報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“ユタと愉快な仲間たち” 「人外達の夏休み」

2014-07-11 21:45:49 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月11日14:00.地獄界の三途の川(冥界鉄道線木橋付近) 蓬莱山4兄弟]

 この世とあの世を結ぶとされる三途の川。
 とても大きな川だが、深い所と浅い所がある。
 蓬莱山家の末妹、蓬莱山魔鬼は靴と靴下を脱いで川の浅い部分に中に入っていた。
 岸には長男のキノがいる。
「そっちそっち!そっち行ったぞ!」
 キノが妹に叫ぶと、魔鬼はギラッと目を光らせて、
「てやっ!」
 川の中に手を突っ込んだ。
「!」
 轟音を立てて人間界に向かって行くオレンジ色単色の通勤電車が木橋を通過していった。
「かにー」
 地獄界にも蟹は生息しているのね……。
「……今、飢えた熊みたいに取ったな」
 キノは中学3年生になる妹の行動ぶりに驚くやら呆れるやら……。
「遅いぞ、アニキ!」
 そこへ土手の上から次兄の鬼郎丸の声がした。
 その後ろからは長姉の美鬼が来た。
「川で冷やしてるスイカ持ってきてって言われただろー!」
「あっ、いっけね!すっかり忘れてたなっしー!」
「梨じゃなくてスイカな」
 美鬼は冷静に大きい弟のボケを突っ込んだ。
 魔鬼が川で冷やしてる大玉のスイカを引き上げようとしている。
「ところで姉ちゃん、どうしてうちって、オレや魔鬼しか夏休み入るのいないのにスイカ食うんだ?」
 鬼郎丸が姉に聞いた。
 魔鬼は苦笑して答える。
「何でって言われてもなぁ……。昔から家のしきたりで、あんた達の夏休み前には家庭菜園のスイカを食うことになっとるんよー」
「アニキや姉ちゃんが学生だった頃から?」
「そうなぁ……」
 その時、スイカを川から拾い上げた魔鬼が岩場の上にスイカを落としてしまった。
「あ、スイカが……」
「重い〜!」
「魔鬼、ちょい貸してみ」
 美鬼は、再び魔鬼が拾い上げたスイカを受け取った。
「あー、傷イッてないかねぇ……。お?ええ感じに冷えとるがな」
「んじゃ、早速斬って食おうぜ」
 キノは左腰に差している妖刀を抜いた。
「スイカ割りやるんちゃうよ?それは人間界の海に行ってやるんよ?」
「……はい。すいません」
「冷静に突っ込まれたな?」
 鬼郎丸が哀れむように兄に言う。
「くそっ……!」
 美鬼は持ってきたまな板と包丁を取り出した。
「あ、そうそう。その前に、学校と閻魔庁から届いた通知表と成績表渡しとくよー」
「げっ!」
 蒼い顔をする男兄弟。
 赤鬼が蒼くなると、紫になるものだ。
 先に魔鬼が受け取り、茶封筒の中を開ける。
「おい、キロ(鬼郎丸に対するキノからの呼称)。お前、成績どうだった?」
「アニキこそ。復帰試験の結果は?成績悪かったら、姉ちゃんにドヤされる……」
 1番先に通知表を開いたのは魔鬼だった。
「5、いっぱーい!」
「マジかよ!?」
「すっげぇ!さすが魔鬼!」
「ウチ、絶対人間界の高校行くもんねー!」
「行くなら江蓮のトコにしとけ。獲物には困んねーと思うぞ?」
「えー?ウチ、女子校ヤダ〜。共学がいい!」
「ワガママ言うんじゃねぇ!決定権は誰にあると思ってんだっ!?」
「お父さんとお母さん。あと、お姉ちゃんが少々」
「大変ごもっともで。……キロ、お前は?」
「くっそ〜。理数系があんま良く無かった……。まあ、オレは人間界に興味無ェし。高校出たら、アニキと同じ獄卒になれればいいかなって思う」
「おう、なったれなったれ」
「で、アニキは?」
「くっ……!」
 キノは封筒の中身を恐る恐る開けてみた。
 すると、中から合格の文字が!
「やったぜ!合格っ!」
「おめでとうございます」
 妹の賛辞に、
「あざざざざざーっす!!」
 と、【お察しください】風の返事をする。
 スイカを4等分に切っていた美鬼は、狂喜する大きい弟に、
「ちゃんと書類に全部目ェ通したんか?大ドンデンが待ってるかもしれんでー?気ィつけや」
「はっはっはっ。姉ちゃん、何言って……え?」
 書類の文章にはまだ続きがあった。
合格!

