Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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ギフトとの週末

2008-09-16 12:21:55 | リベリア
大統領選挙に関連したアサインメントのために、バージニアとペンシルバニアに1週間ほど滞在してきた。

選挙関係といっても、オバマやマケインなどの候補者を直接撮るものではなく、候補者たちが政策のポイントとするいくつかの問題に焦点をあてたものだ。

バージニアでは「移民」、ペンシルバニアは「戦争」がそのテーマで、数週間前にワシントンDC支局の記者たちがすでに取材を済ませており、僕の仕事は彼らがインタビューした人たちのポートレートとか、記事の舞台となる町の表情を捉えるといった、いわば後追い撮影。それほどエキサイティングな仕事ではないのだが、それでもいくつか気に入ったものが撮れたと思う。トリビューンに記事が掲載されるのは来月なので、ここにはまだ写真をアップできないのがちょっと残念。

それとは別に、せっかくペンシルバニアまで行く機会があったので、仕事を終わらせてから少し足をのばしてギフトに会ってきた。
http://blog.goo.ne.jp/kuniphoto/e/e2a193243c2b1304b04b6cb36bb58602

「アンクル・クニ!!!」
いつもの如くジョディの希望で、僕が訪れることは子供たちには内緒にしてあったので、突然の来訪者にびっくりしたギフトとノエミ、それにアサタまでがドアをあけたとたん飛びついてきた。彼女たちのこういう大袈裟なまでの歓迎をうけるのは嬉しいことこのうえない。彼女たちが成人してしまえば、もうこんなに喜んではくれないだろうし。。。

3月に会って以来ほぼ半年ぶりだが、みなそれほど変わりはないようで、アサタもずいぶんこちらの生活に慣れてきたようだ。

今回はじめてギフトのサッカーの試合をみることができた。

さすがアメリカの郊外、といった感じで、林を切り開いた広々とした土地に、5面も6面もサッカー・フィールドがつくられている。鮮やかな緑の芝が生い茂ったそんなフィールドでボールを追いかけて走り回るギフトの姿を眺めていたら、ふとリベリアの内戦の記憶が蘇ってきた。

不思議なものだ。。。あのとき家族を殺され泣き叫んでいた少女が、いまこんなアメリカ郊外の町で白人の子供たちとサッカーに興じている。彼女のこんな人生を一体誰が想像できただろう。

偶然にも、帰路の車の中でジョディーがこんなことを語りだした。

「やっぱり、なるべくしてなる、という運命のようなものがあるのよね。。。私が数ヶ月早く養子をとることを考えていたら、ギフトの記事には巡り会わなかったでしょうし、そうしたら彼女のことを知ることもなかったでしょう」

それが「運命」と呼ぶべきものなのかは僕にはわからないが、それでもすべての出来事というのは偶然が積み重なって繋がっているわけで、ギフトのことも、僕がリベリアの内戦を取材し、さらに翌年写真に写った彼女を探し出し、そのまた翌年トリビューンがその記事を掲載し、かつインターネットというテクノロジーがあったからこそペンシルバニア在住のジョディがシカゴ・トリビューンの記事を読むことができた。そんなすべての要素が重なってこういう結果が生み出されたわけだ。

彼女に限らず、僕にしても、またこのブログを読んでくれている人たち一人一人も、そういう偶然の積み重ねで現在を生きている。人間誰でも、高校や大学、職場や結婚などに関して、もしあのとき別の選択をしていたら、自分の人生はどうなっていただろう、いまより良かっただろうか、などと考えたことはあるはずだ。

だからどうした、といわれてしまえばそれまでだが、久しぶりにギフトに会って、少しばかりそんな哲学的なことを考えさせられるはめになった。。。そんな週末でした。

とりとめのない文章で失礼。




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