[9月2日17:45.埼玉県さいたま市大宮区・県道2号線(旧・国道16号線) 敷島孝夫、村中課長、3号機のシンディ]
春日部駅からは国道16号線ではなく、あえて旧国道を通った敷島達。
見沼区内にある規制線を越えると、一気に人通りも車通りも無くなった。
「ゴーストタウンですな……」
一時期、市内全域が立ち入り制限区域になっていたさいたま市。
岩槻区や見沼区も被害を受けていたが、街の中心街に行くほどに被害は大きくなっていった。
ただ、それでも、例えば戦争や大地震などの後のような瓦礫の山とかいうわけではない。
ケンショーレンジャー達は率先して町を破壊したというよりは、警察からの攻撃に抵抗して、その巻き添えになった……というのが正しいようだ。
「早いとこ、ケンショーレンジャーや十条伝助を確保しなければならん。このシンディならできるのかね?」
「ご安心ください。その為のマルチタイプです」(←碇ゲンドウ風)
「蜂の巣ではなく、生きて捕獲してくれよ?」
助手席に座る村中は、念を押すようにリアシートを振り向いた。
「もちろんですよ。ただ、伝助爺さんがサイボーグ化していて、物凄く強化されていた場合は難しいですが」
「まあ、それは仕方が無いが……」
覆面パトカーは、旧国道16号線から今度は産業道路へ右折し、北上する。
どちらも県道ながら多くの車で賑わう幹線道路だというのに、今では走っている車はこのパトカーしかいない。
敵に発見されないよう、赤色灯は引っ込めたままにし、当然サイレンも鳴らしていない。
因みに、制限区域内は停電している。
電柱を倒されたり、電線を切られるなどした場所を除いて、実はほとんど停電になるような要素は無いのだが、ロボットやサイボーグなどが充電できないよう、わざと送電を止めているのだ。
おかげさまで、研究所に近づく度にそこから出て来たと思われるバージョン4.0などが転がっているのだが、そのどれもがバッテリー切れによるものだった。
因みに敷島達は見つけ次第、そのロボット達のバッテリーを完全に破壊しておいた。
「こいつらも使い方次第で、味方にはなれますわよ?」
と、シンディは村中に言ったのだが、村中は肩を竦めて、
「既にこいつらはテロ・ロボットとして世間に浸透してるんだ。とてもそんなものは使えないよ。キミ達姉妹も本来はそうだが、美人さんだったのが幸いしたな」
と、答えた。
「世界的なマッドサイエンティストではあるが、美人に設計してくれたことを感謝した方が良い」
「ええ、もちろんです」
大宮サッカー場の横を通る。
「課長、まもなく顕正会の本部会館ですが……?」
運転席でハンドルを握る、村中の部下が答えた。
彼もまたスーツ姿の私服刑事である。
「確か、この先にPB(交番)があったな。その前に車を止めてくれ。あとはそこから徒歩で向かう」
「了解しました」
パトカーが顕正会本部の前を通る一方通行の路地の前を通り過ぎた。
その先には、国際興業バスの『大宮公園入口』バス停と東武バスの『大宮公園東口』バス停がある。
そこの前に差し掛かった時、それは起きた。
それは大きな爆発音。
「な、何だ!?」
車は急停車。
その大きな爆発音により、明らかに地震のような振動が起きた。
「何だ、ガス爆発か!?」
車を降りる敷島達。
村中は拳銃を出して身構え、シンディは右手をマシンガンに換えた。
しかし、どこで爆発が起きたのかは分からなかった。
「とにかく、行ってみよう」
「はい」
本当は裏手に回って、そこから本部に乗り込む手筈だったが、急きょ正面から回ることにした。
件の路地を通って、ケンショー本部に辿り着く。
「爆発音はこの辺りからしたわ」
と、シンディ。
「なるほど。僅かに焦げた匂いがするな。ガス爆発か何かか?ガスの臭いはしないが……」
半開きになった正門から中に入る。
火事があった跡はあり、植木などが所々黒焦げになっている。
だが、今の爆発によるものではないことは明らかだ。
ガラスも所々割れている。
「地下研究所の入口は向こうだ」
「建物の中から行くんじゃないんですね?」
