[8月31日18:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区台原森林公園・野外音楽堂 3号機のシンディ&敷島孝夫]
〔「時計塔の♪歯車の音♪それは彼女が生きている証♪……」〕
ステージではMEGAbyteがアルエットをバイオリニストとしてゲスト出演させ、“ハードビート・クロックタワー”を歌い出した。
元はKAITOの持ち歌である。
アップテンポの歌で、バイオリンがメイン伴奏として演奏されている。
まだキール・ブルーが執事ロボットとしての用途で稼働していた頃、ディナーショーに出演したKAITOの伴奏としてバイオリンを演奏したところ、とても好評だった。
しかし、テロリズムの用途として変更された今では、もう見る影もない。
(来た!)
シンディのスキャナーにキールの反応があった。
距離は約100メートル。
光線銃をステージに向けている。
やはりアルエットを狙っているようだ。
「!」
ステージ裏にいる敷島は、シンディに動きがあったことで、キールがやってきたことを察知した。
MEGAbyteとアルエットを遠隔監視しているノートPCが長机の上にあるが、
(観客を巻き込む恐れがある。アルエット、もう少し右へ移れ)
敷島はキーボードを叩いた。
アルエットが敷島の操作通り、右へ移る。
(アルエットが狙われてるのか?……未夢、お前はアルエットの前に移れ)
今度はMEGAbyteの方のキーボードを叩く。
マウスの操作で、アルエットの前に未夢を移動させた。
シンディはライフルに換装した右手をキールのいる方向へ向けた。
合図は“ハートビート・クロックタワー”で、「るりらら」とコーラスに入る部分。
本来は鏡音リン・レンのパートだが、ここでは未夢とゆかりが代役する。
シンディの右目は、まるでライフルのスコープのようにズームしてキールの頭に照準を合わせている。
〔「……るりららっららら♪るりららっららら♪」〕
「!!!」
シンディがキールの頭に向かって撃つのと、キールがアルエットに向かって撃つのは同時だった。
未夢はアルエットを抱えて、転がり込む。
「しまった!」
シンディが悔しそうな声を上げた。
{「どうした、シンディ!」}
「ちくしょうっ!ハズした!まさか、同じタイミングで撃って来るなんてっ……!」
{「一切、当たらなかったか!?」}
「いや、多分、肩とかには当たったと思う。追うわ!」
{「お、おい、シンディ!」}
シンディは緊急用の超小型ジェットエンジンを吹かすと、キールがいた森林公園内にそびえる大木の上に向かった。
因みにステージだが、観客達には未夢達の動きもダンスパフォーマンスの一環として見る者がほとんどだったという。
「くそっ!あの野郎……!」
キールは煙のように消えてしまった。
だが、それでも完全にシンディの負けではなかった。
シンディのライフル弾は、一応当たってはいたのだった。
キールがいた所の周辺には、ロイドが使用する部品の残骸が落ちていたし、慌てて逃げ出したのだろう。
キールの持ち物が散乱していた。
その中にはシンディと同じライフルまで落ちていた。
ロイド換装用に改造されたものではなく、普通に人間が使用するタイプのライフルだ。
「!」
その近くに鍵が落ちていたので、シンディはそれを拾い上げた。『KR』と書かれている。KR団関係の鍵か。
[同日19:00.埼玉県さいたま市西区・デイライトコーポレーション・ジャパン埼玉研究所 マリオ&ルイージ]
敷島のアメリカ人妻、アリスが製造したバージョン・シリーズの最新型5.0。
アリスの養祖父が設計したものの、本人の手で製造することは叶わず、この世を去っている。
代わりに養孫のアリスが後を継いで、養祖父の設計図に自分なりのロボット技術のアレンジを加えて完成させたのが、マリオとルイージである。
それまでの4.0とは違い、長身でスマートになり、当然動きも素早い。
