報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「執事ロイドだった者」

2015-09-21 22:14:48 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月5日10:00.天候:晴 東京都23区内某所・東京都心大学 敷島孝夫、平賀太一、1号機のエミリー、3号機のシンディ]

 エミリーは首都圏における平賀の研究拠点、都内の大学の研究室に運ばれた。
 そこで修理と何があったかの調査である。
 あの大爆発の最中、マルチタイプのエミリーはほとんど損傷することはなかった。
 ケンショーセピアが、エミリーを大爆発の直撃から守ってくれたらしい。
 だが、その代わりにセピアはバラバラとなって死亡した。
 ……いや、破壊されたと言った方が良いのか。
 比較的無事だった右腕だけを拾い、あちこちで火炎が起きる最中、エミリーが発見したのは、同じくバラバラの焼死体と化した十条伝助。
 顔だけは何とか本人と判別できる程度であったため、エミリーはそれを持ち去ったようである。
 村中課長など、警察関係者は黒幕の死亡に地団太踏んだ。
 だが、ここで新たな展開となる。
 爆発に巻き込まれて死んだと思われた十条伝助だったが、頭部をレーザーで撃ち抜かれた跡があった。
 あの後、警察が中に入って調べたが、殺傷能力のあるレーザーが飛んでくるような仕掛けは見当たらなかった。
 と、なると、あとは1つしか無い。

 キールが手持ちの光線銃で、十条伝助を撃ち殺した説。

「製作者を撃ち殺すとは、何て奴だ!」
 敷島も不快感を露わにした。
「平賀博士、もういっそのこと、エミリーからキールの“記憶”は消した方がいいんじゃないですか?」
「アタシからもお願いするわ」
 敷島の提案にシンディも乗った。
「残念だが、それは難しいことです。いや、自分もそれが1番だとは思うんですがね」
「何で難しいんですか?」
「消去した部分と残った部分を、何の違和感も無くつなぎ合わせるには莫大な手間と時間が掛かる。もう既にあの老人の死を見届けたのだから、キールを整備する者はもういないはずです」
「それはそうですけど……。もしまだKR団の残党がいれば、キールを確保される前にこちらが見つけ出しませんとね」
 ケンショーイエローの話では、大爆発が起きる直前、キールと思しき者が脱出する所を見たという。
 その時、既に十条伝助は殺されていた可能性がある。
「その通りです。が、ここからまた警察の仕事になりますよ、敷島さん?」
「いい加減、捜査権を委譲してもらいたいものです」
「日本の司法制度ではムリですな。せいぜい、警察の捜査のお手伝いをする程度ですよ?どこかの探偵みたいにね?」
「全く……。相手はもはや人間じゃないってのに……」
「『世の為、人の為。それがロボットの生きる道』」
「えっ?……どこかで聞いたことが……?」
「ドクター南里……」
「姉さん!?」
 エミリーが僅かに起動した。
「ドクター南里の……格言……です」
「あー、そういやそんなことが書いてあったような気がするなぁ……」
 敷島は顎を天井に向けながら、過去の記憶を紐解いた。
「南里先生のお言葉ですよ。自分の大学の研究室の中に、一応貼らせてもらっています」
「キールはもはや、その“道”から外れてますな」
「1度は破壊されないと分からないわね。アタシがそうだったように……」
 シンディは自分のことのように……というか、まんま自分のことだ。

 
(東京決戦の際、バージョン3.0などのロボット軍団を率いて日比谷界隈を占拠したシンディ。中央右側で大型ナイフを手に、ロボット軍団に命令を与えている。4.0以降は銃火器を装備しているが、3.0以前は飛び道具ではない武器を手にすることが多かった。この後、決戦の舞台は丸の内・大手町へ)

「今でも、あの東京決戦の時の“記憶”は消したい。でも、それはしちゃいけない」
「よく分かってるな。もう2度と、繰り返してはいけない」
「……でも、たかだか執事ロボットなんかにできるかしら?」
「キールは色々と強化されてるんだろ?」
「いや、でも、アタシから見たら、バージョン400よりも弱い気がするけどねぇ……」
「ただ、キールは人間じゃないからな。村中課長からは見つけ次第、破壊していいと言われてる。但し、空気は読めってさ」
「まあ……言わんとしていることは分かるけどねぇ……」

[同日11:03.新宿駅・都営新宿線ホーム 敷島孝夫&シンディ]

「じゃあね、姉さん。また来るからね」
 シンディはエミリーと額を合わせて、それから敷島と共に大学を後にした。
 その足で、財団があった新宿のビルに立ち寄る。
 財団は解散したが、再結成の動きがあり、ビルの一室に事務局はあったからだ。
 そこで業務連絡みたいなことをして、それから事務所に戻ることにした。
 11時ちょうど発の急行電車は見送る。
 最寄りの菊川駅には、急行は止まらないからだ。
 その代わり、各駅停車は新宿駅始発なので余裕で着席した。
 その横にシンディが立つ。

〔「お待たせ致しました。各駅停車の本八幡行き、まもなく発車致します。終点、本八幡まで、急行の通過待ちはありません」〕

 発車ベルの合図の共に、京王線の車両を使用した電車が走り出した。

〔都営新宿線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は各駅停車、本八幡行きです。次は新宿三丁目、新宿三丁目。丸ノ内線、副都心線はお乗り換えです。お出口は、右側です〕

「まあ、エミリーは平賀先生が修理して下さっているから、何も心配することはないさ」
 敷島は脇に立つシンディを見上げながら言った。
「ええ」
 巨乳に顔が少し隠れたシンディは頷いた。
「一応は一段落したわけだから、今度は少し事務所の仕事に精を入れないとな」
「どのボカロに付き添う?」
「今日はミクにしよう。原点回帰だ」
「了解」
 シンディは今日のミクのスケジュールをダウンロードした。
 さすが売れっ子ボーカロイド初音ミク、今日もスケジュールはギッシリだった。
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする