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多重人格による殺人事件と日本の司法

 多重人格を主張していた日系ブラジル人のオーイシ・ケティ・ユリ被告に無期懲役の判決が下った

 鑑定人として出廷した精神科医は、オーイシ被告には「おとなしい」主とした人格と「大胆で冷酷」な別の人格が存在するとした上で、事件当時は主とした人格が別の人格の行動を止められなかったとした。

 多重人格というと思い出すのが早川書房が1974年に発行したフローラ・シュライバー著「シビル―私のなかの16人」である。

シビル―私のなかの16人

 この本はシビル(仮名)という実在の女性が16もの人格を持っていて、その上それらの人格間で情報のやり取りが無いというのだ。ある人格から別の人格に切り替わると前の人格の記憶などは全く次の人格に伝えられないという。

 シビルの人格には幼女や男の子などもあってバラエティに富んでいる。いろいろな人格に絵を書かせているが、絵の雰囲気が全く違うのが面白い。

シビル―私のなかの16人

 この本では精神科医がこれらの人格を統合していく過程を描いている。統合される人格の発した「私は死ぬんですの?」に大いに感情移入したものだ。

 ところが40年も経った2011年に出版された検証本「Sybil Exposed」ではこの本の内容がアメリカ人女性、医師、著者による捏造である可能性が高いと言われている。大いに楽しませてもらった本が創作であったかもしれないというのだ。フィクションだと聞くとあんなに面白いと感じた表現があざとい表現と感じたりするから人間の脳は面白いものである。

 現在、他人格の記憶が無いという解離性同一性障害は存在しないと主張する精神科医もいる。オーイシ被告の鑑定人として出廷した精神科医はどのような立場をとっているのか興味が湧くところだ。

 大阪地裁の上岡哲生裁判長は、被告が当時、合理的な行動を取っており、善悪を判断できたとして完全責任能力を認定した。


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