紀州新聞 THE KISYU SIMBUN ONLINE

和歌山県の御坊市と日高郡をカバーする地方紙「紀州新聞」のウェブサイトです。主要記事、バックナンバーなどを紹介。

国史跡「熊野参詣道」(紀伊路)の指定地に切目王子跡、鹿ヶ瀬峠の追加を答申 〈2022年6月19日〉

2022年06月20日 08時30分00秒 | 記事


切目王子跡(写真は切目王子神社)


石畳の残る鹿ヶ瀬峠(日高町原谷)


 国の文化審議会(佐藤信会長)が17日、国史跡「熊野参詣道」紀伊路の指定地に印南町西ノ地の切目王子跡、日高町の鹿ヶ瀬峠、みなべ町の千里王子跡と千里王子跡北東参詣道のほか、湯浅町の逆川王子跡の5カ所を追加指定するよう文部科学大臣に答申した。紀伊路は紀伊半島西岸を通る参詣道で、平成29年に御坊市の塩屋王子跡、愛徳山王子跡北東参詣道が追加指定されている。

 紀伊路は中辺路とともに参詣道の途中に熊野神の御子神を祠った王子が点在するのが特徴で熊野九十九王子と総称されている。11~13世紀に盛行する上皇、皇族、貴族による参詣、いわゆる熊野御幸に際し、その先達を務める修験者の指示により奉幣、読経などの宗教儀式のほか、法楽のための舞、相撲、和歌会などが催された。
 切目王子は九十九王子の中でも格式の高い五体王子の一つで「中右記」「熊野御幸記」「平家物語」「平治物語」「太平記」など多くの文献にその名をとどめている。中でも正治2年(1200年)に後鳥羽上皇が熊野御幸の途中、切目王子で催された歌会の会(この時の歌の書かれた切目懐紙は西本願寺に所蔵、国宝)、「平治物語」に記されている平清盛が熊野詣での途中、源頼朝が兵を挙げたことを聞き急ぎ京へ引き返したこと、「平治物語」に書かれている護良親王が熊野落ちの途中、切目王子の夢のお告げにより、十津川に入られたことは特に有名。昭和34年に県文化財(史跡)に指定されている。
 鹿ケ瀬峠は小峠付近の日高町に入った地点から、題目板碑の手前までの996・3メートルを追加指定。広川町との境界にある茶屋跡から、古道は照葉樹の古木に囲まれた503メートルの石畳道になる。屈指の難所と言われた鹿ケ瀬峠を越えるには一番の近道で、特に急傾斜地に鮮明に石を敷き詰められ、熊野古道のうち現存する最長の石畳と言われるほど極めてまれである。
 切目王子跡が国史跡の指定地となることに切目王子社旧跡地を「切目懐紙なぎの里公園」として整備するなど切目王子を中心に切目の歴史学習に取り組んでいる地元有志でつくる「うらしま会」代表の寺下鎮雄さん(77)は「歴史的にも価値ある切目王子がやっと認められてうれしい限りだ。切目王子を広く知ってもらうきっかけになるのでは。多くの人が訪れてくれるようになればと期待している」と喜んでいる。
 県教委は世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の指定範囲拡大に向け、紀伊路に残る王子社の学術調査を実施するなど将来的に紀中、紀北の地域に指定範囲を拡大させることを目標にしており、今回の指定で今後の取り組みに一層弾みがつくと期待されている。


 その他の主なニュース

御坊市自主防連が7月18日 水害犠牲者70回忌追悼会

由良エールクーポン使用可能店舗を募集

御坊市が「住みよさ」全国68位、近畿6位に上昇

県青年農業者会議で最優秀賞に中井貴章さん(みなべ梅郷)