1号機の方は赤く塗装され、2号機の方は緑色に塗装された兄弟機であるため、アメリカでも大人気の任天堂のテレビゲーム、“スーパーマリオ・ブラザーズ”のキャラクターから名前を拝借した。
戦闘力はマルチタイプに及ばないものの、それまでの旧型機とは遊べるほどの差が付いた力は持っている。
今はサイボーグ・ケンショーレンジャーの襲撃から避難してきたアリスとその息子のトニー、その他の避難者の護衛役を担っている。
が、今は芋掘りロボットと芋掘りの手伝いをしているだけだった。
何故なら、ここに逃げ込んでから、ケンショーレンジャーはもちろんのこと、バージョン4.0の襲撃すら無かったからである。
一応、西区でもケンショー・ホワイトなどの襲撃があったので、ここも避難命令は出ていたのだが、19時を以って避難勧告に引き下げられた。
「アー、暇ダナ、兄貴。誰モ来ナイッスヨ」
「ドウヤラ、ケンショーレンジャーハ、サイタマ市ノ市街地ニ集中シテイルラシイナ」
「ソレナラ……」
「マダ油断ハデキナイ。警戒ヲ怠ルナ!」
「ア、兄貴……」
「何ダ、ルイージ?」
「芋掘りロボットの手伝イヲシナガラ言ウ台詞ジャナイヨネ?」
「ウ、ウルサイ!」
その時、兄弟機のスキャナーに強大な力を持ったロイドの接近反応があった。
「ウォッ!?コ、コノ気ハ……!?」
「ア、兄貴!スカウターノ数値ガヤバイッス!」
「落チ着ケ!」
上空からヘリコプターが近づいて来る。
「アレハ……!?」
「警視庁のヘリでス」
「救助隊カ?」
ちょうど兄弟機の近くが広場になっていたので、そこにヘリコプターが着陸した。
「マリオ!ルイージ!」
ヘリから降りて来たのはエミリー。
「エミリー様!」
「エミリー様!」
兄弟機はエミリーの姿を認識すると、パッと敬礼した。
「アリスはいるか!?」
更にその後ろから平賀が降りて来る。
「平賀博士!」
「平賀博士!」
平賀に対しては挙手の敬礼ではなく、腰を折る方の敬礼。
「アリスに聞きたいことがある。案内してくれ」
「カ、カシコマリマシタ!」
「コチラデス!」
兄弟機は畏まってVIP1名と1機を案内した。
サツマイモ畑には、その様子をポカンと見つめる芋掘りロボットの姿があった。
〔「時計塔の♪歯車の音♪それは彼女が生きている証♪……」〕
ステージではMEGAbyteがアルエットをバイオリニストとしてゲスト出演させ、“ハードビート・クロックタワー”を歌い出した。
元はKAITOの持ち歌である。
アップテンポの歌で、バイオリンがメイン伴奏として演奏されている。
まだキール・ブルーが執事ロボットとしての用途で稼働していた頃、ディナーショーに出演したKAITOの伴奏としてバイオリンを演奏したところ、とても好評だった。
しかし、テロリズムの用途として変更された今では、もう見る影もない。
(来た!)
シンディのスキャナーにキールの反応があった。
距離は約100メートル。
光線銃をステージに向けている。
やはりアルエットを狙っているようだ。
「!」
ステージ裏にいる敷島は、シンディに動きがあったことで、キールがやってきたことを察知した。
MEGAbyteとアルエットを遠隔監視しているノートPCが長机の上にあるが、
(観客を巻き込む恐れがある。アルエット、もう少し右へ移れ)
敷島はキーボードを叩いた。
アルエットが敷島の操作通り、右へ移る。
(アルエットが狙われてるのか?……未夢、お前はアルエットの前に移れ)
今度はMEGAbyteの方のキーボードを叩く。
マウスの操作で、アルエットの前に未夢を移動させた。
シンディはライフルに換装した右手をキールのいる方向へ向けた。
合図は“ハートビート・クロックタワー”で、「るりらら」とコーラスに入る部分。
本来は鏡音リン・レンのパートだが、ここでは未夢とゆかりが代役する。
シンディの右目は、まるでライフルのスコープのようにズームしてキールの頭に照準を合わせている。
〔「……るりららっららら♪るりららっららら♪」〕
「!!!」
シンディがキールの頭に向かって撃つのと、キールがアルエットに向かって撃つのは同時だった。
