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ウルビーノのヴィーナス

 東京上野の国立西洋美術館で「古代からルネサンス、美の女神の系譜」と題した展示会が開催されている。ティツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」が目玉だ。

 西欧で美の女神というとギリシャのアフロディテであり、これがローマではビーナスと呼ばれていた。ギリシャ、ローマの神々は自由奔放でまったく楽しいのだが、キリスト教の浸透に伴って異教の神として駆逐されていく。再び復活するのは中世が終わり、ルネッサンスになってからである。したがって今回の展示会も古代のビーナスの展示から急にルネッサンスのビーナスに飛ぶことになる。

 この、「時代の不連続性」が興味深いものを見せてくれる。会場の中ほどに、2000年前と500年前に作られた高さ30センチくらいのビーナスのブロンズ像が2体、並んで展示されている。ところがこの2体、受ける印象がかなり違う。この1500年と言う時間の差が技術の差となり、より繊細な表現が可能になっているが、同時に形式化も進んでしまったようだ。古代のビーナスは、制限された技術の中でいかに表現するかという意志を、より明確に感じることが出来る。制限有るところに芸術が生まれるということか。

 今回の展示のハイライトはやはり「ウルビーノのヴィーナス」。これ以降の裸体画の源流となった作品である。この作品は単にエポックメーキングな作品と言うだけではなく、その美しさも際立っている。ティツィアーノの作品としては、すぐ横にもう一点「キューピッド、犬、ウズラを伴うヴィーナス」が展示されているが、やはり印象は薄い。

ウルビーノのヴィーナス

 今回の展示で、他に気に入った作品はカラッチの「ヴィーナスとサテュロス、小サテュロス、プットー」で、背を向けたヴィーナスとサテュロスの明暗の対比が面白い。

ヴィーナスとサテュロス、小サテュロス、プットー

 キリスト教にとって異教であったビーナスをテーマにした展示会であるため、宗教色のある作品は無い。より自由な発想で表現が可能なためか、変化に富んだ作品が多展示されていて楽しめる。5月18日までの公開だから連休の一日を上野まで出かけてみるのもお勧めだ。



ウルビーノのヴィーナス

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