Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

人の善意

2006-05-12 17:13:33 | リベリア
3日間のシカゴ滞在を終え、ムスはリベリアへ戻っていった。

最終日の朝、義手の型をとるために医者を訪れたあと、成り行きでレポーターと僕が、出発まで数時間ムスの世話をすることになった。大統領のグループはテレビのトークショーに出演するためにみなスタジオにいってしまうので、僕らがムス役をおおせつかったというわけだ。ムスは僕になついて(?)いるし、うってつけだとでも思ったのだろうか。。。リベリアから大統領が連れてきた子供を、地元のジャーナリストの手に預けるなんてなんだか変な話だが、ムスとより時間を過ごせることになった僕としては願ってもないところだ。

遊園地や玩具屋でムスはえらくはしゃいでいた。観覧車や回転木馬。。。さすがにこういうものリベリアにはないもんなあ。それからトリビューンのオフィスにも連れていったが、そこでもムスは人気者に。みな僕の写真で彼女のことは知っているので、エディターやレイアウトのデザイナーなど、「実物のムス」を見ていたく感動していたようだ。

振り返れば、ムスの訪米から義手の話。。。思いもかけない展開に、僕にとっては胸の高鳴るような数日間だった。

義手の件については、シカゴに住むリベリア人の女性が、何件か診療所に電話をかけまくって、経費とサービスを寄付してくれる医者を探し出したそうだ。

世の中、胸くそがわるくなったり、腹の立つことも多いが、それでもまだまだ捨てたものではないなと思う。恐らくはハンディキャップのまま、貧困のなかで一生を過ごすであろうと思われたムスが、なんと大統領につれられて訪米し、さらに義手を得るまでにいたったのだ。これは多くの人々の善意の賜物に他ならない。

義手ができあがる2,3週間後、ムスは再びシカゴにやってくる。義手を初めてつけたとき、彼女はいったいどんな顔をするのだろうか。。。




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15 コメント

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Unknown (ms)
2006-05-13 09:39:39
ムスちゃんの笑顔、いいですねぇ。
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Unknown (tomocapa)
2006-05-13 12:49:48
高橋さんの写真がムスちゃんの未来を拓いたんですね。もちろん、ムスちゃんやまわりのひとたちの努力や善意があったからこそ実現していったことなのだと思いますが、少なくとも写真がきっかけとなったことを強く感じました。

ぼくも、自分が撮った写真で誰かが幸せになったり、未来が拓けてくるようなフォトジャーナリストになりたいです。

高橋さんの写真、ピュリッツァー賞なんか取るよりもずっとすばらしい影響を与えたのだと思います。
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Unknown (kiyo)
2006-05-13 21:57:09
<高橋さんの写真、ピュリッツァー賞なんか<取るよりもずっとすばらしい影響を与えた<のだと思います。



全くそのとおり!!!!(大拍手)



いつも、いや、たまに己の仕事の意味について深く考えているkuniさん。今回のできごと、名利に尽きるのではないでしょうか。

私はカメラマンではないけれど、自分が誰かの役に立ったリ、誰かに必要とされたりするときが、最高に嬉しいです。たとえ小さなことでも。



幸せなニュースをありがとう。

そして喜んでくれる人が沢山いることが、増してすばらしいよね。
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成長しましたね (じょじょ)
2006-05-13 23:00:45
ムス、大きくなりましたね。

あの腕を失った日の写真のころはまだ幼かったのに。

もう、少女になって。

どんな笑顔のムスの写真を見ても、頭のどこかであの写真が浮かんできます。
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Unknown (kiyo)
2006-05-14 00:25:13
ホント、ムスちゃんの笑顔、かわいいですね。子どもの笑顔っていいねえ。kuniさんの笑顔もくったくなくて、なんだか本当の親子みたい・・・?
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Unknown (Takuma SUDA)
2006-05-14 20:30:03
いつも拝見しています。



高橋さんの写真がきっかけとなって、多くの人の善意を呼び起こしたんですね。

本当に世の中胸くそ悪いことだらけですが、それでもこういう出来事、

すばらしいなあと思います。



100の胸くそ悪い出来事も1回のこういう出来事でまた写真を撮ろうという

活力になるのでしょうね。



これからも応援しています。
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Unknown (dumbo)
2006-05-14 23:34:42
良かったですねぇ~、ホントに!!



高橋さんを通じてその存在を知ったリベリアのムスちゃん。今までは漠然と、彼女はリベリアの中で育って大人になっていく、、、と想像していましたが、今回のことで私が描く彼女の未来まで可能性が広がっています。



この善意の波紋が、少しずつ、静かに、より多くの人に伝わって、響いていきますように。
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メディアの責任 (bluesnow)
2006-05-15 01:36:10
やっと田舎の地元紙で、AP通信の転載記事を見つけました。今回の訪米で、シカゴのアボット社がリベリアの妊娠している女性たちに25000のHIVテストキットを無料で提供することになったとのこと。よかったです。トリビューンの記事によると、今回の訪米はオプラショーのテレビ局側が費用を出したようですが、ショーでは黒人女性同士、どんな話の展開になったのかなあ。ムスちゃん個人の幸運、強運はもちろん大変喜ばしいことですけど、メディアの責任はもっと広汎で大きく深いと思いますよ。。高橋さん、ここまで来ると、一生ムスちゃんの第二のお父さんになる覚悟はできてるんでしょうね。(笑)
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Unknown (てるちゃん)
2006-05-16 07:09:28
高橋さんの写真集を、1年前に息子に見せました。息子は、はじめ目をそらしていました。1年たって、小学校2年生になった息子は、夏休みの感想文のひとつに、その写真集を選びました。そして、それがきっかけで、息子が写真集を学校に持って行き、先生がそれをみんなに見せてくれたそうです。



今、私たちにできることってなんだろう?

忙しさに紛れながら、恵まれた環境の中にいる中で、人の事を思いやることができたなら、もっと幸せな子ども達が増えていくのに・・そう漠然と思う今日この頃です。
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Unknown (Kuni Takahashi)
2006-05-16 08:58:52
そうですね。日本にいればそれなりに恵まれた環境にはあると思うのですが、それでもみな自分のことで手一杯で、自分たちが恵まれている、ということ自体さえ実感できない、というのが現実ではないでしょうか?やはり、特に子供たちにはもっと広い視野を持って世界をみてもらえるような機会を提供してあげることが大切だと思います。それによって、他人のことを考えたり、思いやったりすることができるようになるのでは。。。
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