Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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苦悩するモモ

2008-05-22 10:43:56 | リベリア
元少年兵のモモについての近況報告もしておきたい。

彼は、内戦が終わり銃を捨ててから5年が経とうとしている今もまだ自分を見出せないでいるようだ。

学校生活も、校長の話によればモモは集中力に乏しく、成績も振るわずに進級できない状態が続いている。ただ、以前は乱暴だった教師に対する言葉遣いなどは落ち着いてきたようだし、気まぐれだった出席率もあがり、最近はきちんと登校しているということで、悪いことばかりではない。

内戦終結の翌年に会ったときからそうだったのだが、モモと話していても、勉強する目的や、これから自分がどうしたいのかということが自分の中ではっきりせずに、悶々としている感じをうける。いつも欲求不満で、どこかに怒りを溜めている、という印象だ。

僕は心理カウンセラーではないので、それが何に起因しているのかなどうんぬん分析するつもりはないが、やはり少年兵としての壮絶な経験が影響を及ぼしているのは否定できないだろう。

以前にも書いたが、モモは内戦中に捕虜になった二人の男たちを殺している。司令官の命令で、至近距離から撃ち殺したのだ。そのときはさすがに身体から力が抜けたようで、司令官がくれたラム酒とマリワナで気分が楽になったと言っていた。

まだ12,3歳の少年がこんな経験をすれば、その後後遺症が残っても当然だろう。

ただ、モモの同年代の友人で、少年兵として同じ部隊で戦ってきたオサカやファヤは、学習意欲もあるし、成績もよく人あたりもいいから、少年兵みながそういうトラウマや後遺症に苦しんでいると一括にすることはできないのだが。。。

いずれにしても、モモに必要なのは、しっかりと導いてくれる強い兄貴とか父親の存在なのかもしれない、それとも、温かくつつんでくれる母親なのか?

内戦は、モモような少年兵たちから、人に甘えたり、互いに遊んだりという子供として生きる大切な時間を奪ってしまった。そんな彼らが、失われた少年期を取り戻すことなどもう不可能なのだろうか。。。








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2 コメント

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いろいろ (**kom)
2008-05-26 18:06:20
リベリア基金の報告書まで。
偉いですねえ、なんか本当に感心してしまいました。
アシスタントがいないのに。すごいなあ。

基金については、そのうち私も小額ですが参加させていただきます。

本来ならば、クニさんの写真展を企画しそこでさまざまな方々に知ってもらいながらやるといいなと思っていました。お金を出せばいいんだ、と自分が思わないようにしたいというのが子どもたちと関わる際の私の考えだったので。しかし、その話しもあまりうまく行かず今後ここにあるモモのような写真ならば企業側も受け入れてくれるかもしれない、とも今また考えたりしていますが。

さて、モモのことですが他の二人とは少し違っていたのではありませんか?それは「立派な少年兵士」だったのではないか?という推測です。

それと薬を利用する回数はどうだったのかしらと考えました。もしかしたら、医療の手助けが必要になっているような気がします。今モモに起こっていることが、例えば心的な問題と脳の機能的な問題が起こった上での学習不良状態であれば、モモは毎日劣等感に苛まれますますやる気をなくしてしまうかも、と思いました。

戦争が終わったとき、日本でも多くの立派な兵士がその後適応できなくて、逆に戦争に適応できなかった人間が愉しく生きていたりするのですが、一番は世界がまるきり変わってしまったことへの不信感だと思うのです。「これが素晴らしいことだ」と兵士を殺害することを讃えていた周囲が「少年兵士だったのか」という態度になってしまうことで、まるで知らない土地に行ったような感じになってしまうのではないか、と。これを超えられるのは学問だと思うのですが、、。

あとの二人は、もしかしたら少年兵士でも「イヤイヤながら」ではなかったのでしょうか。「早く戦争終わらないかな~~」と思ってたんじゃないかなあ。

でもモモは素直で、戦争の中で「頑張って生き抜くぞ~。優秀な兵士になるぞ、偉くなるぞ」と心の底から思っていたとしたら。この戦後の変化をどう捉えているのかなと思いました。

その辺りちゃんと大人と話し合えているのかなあと、少し思いましたが、この写真のような眼付きが多くぼーっとしていることが多ければやはり治療が必要になるかもなと思ったしだいです。

どれも本人を見ていないので、推測ですが。兵士のPTSDなどを緩和する医療システムでモモたちのような子どもたちを対象に治療をしてくれる国際的な何か、補ってくれるところはないのかなあと思いました。
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心のケア (Kuni Takahashi)
2008-05-27 00:51:17
おっしゃるとおり、この国でもっとも必要とされているもののひとつは、プロの精神科の医師やカウンセラーでしょう。あれだけ長い内戦の歴史がありますから、身体だけではなく、心に傷をおった人々は無数に存在します。モモのような元子供兵たちなど、その筆頭でしょう。内戦後1,2年の間は元子供兵たちのケアをしていた国際組織もあったようですが、それでもプロのカウンセラーなどはいなかったと思います。ましてや現在まで続いている長期的なケアなど皆無でしょう。
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