日々是好日

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高松塚損傷 処分者に『大棟梁』不在の怪

2006-06-20 13:25:00 | 社会・政治
高松塚損傷 元職員3人「処分相当」 文科相も給与返上 (朝日新聞) - goo ニュース

処分相当とされた三名の方の経歴を拝見したところ、官職を事務系と技術系に分けるとしたら、皆さんが事務系のように私には窺われた。残るお一方も文部科学省の現職から判断すると事務系のようである。

高松塚損傷という取り返しのつかない大きな失態を犯したとして処分される責任者に、技術系が不在であることこそ、文化庁が組織としてかかえる最大の欠陥であると私は考える。

以前に私は《現場で作業する人から監督、管理する人までこの人たちの職業意識・職業倫理はいったいどうなっているのだろう》と疑問を投げかけたが、どうもこの管理する人が事務系であったようだ。

高松塚のような遺跡の保存・管理には、広範なしかも高度な自然科学的知識と保存技術に精通した責任者が不可欠である。その責任者が全責任を負うかたちで全てに采配を振ることが、作業を成功させる最低の条件である。当然技術系の人物ということになる。

今回処分された四名の誰が「広範なしかも高度な自然科学的知識と保存技術に精通」しているのだろう。誰もその資格がないと思う。これは『お役所』のいわれなき『事務系偏重』のなせる技で、責任あるポストには技術系がつけないという変な慣行が罷り通っているからであろう。もともと能力と実務に欠ける人物を制度上責任のあるポストに置くというのは、本来の任務を阻害することはあっても一利だにありえない。

もともと責任を取りえない者が形式的にその職にあったに過ぎないから、その状況認識を反映して今回の処分のなんと軽いこと、文化遺産を毀損した償いがまさに言い訳程度の減俸とは恐れ入る。本当に責任があると自覚すれば刑事罰も甘んじて受けるべきだが、自らそれを申し出る発想自体皆無であろう。

「高度な自然科学的知識と保存技術」は生半可な努力で身につくものではない。天職と心得てそれに人生を賭ける決意があって始めてなしえることで、仕事への一生続く献身を必要とする。そのなかから仕事全容を見渡せる『大棟梁』が生まれるのである。これは従来の『お役所の回転人事システム』とはおよそ相容れない形での人材養成を必要とする。

この『大棟梁』を育て上げるための組織改編が今文化庁に一番求められることであると私は考える。