 と、言いたいところですが、合格点数に達していないので不合格にしたい今日この頃でありますが、A級霊力の“獲物”を手にしているという観点から、特別に追試験を行いますので、つきましては7月◯×日までに下記の所へ……』
「…………」
「…………」
「…………」
 目を点にする美鬼以外の兄弟達。
「んじゃ、お待ちかねのスイカタイム行くでー」
「はーい!」
 美鬼の言葉に我に返り、スイカを取りに行く次兄と末妹。
「ええな?仲良う分けるんやで」
「……気をつけまーす……」
 キノだけは茫然と立ち尽くしていたという。
 今度は反対方向に走って行く焦げ茶色の電車が、軽快なレールのジョイント音を立てて走り去って行った。
「キノ兄ぃ、スイカ食べよ」
 魔鬼が駆け寄って、大きな兄の分のスイカを渡した。
「……人生ってとんでもねぇ……」
 キノのつぶやきに無言で頷く魔鬼だった。
「一応、塩持ってきたけど、掛ける?」
 美樹は下の兄弟達に聞いた。
「んじゃ、掛けてみるか」
「オレも……」
 男兄弟達はスイカに塩を振った。
「ところで魔鬼、その蟹どうしたの?」
 魔鬼は既に沢蟹を5匹捕まえて、紐でくくっていた。
 明らかにお持ち帰り用である。
「そこの川で捕まえたん」
「食べるの?」
「食べるん」
「やめといた方がええよ。この辺の魚は全部毒持ちやき、蟹も分からへんよ?」
 すると、魔鬼は素直に蟹を放した。
「今度人間界に遊びに行った時、捕まえるん」
「あー、その方がええ。人間界の沢蟹なら……」
「しょっぱ!」
 キノはどうやら塩を掛け過ぎたようだ。
「人生みたいに?」
 透かさず魔鬼が反応した。
「……父ちゃんと母ちゃんに何て言おう……」
「閻魔庁の中のことだけはウチ、知らんきね」
 美鬼は冷たく言い放つと、上品にスイカを齧った。
 すると魔鬼がいたずらっぽく囁いた。
「この夏こそ、キノ兄ぃが彼女さんとヤれたら、許してもらえるんじゃない?」
「中3のオマエが言うセリフじゃねぇな!……でも頑張る」
「アニキぃ、アニキの獄卒採用試験のテキスト、後で貸してくれよ?」
「あ?高校出りゃ、キャリア採用なんて簡単だろー?」
「成績上位でないと、『コネ入庁』って言われるからさー。アニキみたいに」
「うっせ!」
「食ったら早よ帰るよ」

[同日同時刻 埼玉県さいたま市内某所 江蓮の通う高校 栗原江蓮]

「はい、この前のテスト返却しまーす」
 江蓮が受けた夏休み前の定期テスト。
 今日この時間で、全部の教科が返って来た。
「赤点の人は漏れなく、夏休み特別補習受けてもらいますからねー」
 数学Ⅱの教科担任よりテストが返却される。
「よっし!赤点全部パス!」
 江蓮はガッツポーズ。
(こんなんだったら、川井ひとみの時、ツッパッてないで、真面目に勉強しときゃ良かったな……)
「江蓮、意外と頭いいね!」
「神降臨」
「ゲリラ豪雨の予報出てないけどなー?」
 友達が数人騒ぐ。
 と、その時、江蓮のスマホが震えた。
 メール着信である。
 キノからで、自分の試験結果の不甲斐なさを嘆く内容だった。
「彼氏から?」
「……ごくそ……じゃない。公務員試験、追試だって」
「公務員試験に追試なんてあんの?」
 江蓮の友達には、謎のイケメン彼氏として通っているキノだった。
コメント (1)
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本日の雑感 0710

2014-07-11 00:17:13 | 日記
 ちょっと日付が変わってしまったが、10日付けにさせて頂きたい。
 今のところ、私が他のブログに書き込みをしているのは3ヶ所。
 顕正会員の厳虎さんと、法華講員の山門入り口さん、それにセロリさんの所である。
 顕正会員で言えば、1度だけバーズ博士さんとパラパラ茜さんの所へ挨拶代わりに書き込みさせて頂いたが、ご両人とも芳しい御返事は頂けなかったので、それ以降の書き込みはしていない。
 最初、パラパラ茜さんは御自身が好きな事を喋るのをコンセプトにしたブログであると自己紹介されていたし、顕正会員であるため、多少の言い過ぎもあるのだろうと思った。
 だから、顕正会員だからといって、コメント欄を炎上させてはいけないと思っていたのだが、どうやら私の考えが甘かったようで、もはや処置なしだと思っている。
 てかぶっちゃけ、私も自分のことは棚に上げてしまう覚悟で言わせてもらうが、あんな人、お寺に連れて行ったら大変だ。
 私なんかヲタというだけでキモ扱い間違い無しだろうし、ちょっとでも気の合わない女性信徒とすぐケンカするだろう。
 さすがの私も我慢している、御僧侶にだけは絶対反発しないという一線も軽々越えてしまう勢いだ。
 愚鈍な凡夫かつ在家信徒として思う所は多々あるが、それでも立場は弁える必要があると思うのだ。
 だから私は山門入り口さんのブログでも、
「最近の大白法の内容には違和感がある」
 とか、
「布教講演で、(御命題のことばかりでなく)もう少し日常生活に即した(簡単で分かりやすい)話をしてほしい」
 という要望は持っていても、猊下を始めとする御僧侶方を(頭では)敬っているつもりだ。

 平成27年度の誓願と33年度の誓願の大きさは、私も頭では分かっているつもりになっている。
 で、思うのはうちの寺院にも言えることだが、やはり取りこぼし(埋没者、脱落者)が頻発しているという点。
 私の今の紹介者に、
「今の私は殆ど新願者と変わらぬ状態なのに、どうして寺院参詣などを呼び掛けてくれないのか?如何な私でも何度も呼び掛けられたら、『ああ、こりゃ行かなきゃな』という気になるぞ?」
 と聞いたことがある。少なくとも、顕正会ではそうしている。そしたら、
「普段の自分も、仕事が多忙でとても参詣できる状態に無い。申し訳無いが、私に構わず、自発的に参詣してほしい」
 とのことだった。
 いや、そりゃ気持ちも事情も分かるよ。私も会社勤めだから痛いくらいに。
 だけどさぁ……何か、違うだろって感じ。
 所属寺院が変われば、まるで違う宗派に来たような錯覚に陥るものだ。
 前の寺院では良かったことが、今の所ではダメだったり。その逆もまたしかり。
 そういう所とかも教えてもらわないと。
 え?自分で御僧侶とかに聞け?
 いや、だからさ、どこが分からないのかも分からないんだって。
 取りあえず、添書登山の申し込み方とか、着山してからの動きとかは前の寺院での経験で何とかなってるけどさ。
 育成が聞いて呆れるってことさ。
 御書を学ぶどころじゃない。
 いくら同じ信徒でも、見知らぬ人にホイホイ声を掛けられほど、私は高いコミュ能力は持ち合わせていないぞ。

 あー、スッキリした。
 顕正会には御僧侶はいないから、いつでもぶつかって行けるのだが、宗門ではそうもいかないからね。
 そもそも、私の上長が誰かも分からん。
 ロクに紹介してもらえなかったからなぁ……。

 逆を言えば、いつでも離脱可能ってことなんだけどね。
コメント (5)
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