日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

「一澤信三郎帆布」に期待する商人道

2006-06-11 19:16:56 | Weblog

現在わが家には「一澤帆布」の袋物が正確にいうと七点ある。一番古いトートバッグ(写真上)は30年以前に買い求めたものであるが、何回も洗濯の水を潜り、持ち手を不細工ながら自分で補修を繰り返しながら今も現役で活躍している。2番目に古いのも同じようなもので、共に布地が柔らかくなり帆布の感触はもはやないが、そこまで使い込むと愛着が湧いてポイするきにならず、スーパーでの買い物袋として重宝しているのである。



黒色のトートバッグは海外旅行の必需品であった。



目的地に到着すれば、折りたたみ傘などちょっとした携帯品を入れて気軽の持ち運ぶ。もちろん買い物袋にもなる。「一澤帆布」のラベルに気付いた人から「京都の方ですか」と声をかけられたことも再々ある。いつかロンドンのHolland Parkで日本庭園の開園式にチャールズ皇太子と浩宮がお見えになった時のことである。偶然にもそこに私が通りかかった折にも、ロンドン在住の子供連れの女性に声をかけられて、これ幸いにと両皇太子と私をスナップショットしていただくようお願い出来たのもトートバッグのおかげであった。

トートバッグのみならず、ボストンバッグにショルダーバッグなど何点かが必ず私たちの身近にあった。一口にいえば使いやすく信頼感があるのだ。ショルダーなどでは沢山あるポケットや仕切りの、どこに何があるかは手先が覚えてくれていて、覗き込まなくても片手操作で必要なものが何時でも取り出せた。

このたび「一澤信三郎帆布」店が新たに発足し、少し遅く訪ねるとその日に用意していた全商品がなくなってしまうという盛況はご同慶の至りである。そういう次第で、ここに挙げたものと類似の商品にはまだお目にかかっていないが、「一澤帆布」時代の製品とは一線を画すデザインになっているのではなかろうか。素人考えであるが、現状で「一澤信三郎帆布」が「一澤帆布」の製品をそのまま製造することは、また諍いの種になるように思う。デザインの版権のようなものが存在するのでは、と想像するからである。

商売は顧客があって成り立つものである。顧客のなかには、古くなり傷んだこれまでの製品を新しく買い換えたいと思う人もかなりいることであろう。その要望に応えて従来の製品も製造販売できるよう今の事態を打開することが、信三郎、信太郎両氏を始めとする関係者の責務でもある。それが顧客の長年の愛顧、信頼と期待に応える『一澤家』の商人道というものではなかろうか。