マリアが寝ているとされる部屋は、朝日の差し込む明るい部屋だった。先日の応接室といい、魔道師の割には明るい所を好むようである。そして彼女はそこにいた。応接室にあったソファとよく似た所に仰向けになっており、その周りを武器を持った人形達が護衛していた。
「まだ寝てるじゃないか。……ってか、生きてる……よな?」
目を閉じているお人形さんみたいだ。だが近づこうとすると、護衛の人形達が一斉にその刃の切っ先をユタに向けた。
離れると、また武器の位置を元に戻す。で、また近づくと切っ先を一斉に向ける。しかし、部屋から退出は求められなかった。ミクも後ろで見ているだけである。とはいえ、さすがに魔道師とはいえ、若い女性が寝ているというのに同室するわけにはいかないだろう。挨拶しようと思っていたので、起きるまで別の部屋で待っていようかと思った。
(昨日の応接室辺りでいいかな?)
そう思った時、マリアが声を上げた。
「うう……アンジェラ……どうして……」
「!」
振り向くとマリアは苦悶の顔を浮かべ、両目から涙を流していた。
「あ、あの!」
心配になって駆け寄ろうとしたが、また人形達が武器をユタに向けた。
「はっ……!」
そこへようやくマリアが目を覚ました。
「あ、あなた……!」
「大丈夫ですか、マリアさん?」
「私は何か言ってたか?」
「アンジェラさんって、お友達か何かですか?」
「……朝になったんだ。さっさと帰れ」
「昨日の死生樹のことは教えてもらえませんか?」
「教えないと何回言ったら分かるんだ」
「……すいません。お世話になりました」
ユタは素直に頭を下げて、屋敷をあとにした。
……はずだったが、何故かその姿は屋敷の外周にいた。
「あの資料室、絶対怪しい。あの中に、絶対死生樹のことについて書かれた本があるはずだ」
魔道書はユタが見たって分からないはず。なのでユタが入ったところで、痛くも痒くも無いはずである。それなのに、どうして人形はユタを追い出して鍵を掛けたのか。人形を操っているのは、マリア自身である。
ユタは自分が寝泊りした部屋に向かった。もう後片付けされたのか、そこに人形達の姿は無かった。
「……よし」
窓は施錠されていなかった。昨夜窓を開けた時、鍵を掛けた記憶が無かった。ユタはその窓から侵入した。
そっと足音も立てず、例の資料室に向かう。昨夜はあれだけいた人形達だったが、嘘みたいに今はいない。
魔道師の屋敷だから、屋敷の構造が変わっていたり……なんてことを考えていたが、意外とそうでもないようだ。
そして、ユタは例の資料室の前にいた。やはり鍵が掛かっていたが、こんなこともあろうかと、実は昨日、威吹からピッキング用の金具をもらっていた。威吹は剣客だが、妖狐の中には盗賊として活躍する者もいて、同族同士、ギブ・アンド・テイクでやることもあるという。見た目はただの針金だが、それを鍵穴に差し込むと……。
(開いた!)
カチッという音がして、鍵が開いた。そして、そっと中に入る。昨夜と変わらぬ資料室の風景。ユタは急いで、死生樹に関する資料を探した。
(おおっ、あった!)
こりゃまた意外にも簡単に見つかった。よしよし。これを持って……。
その時、部屋の外で大型バイクのエンジンのような音が聞こえた。
「わあっ!?」
びっくりして振り向くと、そこには大型のチェーンソーを持ったミク人形が目を光らせてユタを見ていた。
「私の目が節穴だったのか?まさか、コソ泥だったとは……」
「ま、マリアさん……」
マリアは侮蔑と自嘲をごちゃ混ぜにした顔で、ユタを見据えた。彼女の周りにはミク人形の他に、大きな刃物を持ったフランス人形が3体ほど宙を舞っていた。
「お前……よほど死にたいようだな?」
「それくらいの覚悟はあります!だから、死生樹の行き方を教えてください!」
「ダメだ」
マリアは周りにいた人形達に目配せすると、ユタを取り押さえた。テディベアくらいの大きさしか無いのに、物凄い力だ。
「お前は魔術の実験台にする。連れて行け」
「ちょ……冗談でしょ!?」
「素直に帰れば良かったものを……。愚かな人間め」
ユタは人形達に引きずられ、屋敷の奥へ連れて行かれた。
「まだ寝てるじゃないか。……ってか、生きてる……よな?」
目を閉じているお人形さんみたいだ。だが近づこうとすると、護衛の人形達が一斉にその刃の切っ先をユタに向けた。
離れると、また武器の位置を元に戻す。で、また近づくと切っ先を一斉に向ける。しかし、部屋から退出は求められなかった。ミクも後ろで見ているだけである。とはいえ、さすがに魔道師とはいえ、若い女性が寝ているというのに同室するわけにはいかないだろう。挨拶しようと思っていたので、起きるまで別の部屋で待っていようかと思った。
(昨日の応接室辺りでいいかな?)