「そりゃそうだよ」
本部会館の裏手に回ると、
「あわわわわわ……」
黄色いスーツを来た老人が座り込んでいた。
「お前はケンショーレンジャー3号、ケンショーイエロー!」
村中は拳銃を突き付けた。
「おとなしくしないと、人工知能を蜂の巣にするよ?……って、あれ?」
シンディもマシンガンを突き出しながら言ったが、直後に行ったスキャンにより、
「課長、社長、この爺さん、人間の反応しかしないけど……」
「何だって!?」
「おい、黄色い爺さん、どういうことだ?」
村中が尋問する。
「わ、ワシゃ、科学者のジジィに騙されただけぢゃ!こ、殺さんでくれ!!」
「科学者!?それは十条伝助のことか!?」
「そうじゃそうじゃ!あのジジィに、ワシらケンショーレンジャーは……ガクッ!」
「お、おい!」
「……気絶しているだけだわ」
「本当にただの人間なんだな?」
「ええ。サイボーグなら、人間ともロボットとも判別が付かない変な反応になるんだけど、この爺さんはバリバリの人間の反応よ」
シンディは答えた。
「では一応、病院に運ぶとしよう。……あー、こちら村中」
村中課長は通信機を取り出した。
周りを見渡すと、芝生のど真ん中に不自然なマンホールがある。
何が不自然なのかというと、他のマンホールはさっきの爆発の影響だろうか、蓋が吹っ飛んでいるのに対し、1つだけ飛んでいないものがあるということだ。
しかも何故か、外灯の前にある。
「村中課長、あれでもしかして研究所に行けるのかもしれません」
「そうだな。悪いが見て来てくれないか?私はこの爺さんを見ている。人間なら私が見ていれば大丈夫だろう」
「分かりました」
敷島とシンディは外灯の前に向かった。
マンホールの上に乗って、その外灯のポールにある蓋を開けると、ボタンが現れた。
「よし」
ボタンを押すと、ガコンと蓋が下がった。
やはり、マンホールと外灯に化けたエレベーターだったのだ。
[同日18:00.KR団本部地下研究所 敷島&シンディ]
爆発がこの研究所から起きたのは明らかだった。
エレベーターが下り切る前から、焦げ臭い臭いが敷島を襲ったからだ。
このエレベーターが到着する部分は、爆発を免れたらしい。
だが更にその先、下に降りるリフト付きの階段は無残にも崩れ落ち、そこから下を覗くと、業火に見舞われていた。
「こ、これ……一体、何があったんだ?」
「てか、姉さんは!?姉さんは無事なの!?」
「あ……。おーい!エミリー!無事かーっ!?」
{「敷島……さん……。こちら……エミリー……です……」}
通信機からエミリーの声がした。
「エミリー、無事か!?」
{「……ロケット・アームを……お願イ……ます。シンディに……シます……」}
「了解!」
シンディも通信を聞いていた。
シンディは崩れた階段の先に身を乗り出して、左手を前に出した。
左手は有線ロケットパンチを繰り出すことができる。
「行くよ、姉さん!」
シンディはロケットアームを階下に送り出した。
そして、ガッチリ姉の肩を掴んだ。
妹の手に掴まれたエミリーも、ブースターで高くジャンプしながら上がって来る。
両手に何かを抱えていた。
シンディはエミリーを引き上げた。
エミリーのコスチュームは所々焦げていたが、概ね無事のように見えた。
「姉さん!無事で良かった!」
「シンディ……敷島・社長……申し訳・ありません・でした……」
「その話は後だ。それより、手に何を持ってるんだ?」
「……ケンショーセピアの・右腕と・ドクター十条伝助の・頭部・です」
「はあ!?」
「ドクター十条伝助は・爆発に・巻き込まれて・亡くなりました」
「何だってー!?……キールは?」
「……分かりません」
「とにかく、ここを出よう」
敷島はエレベーターの起動ボタンを押した。
(ラスボスが呆気ない死か?何かおかしいな……)
マンホール型の床の上に乗りながら、敷島は首を傾げた。
9月21日、展開に矛盾した部分があったので訂正しました。
エミリーの左手が塞がっているのに、両手に物が持てるわけないじゃないか!
