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虫干しの本棚、赤江瀑

 押入れのダンボールの中に詰め込まれている本を、年に一度くらいだが日に当てている。

 今日の主役は赤江瀑だ。

赤江瀑

 この前の虫干しは半村良だったから、私の読書傾向に大きな偏りがあると思われるかもしれない。そのとおり、いわゆる伝奇小説というカテゴリーが好きなのであるが、村上春樹などもちゃんと読んでいるから変人扱いはやめていただきたい。

 さて、ページに風を通しながら一冊だけ読むとしたら、やはり「ニジンスキーの手」だろう。1970年に発表されたこの短編作品が赤江瀑のデビュー作である。

 終戦後の上野の森で強請、強盗、掻払いで命をつなぐ浮浪児達。その中のひとり弓村高に舞踏の才能を見出したロシア人の元舞踏教師が古典バレーの技術を徹底的に叩き込んだ。その高が天才舞踏家ヴァーツラフ・ニジンスキーの再来と絶賛されたのは23歳の時、そしてニジンスキーの生涯をたどるように物語は進んでいく。

 他の登場人物として風間という名の男の子が出てくると、思わず蜜蜂と遠雷を思出して爽やかな結末を期待するかもしれないが、この小説は伝奇小説の作法に則った作品だから読後感は全く違う。

 半村良の作品はその文章のリズムが好きなのだが、赤江瀑の文章はいちいち気に障る部分がある。それでも物語の面白さはずば抜けている。

 もう一冊くらい読んでから押し入れにしまうことにしよう。



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