未夢はアルエットを抱えて、転がり込む。
「しまった!」
シンディが悔しそうな声を上げた。
{「どうした、シンディ!」}
「ちくしょうっ!ハズした!まさか、同じタイミングで撃って来るなんてっ……!」
{「一切、当たらなかったか!?」}
「いや、多分、肩とかには当たったと思う。追うわ!」
{「お、おい、シンディ!」}
シンディは緊急用の超小型ジェットエンジンを吹かすと、キールがいた森林公園内にそびえる大木の上に向かった。
因みにステージだが、観客達には未夢達の動きもダンスパフォーマンスの一環として見る者がほとんどだったという。
「くそっ!あの野郎……!」
キールは煙のように消えてしまった。
だが、それでも完全にシンディの負けではなかった。
シンディのライフル弾は、一応当たってはいたのだった。
キールがいた所の周辺には、ロイドが使用する部品の残骸が落ちていたし、慌てて逃げ出したのだろう。
キールの持ち物が散乱していた。
その中にはシンディと同じライフルまで落ちていた。
ロイド換装用に改造されたものではなく、普通に人間が使用するタイプのライフルだ。
「!」
その近くに鍵が落ちていたので、シンディはそれを拾い上げた。『KR』と書かれている。KR団関係の鍵か。
[同日19:00.埼玉県さいたま市西区・デイライトコーポレーション・ジャパン埼玉研究所 マリオ&ルイージ]
敷島のアメリカ人妻、アリスが製造したバージョン・シリーズの最新型5.0。
アリスの養祖父が設計したものの、本人の手で製造することは叶わず、この世を去っている。
代わりに養孫のアリスが後を継いで、養祖父の設計図に自分なりのロボット技術のアレンジを加えて完成させたのが、マリオとルイージである。
それまでの4.0とは違い、長身でスマートになり、当然動きも素早い。
1号機の方は赤く塗装され、2号機の方は緑色に塗装された兄弟機であるため、アメリカでも大人気の任天堂のテレビゲーム、“スーパーマリオ・ブラザーズ”のキャラクターから名前を拝借した。
戦闘力はマルチタイプに及ばないものの、それまでの旧型機とは遊べるほどの差が付いた力は持っている。
今はサイボーグ・ケンショーレンジャーの襲撃から避難してきたアリスとその息子のトニー、その他の避難者の護衛役を担っている。
が、今は芋掘りロボットと芋掘りの手伝いをしているだけだった。
何故なら、ここに逃げ込んでから、ケンショーレンジャーはもちろんのこと、バージョン4.0の襲撃すら無かったからである。
一応、西区でもケンショー・ホワイトなどの襲撃があったので、ここも避難命令は出ていたのだが、19時を以って避難勧告に引き下げられた。
「アー、暇ダナ、兄貴。誰モ来ナイッスヨ」
「ドウヤラ、ケンショーレンジャーハ、サイタマ市ノ市街地ニ集中シテイルラシイナ」
「ソレナラ……」
「マダ油断ハデキナイ。警戒ヲ怠ルナ!」
「ア、兄貴……」
「何ダ、ルイージ?」
「芋掘りロボットの手伝イヲシナガラ言ウ台詞ジャナイヨネ?」
「ウ、ウルサイ!」
その時、兄弟機のスキャナーに強大な力を持ったロイドの接近反応があった。
「ウォッ!?コ、コノ気ハ……!?」
「ア、兄貴!スカウターノ数値ガヤバイッス!」
「落チ着ケ!」
上空からヘリコプターが近づいて来る。
「アレハ……!?」
「警視庁のヘリでス」
「救助隊カ?」
ちょうど兄弟機の近くが広場になっていたので、そこにヘリコプターが着陸した。
「マリオ!ルイージ!」
ヘリから降りて来たのはエミリー。
「エミリー様!」
「エミリー様!」
兄弟機はエミリーの姿を認識すると、パッと敬礼した。
「アリスはいるか!?」
更にその後ろから平賀が降りて来る。
「平賀博士!」
「平賀博士!」
平賀に対しては挙手の敬礼ではなく、腰を折る方の敬礼。
「アリスに聞きたいことがある。案内してくれ」
「カ、カシコマリマシタ!」
「コチラデス!」
兄弟機は畏まってVIP1名と1機を案内した。
サツマイモ畑には、その様子をポカンと見つめる芋掘りロボットの姿があった。