そう思った時、マリアが声を上げた。
「うう……アンジェラ……どうして……」
「!」
振り向くとマリアは苦悶の顔を浮かべ、両目から涙を流していた。
「あ、あの!」
心配になって駆け寄ろうとしたが、また人形達が武器をユタに向けた。
「はっ……!」
そこへようやくマリアが目を覚ました。
「あ、あなた……!」
「大丈夫ですか、マリアさん?」
「私は何か言ってたか?」
「アンジェラさんって、お友達か何かですか?」
「……朝になったんだ。さっさと帰れ」
「昨日の死生樹のことは教えてもらえませんか?」
「教えないと何回言ったら分かるんだ」
「……すいません。お世話になりました」
ユタは素直に頭を下げて、屋敷をあとにした。
……はずだったが、何故かその姿は屋敷の外周にいた。
「あの資料室、絶対怪しい。あの中に、絶対死生樹のことについて書かれた本があるはずだ」
魔道書はユタが見たって分からないはず。なのでユタが入ったところで、痛くも痒くも無いはずである。それなのに、どうして人形はユタを追い出して鍵を掛けたのか。人形を操っているのは、マリア自身である。
ユタは自分が寝泊りした部屋に向かった。もう後片付けされたのか、そこに人形達の姿は無かった。
「……よし」
窓は施錠されていなかった。昨夜窓を開けた時、鍵を掛けた記憶が無かった。ユタはその窓から侵入した。
そっと足音も立てず、例の資料室に向かう。昨夜はあれだけいた人形達だったが、嘘みたいに今はいない。
魔道師の屋敷だから、屋敷の構造が変わっていたり……なんてことを考えていたが、意外とそうでもないようだ。
そして、ユタは例の資料室の前にいた。やはり鍵が掛かっていたが、こんなこともあろうかと、実は昨日、威吹からピッキング用の金具をもらっていた。威吹は剣客だが、妖狐の中には盗賊として活躍する者もいて、同族同士、ギブ・アンド・テイクでやることもあるという。見た目はただの針金だが、それを鍵穴に差し込むと……。
(開いた!)
カチッという音がして、鍵が開いた。そして、そっと中に入る。昨夜と変わらぬ資料室の風景。ユタは急いで、死生樹に関する資料を探した。
(おおっ、あった!)
こりゃまた意外にも簡単に見つかった。よしよし。これを持って……。
その時、部屋の外で大型バイクのエンジンのような音が聞こえた。
「わあっ!?」
びっくりして振り向くと、そこには大型のチェーンソーを持ったミク人形が目を光らせてユタを見ていた。
「私の目が節穴だったのか?まさか、コソ泥だったとは……」
「ま、マリアさん……」
マリアは侮蔑と自嘲をごちゃ混ぜにした顔で、ユタを見据えた。彼女の周りにはミク人形の他に、大きな刃物を持ったフランス人形が3体ほど宙を舞っていた。
「お前……よほど死にたいようだな?」
「それくらいの覚悟はあります!だから、死生樹の行き方を教えてください!」
「ダメだ」
マリアは周りにいた人形達に目配せすると、ユタを取り押さえた。テディベアくらいの大きさしか無いのに、物凄い力だ。
「お前は魔術の実験台にする。連れて行け」
「ちょ……冗談でしょ!?」
「素直に帰れば良かったものを……。愚かな人間め」
ユタは人形達に引きずられ、屋敷の奥へ連れて行かれた。
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