報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

"新アンドロイドマスター" 「最終決戦の地へ向かう」 2

2015-09-16 22:08:44 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月2日11:10.天候:晴 福島県福島市・東北自動車道上り線・吾妻(あづま)PA 敷島孝夫、井辺翔太、3号機のシンディ、8号機のアルエット、MEGAbyte]

 バスは大した渋滞に巻き込まれることもなく、唯一の休憩箇所に入った。

〔「ご乗車お疲れさまです。吾妻パーキングエリアでございます。こちらで15分の休憩を致します。発車は11:25分です。……」〕

 バス用の駐車場に止まる。
「ちょっと降りてみるか」
「はい」
 敷島と井辺はバスを降りた。
「ちょっとトイレと水分補給に行くだけですから、皆さんは待ってていいですよ」
 と、井辺はMEGAbyteの3人に言ったのだが、それでも降りて来た。
 マルチタイプは護衛の為に降りる。
 性別上、男子トイレまで入って行けないのが残念だ。
「男のマルチタイプを作ってもいいだろうにな」
「かつては存在していたんですよね?」
「らしいな」
 そう言いながら男子トイレに入る敷島と井辺。

 待っている間、周辺をスキャンするシンディ。
「ロイドやロボットの反応は無い。……安全地帯か」
 アルエットはMEGAbyteの3人と一緒にコンビニに入っていた。
 このパーキングエリアは少し特殊で、店舗はコンビニとラーメン店があるだけである。
 それでも土産物などは置いてあるようで、キーホルダーとか見ていた。
「まあ、まさかKR団敵対者がここにいるとは思わないでしょうけど……」
 姉のエミリーについては、全く検索できないままであった。
 そもそも電源が入っているのかどうかすらも怪しくなってきた。
(キールのヤツ、絶対ブッ壊してやるからな……)

 トイレから出て来た敷島達、
「社長」
「プロデューサーさん」
 アルエットとゆかりがやってきた。
「コーヒー、どうぞ」
「ん?ああ、ありがとう」
 コンビニで最近販売している、客が自分でドリップして入れるコーヒーだ。
 高速のパーキングでも売っていたか。
「あらあら、アタシの仕事取られちゃったねぇ……」
 従妹の行動に、シンディは髪をかき上げて苦笑い。
「シンディ、この辺りは大丈夫か?」
「バージョン4.0どころか、産業用ロボットすらいない。長閑な所だねぃ……」
「そうか」
 敷島達はバスに戻っていった。

[同日同時刻 埼玉県さいたま市大宮区 KR団本部地下研究所 1号機のエミリー&ケンショーイエロー]

「……そして今正に大聖人様が頸を刎ねられんとしたその時!……次回に続きます。以上!」
「ありがとう・ございました」
 エミリーはイエローの話相手になっていた。
「あー、ところでエミリーや。メシはまだかのぅ?」
「昼食の・時間まで・およそ・48分です。お待ち・願います」
「そうか。では、特別に話の続きをしよう。しかるに、細井管長は池田大作の金力に絆され、あろうことか……」
(? 日蓮大聖人の・話では・無かったの・か?)
 エミリーは首を傾げた。

[同日12:15.天候:曇 福島県会津若松市・JR会津若松駅前 敷島、井辺、シンディ、アルエット、MEGAbyte]

 バスはほぼ定刻通りに会津若松駅前のバスプールに到着した。
 バスの終点はもっと先、鶴ヶ城の近くである。
 しかしここで降りる乗客は多く、敷島達も降りた。
 大きな荷物は力持ちのシンディと井辺で持つ。
 アルエットもマルチタイプならではの馬力を持ち合わせてはいるが、見た目が中高生の少女にそれは不自然だということで、あまり大きな荷物は持たせない。
「次は会津鉄道ですね、社長?」
「そうだ。といってもまだ少し時間があるから、駅の中で休んでよう。ちょうどさっき、村中課長から着信があったからね」
「おおっ、では……」
「掛け直してみるよ。井辺君はキップ買ってきて」
「分かりました」
「アルも一緒についててあげて」
 と、シンディが従妹に言う。
「はーい(^O^)/」
 アルエットは素直に従った。
 駅の中に入り、敷島とシンディは待合所の方へ。
 井辺とアルエットはキップ売り場の方へ。
 MEGAbyteの3人は土産物売り場を覗いた。
 ここでも周囲をスキャンするシンディ。
 やはり、ロイドなどの反応は無い。
 もちろん人間のテロリストや刺客もいるわけで、それはスキャンに掛からないわけだから、別に注意しなくてはならない。
「……あ、もしもし。村中課長ですか?……ええ、すいません。バスの中でしたので。……そりゃあ、新幹線が動いてませんからね。私らは私らで、独自のルートを行きますよ。おかげ様で、刺客もテロリストも全くいない平和なルートです。……それで、許可の方は?」
{「条件がある。人数を必要最低限にしてもらいたい」}
「そう来ると思って、もう既に選定してますよ。まず、言い出しっぺの私。それとシンディです」
{「2人だけでいいのか?何なら、もう1人か2人くらいは……」}
「いえ。アルエットも攻撃力はありますが、何ぶん、うちの事務所の者達も一緒に行動してまして、その者達の護衛も必要なので」
{「まあ、少ないに越したことはないがね。ややもすると、そのシンディの姉妹機が敵対してくることも考えられる。勝算はあるのかね?」}
「やってみなければ分かりませんよ。……ええ。予定なら、夕方までには着けると思うので。……分かりました。では春日部に着きましたら、また電話します」
 そう言って敷島は電話を切った。
「どうなの?」
「何とか許可は取れた。だけど、必要最低限の人数にしてほしいということだから、シンディ、お前と2人で行こう」
「……アルは?」
「アルエットにあっては、井辺君やMEGAbyte達の護衛に当たってもらう。もしかすると、事務所も大変なことになるかもしれないからな」
「まあ、しょうがないか。あとは全員、“スペーシア”で浅草までね」
「ああ」
 駅の発車票の会津鉄道会津線の所には、『12:54 快速AIZUマウントエクスプレス6号 鬼怒川温泉』という表示が出ていた。
「村中課長も首を傾げていたよ。でも、これが鉄道裏ルートなんだ。これなら、ケンショーレンジャーにやられた所を通らずに埼玉や東京に行ける」
「確かにね……」
 シンディは腕組みをして頷いた。
「昼食はいいの?」
「ああ。ここで駅弁買って行くさ」
「……そういうこと。アタシが買ってこようか?」
「じゃあ、頼むよ。井辺君の分も」
「あいよ」

 この風景だけだと、とても最終決戦の地へ向かうようには見えなかった。
コメント (2)
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