日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

入試問題ネット投稿事件対策は監督強化で十分

2011-03-01 18:07:00 | 学問・教育・研究

今日の朝日朝刊は第一面トップに京大の入試問題がネットに投稿された事件を取り上げていた。NHKのニュースでもトップに出てくるなど世間は大騒ぎである。私もどのような手段で投稿したのか、また動機などには関心があるが、考えてみれば科挙の時代からあるカンニングの新手が現れただけのこと、さすがIT時だなあと感心すればそれで済む話であろう。

ここでカンニングという言葉を使ったが、広辞苑(第五版)には《[cunning](ずるいの意)学生・生徒が試験の際、監督者の目を盗んでする不正行為》と出ている。では何故そのような不正行為を働くのかと言えば「良い成績を取るため」なのだろう。入試の場合は良い成績を取って合格するための不正行為がカンニングということになる。今のところこの投稿者が入試に合格するために不正を働いたのかどうかは定かではない。しかし「不正行為」の足跡をこれほど堂々と残している以上、それが絶対にばれないと考えるほどこの投稿者が愚かであるとは思えない。そうだとするとこれはカンニングではなくて、ただの「お騒がせ」もしくは「お遊び」になってしまう。

もしただの「お騒がせ」なら、不正行為による合格者が生じるわけでもなく、入試制度の根底がひっくり返ったわけでもなんでもない。「こんな手口が現れたけれど、考えてみたらあんなことでまともな答案が書けるはずもなし、まあほっとこう」で済む話である。現に京都大学でこの問題が起きたからこそ世間が大騒ぎ?になったが、それまでにすでに2月8日には同志社大学で、2月11日には立教大学で、2月12日には早稲田大学で似たようなことがあった筈なのに、これらの大学は黙っていたではないか。ほっておけばよかったのである。

かりに今回の事件が私のいう意味でのカンニングであったにせよ、カンニング防止のためにたとえば携帯電話を入試会場に持ち込ませないとか、周りに電波シールドを張るとかの対策が取り沙汰されているが、私に言わせるとそんなものは骨折り損のくたびれもうけにすぎない。そういうことに無駄金を使うよりは、監督者に試験監督者としての職業的訓練を施せば済む話である。

現役時代は監督、監督責任者、採点、出題、統括など、いろんな形で入試業務に携わったが、一番多かったのが監督である。監督と監督責任者では少し役割は違うが、試験問題を配り、訂正があればそれを伝え、受験者の身元照合をし、質問を取り次ぎ、トイレ行きに付き添い、答案を集めては答案数を確認するのが主な仕事であった。問題用紙に答案用紙をどのように受験者に配り、またどのような手順で回収するかはその場で責任者が指示を与えた。受験者に何か質問があれば挙手させることになっていたので、その動きには気を配ってはいたが、どのように受験者を監視するかなどは指示されたことも指示したこともなかった。監督者が心がけたことは、とにかく受験生が思う存分実力を発揮できるように、ひたすらその環境を整えることであった。一教室を担当する監督者が複数の場合、初対面同士であることが多く、たとえば監督中に何か読み始めたりウオークマンを聴く監督者がいても面と向かって注意することもなく、ただあれは問題では、と後で意見上申するぐらいが関の山だった。お断りして置くが、これはあくまでも私が現役であった時代のことである。

今回の出来事でも、どのように試験時間内に問題がネットに投稿されたのか興味があるが、今や「スパイ機器」が容易に入手出来るご時世である。試験問題の映像を外部に送信するのはちょっと頭を働かせば誰にでも出来るように思う。ましてや入試に合格するのが目的でないのなら、堂々とやってのけることも可能である。しかし監督者が絶えず受験者の挙動に目を光らせておれば、ネットに掲載された答案を見ながらその目を盗んて答案用紙に書き込むことは至難の業であろう。滅多にないことではあったにせよ、監督者が本や論文を読んでいたり、外の景色をうっとりと眺めていたり、椅子に座って居眠りなどはもってのほかである。絶えず受験者の挙動に目を光らせるためには、試験監督者としての職業的訓練が必須になる。

挙動不審者を見逃さないためにどうすればよいのか、場合によれば警察か警備会社に頼んでその訓練をして貰うのも手であろう。受験会場内で監督者がどのように机の間を縫って組織的に巡回するのかなど、事前に半日ぐらいは費やして実地訓練をするのである。挙動不審者を見つけたときの対策ももちろん定めておく。監督者にプロとしての仕事をして貰うだけで、試験中の不正行為はほとんど防ぐことが出来ると思う。


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