キースが運転席から言った。
「現況の説明といっても難しいな。今のところ情報無し、動き無し、手掛かり無し、皆無だ」
ダリオと言う名の黒人警備員は肩を竦めた。
「どういうことだ?」
敷島が怪訝な顔をした。
「確かに時折、所内から人間の叫び声や銃声が聞こえることはある。だが、外で俺達が張っているのは知っていると思うのに、何故か俺達は奴らと交戦していない」
「それは向こうから攻めて来ないということですか?」
と、平賀。
「そうだ。俺達も一民間警備員である以上、積極的な突入はできない。これ以上は警察または軍隊の仕事だ」
(ヘルメットに防弾チョッキ、ショットガン装備で、何言ってるんだか……)
と、敷島は思った。
もっとも、ザコロボットにはショットガンは効いても、マルチタイプにはさっぱり効かないだろう。
「じゃ、アタシ達は何をすればいいの?」
アリスが文句を言った。
「だが会社は警察や軍隊に介入して欲しいと思っていない。そこで、エージェントの皆さんの出番だ」
ダリオが大きく頷いた。
「俺達が突入できない以上、エージェントの皆さんが突入してほしい。もちろん、作戦についてはあなた達に任せる」
「ってことで、ここからエミリーとシンディの出番になるってことだな」
「そういうことになるね」
「お任せ・ください」
鋼鉄姉妹も頷いた。
「じゃ、細かい作戦会議といこう」
エミリーとシンディにカスタムパーツを取り付ける。
動きが遅くなるので、超小型ジェットエンジンは取り付けず、その代わりにブースターを仕込んだ。
見た目はロングブーツをはいているようにしか見えない。
右手の銃火器も同じように強化した。
当然、銃弾は満タンにしておく。
腰のベルトに弾薬ケースを取り付けた。
これなら、途中で弾薬を拾っても、持ち歩くことができる。
内部は秘密の研究所なので、構造については明らかにされていない。
当初は本社も内部構造を記した見取り図を敷島達に公開するのを躊躇っていた。
だが、さすがにそれはムリと判断したか、外部に一切漏らさない、作戦が終了したらすぐに破棄することを条件に公開された。
それは真ん中のモニタに映し出され、エミリーとシンディがどこにいるかピンポイントで分かるようにした。
「じゃ、お前達、頑張れよ」
「はい」
「お任せ・ください」
「絶対、無事で戻ってこいよ。お前は南里先生の形見なんだから」
「かしこまりました。プロフェッサー平賀」
こうして2機のマルチタイプは、セキュリティゲートを越え、アルバートの研究所へと向かった。
相変わらず上空は雷鳴が轟き、強い雨が降っていた。
もちろんマルチタイプ達には、こんな大雨どこ吹く風である。
『走る司令室』のモニタで左側はエミリーの視点、右側はシンディの視点が映し出されている。
基本的にはマルチタイプ達の行動に任せるが、司令室内の通信機などを使ってエミリー達に指示を出すことは可能だ。
まずは2人して研究所に向かうが、本当のセキュリティエリアを越えると、早速現れた。
「グオオオッ!」
それは犬型ロボット。
山地にある研究所らしく、あえて人型ロボットではなく、犬型を使っているらしい。
シンディ達の姿を見ると、飛び掛かって襲って来た。
シンディは右手をマシンガンに変形させるが、すばしっこい犬型ロボットにはなかなか当たらない。
「ぐっ!」
右手に噛み付かれた。
すぐに振り払う。
こういう時、有利なのはエミリーが装備しているショットガンだ。
猟銃としても使用されるだけあって、正に獣型には打ってつけ。
シンディはマシンガンからマグナムに変形させると、それで猪突猛進に攻めてくる犬型ロボットを撃ち抜いた。
「シンディ、大丈夫か?」
エミリーが犬型ロボットを一掃した。
「何とかね。獰猛なのは苦手。もっと可愛いのがいいわ」
敷島:「チワワを番犬に使う研究所はいないだろうな」
犬型モンスターの大半はドーベルマンやシェパードを模したものであった。
何とか研究所の周りの番犬達を一掃させたシンディ達は、研究所の正面入口に到達した。
「それにしても、現れたのは犬だけで、あのジャニスとかルディとかはいないね?」
「中で・待ち構えて・いる・恐れが・ある。油断・するな」
「了解」
正面入口には鍵が掛かっておらず、中に入ることができた。
入った場所は当然エントランスホールになっているわけだが、人の気配もロイドの気配も無かった。
「静かね。まるで、時までが止まっているかのよう」
敷島:「まずは所長室に向かってくれ。いきなりそこにアルバート所長がいるとは思えないが、それでも何かしらの手掛かりがあるだろう」
敷島が『走る司令室』の中から、通信機でエミリー達に指示を出した。
「了解」
「かしこまりました」
研究所の内部構造は、既にエミリー達のデータに入っている。
平賀:「こういう時、敷島さんの指令は頼りになりますね」
敷島:「私とて東京決戦の経験者ですから、その経験を踏まえているだけです」
2機のマルチタイプはエントランスホールから所長室へ向かう廊下を進んだ。
「来たわよ!」
廊下の向こうから、リンやレンを浚ったものと同型と思われるバージョンAが向かって来た。
「排除・するぞ!」
「了解!」
バージョンA達も右手を銃火器に換装している。
奴らが発砲する前に、こちらから先制攻撃を仕掛けるのが勝利の鍵であることを、エミリー達は学習してきた。
従って、バージョンAでさえも、マルチタイプの前ではザコなのである。
強い雨が降り、雷が鳴る中、『走る司令室』は山地の中にポツンと建つアーカンソー研究所に通じる1本道の入口に到着した。
ここには厳重なバリケード付きのゲートが設置され、デイライト・コーポレーション直営の警備会社DSS(Daylight Security Service)の警備員が常時監視を続けていた。
警備員といっても日本のそれとは違い、彼らの乗って来る車は警察びっくりの装甲車で、装備も警察の特殊部隊並みであった。
アメリカの警備会社は、登録手続きさえすれば銃の所持が許可されるが、ここまで本格的な装備を行う警備会社はアメリカ広しと言えど、なかなか無いのではないか。
また、日本の警備員が現行犯逮捕しか犯人を逮捕できないのに対し、アメリカでは警察並みの捜査権を持つこともできる。
キースが運転する『走る司令室』がそのゲートの前に到着した。
すぐに、ショットガンで武装する警備員がバスに近づいて来る。
この警備員とキースとクエントは顔見知りのようだった。
ドアを開けて、乗り込んでくる。
「遅かったな。キース、クエント」
するとクエントが肩を竦めて、
「バックレるよりはマシだろ?ほら、日本からのエージェントさん達だ」
「日本からはるばるご苦労さん。私はDSSの特務班、チャック・マーレイだ。よろしく」
「チャック、エージェントさん達に現況の説明をしてくれ」
と、キースが運転席から言った。
「現況の説明といっても難しいな。今のところ情報無し、動き無し、手掛かり無し、皆無だ」
ダリオと言う名の黒人警備員は肩を竦めた。
「どういうことだ?」
敷島が怪訝な顔をした。
「確かに時折、所内から人間の叫び声や銃声が聞こえることはある。だが、外で俺達が張っているのは知っていると思うのに、何故か俺達は奴らと交戦していない」
「それは向こうから攻めて来ないということですか?」
と、平賀。
「そうだ。俺達も一民間警備員である以上、積極的な突入はできない。これ以上は警察または軍隊の仕事だ」
(ヘルメットに防弾チョッキ、ショットガン装備で、何言ってるんだか……)
と、敷島は思った。
もっとも、ザコロボットにはショットガンは効いても、マルチタイプにはさっぱり効かないだろう。
「じゃ、アタシ達は何をすればいいの?」
アリスが文句を言った。
「だが会社は警察や軍隊に介入して欲しいと思っていない。そこで、エージェントの皆さんの出番だ」
ダリオが大きく頷いた。
「俺達が突入できない以上、エージェントの皆さんが突入してほしい。もちろん、作戦についてはあなた達に任せる」
「ってことで、ここからエミリーとシンディの出番になるってことだな」
「そういうことになるね」
「お任せ・ください」
鋼鉄姉妹も頷いた。
「じゃ、細かい作戦会議といこう」
エミリーとシンディにカスタムパーツを取り付ける。
動きが遅くなるので、超小型ジェットエンジンは取り付けず、その代わりにブースターを仕込んだ。
見た目はロングブーツをはいているようにしか見えない。
右手の銃火器も同じように強化した。
当然、銃弾は満タンにしておく。
腰のベルトに弾薬ケースを取り付けた。
これなら、途中で弾薬を拾っても、持ち歩くことができる。
内部は秘密の研究所なので、構造については明らかにされていない。
当初は本社も内部構造を記した見取り図を敷島達に公開するのを躊躇っていた。
だが、さすがにそれはムリと判断したか、外部に一切漏らさない、作戦が終了したらすぐに破棄することを条件に公開された。
それは真ん中のモニタに映し出され、エミリーとシンディがどこにいるかピンポイントで分かるようにした。
「じゃ、お前達、頑張れよ」
「はい」
「お任せ・ください」
「絶対、無事で戻ってこいよ。お前は南里先生の形見なんだから」
「かしこまりました。プロフェッサー平賀」
こうして2機のマルチタイプは、セキュリティゲートを越え、アルバートの研究所へと向かった。
相変わらず上空は雷鳴が轟き、強い雨が降っていた。
もちろんマルチタイプ達には、こんな大雨どこ吹く風である。
『走る司令室』のモニタで左側はエミリーの視点、右側はシンディの視点が映し出されている。
基本的にはマルチタイプ達の行動に任せるが、司令室内の通信機などを使ってエミリー達に指示を出すことは可能だ。
まずは2人して研究所に向かうが、本当のセキュリティエリアを越えると、早速現れた。
「グオオオッ!」
それは犬型ロボット。
山地にある研究所らしく、あえて人型ロボットではなく、犬型を使っているらしい。
シンディ達の姿を見ると、飛び掛かって襲って来た。
シンディは右手をマシンガンに変形させるが、すばしっこい犬型ロボットにはなかなか当たらない。
「ぐっ!」
右手に噛み付かれた。
すぐに振り払う。
こういう時、有利なのはエミリーが装備しているショットガンだ。
猟銃としても使用されるだけあって、正に獣型には打ってつけ。
シンディはマシンガンからマグナムに変形させると、それで猪突猛進に攻めてくる犬型ロボットを撃ち抜いた。
「シンディ、大丈夫か?」
エミリーが犬型ロボットを一掃した。
「何とかね。獰猛なのは苦手。もっと可愛いのがいいわ」
敷島:「チワワを番犬に使う研究所はいないだろうな」
犬型モンスターの大半はドーベルマンやシェパードを模したものであった。
何とか研究所の周りの番犬達を一掃させたシンディ達は、研究所の正面入口に到達した。
「それにしても、現れたのは犬だけで、あのジャニスとかルディとかはいないね?」
「中で・待ち構えて・いる・恐れが・ある。油断・するな」
「了解」
正面入口には鍵が掛かっておらず、中に入ることができた。
入った場所は当然エントランスホールになっているわけだが、人の気配もロイドの気配も無かった。
「静かね。まるで、時までが止まっているかのよう」
敷島:「まずは所長室に向かってくれ。いきなりそこにアルバート所長がいるとは思えないが、それでも何かしらの手掛かりがあるだろう」
敷島が『走る司令室』の中から、通信機でエミリー達に指示を出した。
「了解」
「かしこまりました」
研究所の内部構造は、既にエミリー達のデータに入っている。
平賀:「こういう時、敷島さんの指令は頼りになりますね」
敷島:「私とて東京決戦の経験者ですから、その経験を踏まえているだけです」
2機のマルチタイプはエントランスホールから所長室へ向かう廊下を進んだ。
「来たわよ!」
廊下の向こうから、リンやレンを浚ったものと同型と思われるバージョンAが向かって来た。
「排除・するぞ!」
「了解!」
バージョンA達も右手を銃火器に換装している。
奴らが発砲する前に、こちらから先制攻撃を仕掛けるのが勝利の鍵であることを、エミリー達は学習してきた。
従って、バージョンAでさえも、マルチタイプの前ではザコなのである。