春日部駅からは国道16号線ではなく、あえて旧国道を通った敷島達。
見沼区内にある規制線を越えると、一気に人通りも車通りも無くなった。
「ゴーストタウンですな……」
一時期、市内全域が立ち入り制限区域になっていたさいたま市。
岩槻区や見沼区も被害を受けていたが、街の中心街に行くほどに被害は大きくなっていった。
ただ、それでも、例えば戦争や大地震などの後のような瓦礫の山とかいうわけではない。
ケンショーレンジャー達は率先して町を破壊したというよりは、警察からの攻撃に抵抗して、その巻き添えになった……というのが正しいようだ。
「早いとこ、ケンショーレンジャーや十条伝助を確保しなければならん。このシンディならできるのかね?」
「ご安心ください。その為のマルチタイプです」(←碇ゲンドウ風)
「蜂の巣ではなく、生きて捕獲してくれよ?」
助手席に座る村中は、念を押すようにリアシートを振り向いた。
「もちろんですよ。ただ、伝助爺さんがサイボーグ化していて、物凄く強化されていた場合は難しいですが」
「まあ、それは仕方が無いが……」
覆面パトカーは、旧国道16号線から今度は産業道路へ右折し、北上する。
どちらも県道ながら多くの車で賑わう幹線道路だというのに、今では走っている車はこのパトカーしかいない。
敵に発見されないよう、赤色灯は引っ込めたままにし、当然サイレンも鳴らしていない。
因みに、制限区域内は停電している。
電柱を倒されたり、電線を切られるなどした場所を除いて、実はほとんど停電になるような要素は無いのだが、ロボットやサイボーグなどが充電できないよう、わざと送電を止めているのだ。
おかげさまで、研究所に近づく度にそこから出て来たと思われるバージョン4.0などが転がっているのだが、そのどれもがバッテリー切れによるものだった。
因みに敷島達は見つけ次第、そのロボット達のバッテリーを完全に破壊しておいた。
「こいつらも使い方次第で、味方にはなれますわよ?」
と、シンディは村中に言ったのだが、村中は肩を竦めて、
「既にこいつらはテロ・ロボットとして世間に浸透してるんだ。とてもそんなものは使えないよ。キミ達姉妹も本来はそうだが、美人さんだったのが幸いしたな」
と、答えた。
「世界的なマッドサイエンティストではあるが、美人に設計してくれたことを感謝した方が良い」
「ええ、もちろんです」
大宮サッカー場の横を通る。
「課長、まもなく顕正会の本部会館ですが……?」
運転席でハンドルを握る、村中の部下が答えた。
彼もまたスーツ姿の私服刑事である。
「確か、この先にPB(交番)があったな。その前に車を止めてくれ。あとはそこから徒歩で向かう」
「了解しました」
パトカーが顕正会本部の前を通る一方通行の路地の前を通り過ぎた。
その先には、国際興業バスの『大宮公園入口』バス停と東武バスの『大宮公園東口』バス停がある。
そこの前に差し掛かった時、それは起きた。
それは大きな爆発音。
「な、何だ!?」
車は急停車。
その大きな爆発音により、明らかに地震のような振動が起きた。
「何だ、ガス爆発か!?」
車を降りる敷島達。
村中は拳銃を出して身構え、シンディは右手をマシンガンに換えた。
しかし、どこで爆発が起きたのかは分からなかった。
「とにかく、行ってみよう」
「はい」
本当は裏手に回って、そこから本部に乗り込む手筈だったが、急きょ正面から回ることにした。
件の路地を通って、ケンショー本部に辿り着く。
「爆発音はこの辺りからしたわ」
と、シンディ。
「なるほど。僅かに焦げた匂いがするな。ガス爆発か何かか?ガスの臭いはしないが……」
半開きになった正門から中に入る。
火事があった跡はあり、植木などが所々黒焦げになっている。
だが、今の爆発によるものではないことは明らかだ。
ガラスも所々割れている。
「地下研究所の入口は向こうだ」
「建物の中から行くんじゃないんですね?」
「そりゃそうだよ」
本部会館の裏手に回ると、
