報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「KR団を追い詰めろ」

2015-09-05 21:47:13 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月31日19:00.宮城県仙台市青葉区台原森林公園・野外音楽堂 敷島孝夫、井辺翔太、3号機のシンディ、MEGAbyte]

〔「……さあ光線銃を♪撃ちまくれ〜♪」〕

 最後は初音ミクの持ち歌“千本桜”をカバーした新人ボカロ達。
 大人気の千本桜は今や、ミクだけではなく、様々なボカロが歌っている。
 鏡音リン・レンの和楽アレンジも、何気に人気だという(動画サイトで試聴できる。マジで!)。

〔「ありがとうございまーす!」「ありがとうございまーす!」「MEGAbyte、今度はギガバイトになれるよう、頑張りまーす!よろしくお願いしまーす!」〕

 ライブ自体は成功に終わった。
 新人ユニットのライブなので、観客数などはトップアイドルのミクのソロライブには到底及ばない。
 だが、少なからず固定客も付きつつあり、拍手などももらえるようになっているので、まずまずだと敷島は思った。
(ボカロ握手会に、あいつらを紛れ込ませてもいいな……)
 と、敷島が考えるほど。
(でも、その前に……)
「皆さん、お疲れさまでした。とても素晴らしいライブでした」
 ステージ裏に戻って来たMEGAbyteを拍手で出迎えるスタッフ達。
 専属プロデューサーの井辺が労いの言葉を掛ける。
「特に、Lilyさんのセンターは最高だったと思います」
「あ、ありがとう……ございます」
「いかがですか?劇場のライブもいいですが、こうして野外ステージでライブをする機会は?」
「ま、まあ……たまになら……いいかも……です」
「Lilyちゃん!」
 ゆかりがガシッと抱きつく。
「わたしはとても良かったよ!ね!?未夢さんも!」
「はい。ボカロに転用されて良かったと思います」
「社長が次のステップを考えて下さっているようですので、期待しててください」
「はい!」
 元気よく返事をする3人。
 だが、
「でも社長、難しい顔してるよ?」
 と、Lily。
「申し訳ありませんが、社長は『もう1つのお仕事』の方も多忙のようです。でもこのライブの成功があってこそ、もう1つの仕事の成功もあったわけですよ」
(どこが……!)
 シンディもまた険しい顔をしていた。
 キールを仕留め損ねて、スナイパーとしてのプライドが傷つけられたことが大きい。
 敷島はそれでも100メートル先のキールの体に当てることができて、しかもKR団に関する重要なアイテムを手に入れることができたから、けして失敗ではないとフォローしてくれたが……。
 その敷島は更に会場の裏で、連絡していた。
 ケータイが通じないので、エミリーを介して通信機で連絡している。
「……確かに先日、うちに宗教の勧誘が来て、色々と資料を置いていったが……。平賀先生、そんなものに興味があったのか?」
 どうやら相手はアリスらしい。
{「そうなのよ。KR団に関わる内容が書いてあるかもしれないから見せてくれって言われたんだけど、家にあるしね」}
「まだ処分してなかったのかよ。ケンショー……何とかって新聞とかか。中央区はまだ避難指示が解除されていないのか?」}
{「まだね」}
「今日の終電で帰ろうかと思ってたけど、これじゃ今日中の新幹線の運転再開はムリっぽいな」
{「大宮区は占領されたみたいだけど、駅とかはそんなに損傷していないから、ケンショーレンジャーとやらを退治したら、もう復旧すると思うけどね」}
「いっそのことお前、バージョン400でも作って、ケンショーレンジャーに戦わせてみないか?」
{「あんな制御の難しいヤツ、作るだけ無駄よ。プロフェッサー平賀とエミリーが戦っているから、もうそろそろ終わると思うよ」}
「そうなのか?」

[同日20:00.埼玉県さいたま市大宮区・JR大宮駅東口 平賀太一&1号機のエミリー]

 避難指示が出ている為、いつもは喧騒な駅周辺に人の気配は無かった。
 そこを歩くのは平賀とエミリー。
 町はそんなに破壊されていない為か、停電はしておらず、所々壊れされた街灯以外の街灯は点灯しているので、真っ暗ではなかった。
「おいおい、こりゃ一体どうなってるんだ?」
 さいたま市に来てから、エミリーは1発も銃弾を撃っていない。
 ケンショーレンジャーと遭遇していないわけではない。
 現にこうして今も、シャッターの下ろされた高島屋のエントランス前にそれはいた。
「こいつはケンショー・ホワイトだぜ?……破壊されてる」
 高島屋の特徴的なペーパーバッグを山ほど抱えていたのだろうが、誰かに攻撃されたらしく、無残にそれは散乱していた。
 バッグの中にはブランド物のバッグや服、化粧品などが入っている。
 高島屋だから、結構高かっただろう。
 まるでエミリーから肉弾戦を受けたかのように両手足は無残な方向に折れ曲がり、首と胴体は導線数本で繋がっているだけという有り様で、そこから赤黒いオイル(もしくは血)が吹き出し、火花が飛び散っていた。
「人間を機械化したサイボーグ……改造人間か。伝助博士が一からロボットを作るではなく、『永遠の命』を得る為に人間を機械化するという研究をしていたという噂は本当だったみたいだな……」
「人間を・改造……?そんな・ことが・できるのですか?」
「できないさ。少なくとも、伝助博士以外はな。あのウィリーでさえ拒否したくらいだ」
{「あー、平賀先生、平賀先生、聞こえますか?」}
 そこへ村中課長から無線通信が入った。
「はい、こちら平賀です。どうぞ」
{「こちらもケンショー・ピンクと思しき、サイボーグ婆さんの残骸を見つけたんですが、これは博士のロボットがやりましたか?」}
 村中課長は大宮駅西口を捜索していた。
{「そごうの裏手に倒れていたんです」}
「いえ。まだ自分達は西口の方は捜索していませんので、違います」
{「そうですか。どうやら、我々の他にもサイボーグを倒して回っているヤツがいるようです。先生もお気を付けください」}
「分かりました」
{「そろそろ本庁から迎えのヘリが来る頃です。待ち合わせ場所……東口のタクシー乗り場まで来てください。そこを臨時のヘリポートに指定しましたので」}
「了解です」
 とはいうものの、すぐ近くにいる平賀達が先に到着することになる。
 その間、少し休むことにした。
 西武バスと国際興業バスが発着するバス停の柵に寄り掛かる平賀。
 周辺の警戒に当たるエミリー。
 だが、そんなエミリーの頭にとんでもない人物からの声が届いた。

 それは……。
コメント (15)
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