「あわわわわわ……」
黄色いスーツを来た老人が座り込んでいた。
「お前はケンショーレンジャー3号、ケンショーイエロー!」
村中は拳銃を突き付けた。
「おとなしくしないと、人工知能を蜂の巣にするよ?……って、あれ?」
シンディもマシンガンを突き出しながら言ったが、直後に行ったスキャンにより、
「課長、社長、この爺さん、人間の反応しかしないけど……」
「何だって!?」
「おい、黄色い爺さん、どういうことだ?」
村中が尋問する。
「わ、ワシゃ、科学者のジジィに騙されただけぢゃ!こ、殺さんでくれ!!」
「科学者!?それは十条伝助のことか!?」
「そうじゃそうじゃ!あのジジィに、ワシらケンショーレンジャーは……ガクッ!」
「お、おい!」
「……気絶しているだけだわ」
「本当にただの人間なんだな?」
「ええ。サイボーグなら、人間ともロボットとも判別が付かない変な反応になるんだけど、この爺さんはバリバリの人間の反応よ」
シンディは答えた。
「では一応、病院に運ぶとしよう。……あー、こちら村中」
村中課長は通信機を取り出した。
周りを見渡すと、芝生のど真ん中に不自然なマンホールがある。
何が不自然なのかというと、他のマンホールはさっきの爆発の影響だろうか、蓋が吹っ飛んでいるのに対し、1つだけ飛んでいないものがあるということだ。
しかも何故か、外灯の前にある。
「村中課長、あれでもしかして研究所に行けるのかもしれません」
「そうだな。悪いが見て来てくれないか?私はこの爺さんを見ている。人間なら私が見ていれば大丈夫だろう」
「分かりました」
敷島とシンディは外灯の前に向かった。
マンホールの上に乗って、その外灯のポールにある蓋を開けると、ボタンが現れた。
「よし」
ボタンを押すと、ガコンと蓋が下がった。
やはり、マンホールと外灯に化けたエレベーターだったのだ。
[同日18:00.KR団本部地下研究所 敷島&シンディ]
爆発がこの研究所から起きたのは明らかだった。
エレベーターが下り切る前から、焦げ臭い臭いが敷島を襲ったからだ。
このエレベーターが到着する部分は、爆発を免れたらしい。
だが更にその先、下に降りるリフト付きの階段は無残にも崩れ落ち、そこから下を覗くと、業火に見舞われていた。
「こ、これ……一体、何があったんだ?」
「てか、姉さんは!?姉さんは無事なの!?」
「あ……。おーい!エミリー!無事かーっ!?」
{「敷島……さん……。こちら……エミリー……です……」}
通信機からエミリーの声がした。
「エミリー、無事か!?」
{「……ロケット・アームを……お願イ……ます。シンディに……シます……」}
「了解!」
シンディも通信を聞いていた。
シンディは崩れた階段の先に身を乗り出して、左手を前に出した。
左手は有線ロケットパンチを繰り出すことができる。
「行くよ、姉さん!」
シンディはロケットアームを階下に送り出した。
そして、ガッチリ姉の肩を掴んだ。
妹の手に掴まれたエミリーも、ブースターで高くジャンプしながら上がって来る。
両手に何かを抱えていた。
シンディはエミリーを引き上げた。
エミリーのコスチュームは所々焦げていたが、概ね無事のように見えた。
「姉さん!無事で良かった!」
「シンディ……敷島・社長……申し訳・ありません・でした……」
「その話は後だ。それより、手に何を持ってるんだ?」
「……ケンショーセピアの・右腕と・ドクター十条伝助の・頭部・です」
「はあ!?」
「ドクター十条伝助は・爆発に・巻き込まれて・亡くなりました」
「何だってー!?……キールは?」
「……分かりません」
「とにかく、ここを出よう」
敷島はエレベーターの起動ボタンを押した。
(ラスボスが呆気ない死か?何かおかしいな……)
マンホール型の床の上に乗りながら、敷島は首を傾げた。
9月21日、展開に矛盾した部分があったので訂正しました。
エミリーの左手が塞がっているのに、両手に物が持てるわけないじゃないか!