筆者の昨年12月16日のブログ上で、軽減税率を検討するよりも、今の景気状況では消費税率を元の5%に戻すべきだと主張していた。
今の日本の消費者行動はどう見ても、生活防衛に走っているとしか筆者には見えません。
中国人観光客が、何十万何百万円を平気で買い物に使う、爆買いのテレビ報道を見せられて、自分の買物の姿にどれだけ惨めさを感じていた日本人が多かった事でしょう。
しかし、かってのバブル時代の日本人観光客の買い物スタイルも、まったく同じように現地人に見られていたのです。
バブル時代はさておいても、8%の消費税が実施されている今の日本は、どう見ても景気が良いというようには見えない。
例えば、新車の販売現場を見ると、8%消費税実施になって以降は、販売実績は一向にその前年より上向かず、低迷したままだ。
軽減税率を採用するのか、やはり10%に消費税をアップすることに政府が危機を感じているのか、参院選を前にして消費税の話が最近はあまり表面だって出てきていない様に見える。
元財務官僚であった高橋洋一氏の最近のコラムで、「アベノミクス沈没、その原因は消費税8%の実施」であったと書いおられる。
筆者も主張していたように、今の日本のGDPの60%は個人の消費によって成り立っている。せっかく消費が盛り上がろうとしていたタイミングで、5%から8%へ消費税を引き上げたせいで、消費行動が一挙にしぼみ、今に至るまで改善しないままである。
そういった環境で再度の消費税アップは自殺行為そのものだという。 筆者も考えていたように日本経済を再活性化するためには、思い切って消費税を5%に減税することだ。
経済低迷を乗り切る方法には、減税手法は予想以上に効果がある。一見、税収が減るように見えるが、盛り上がった消費からの税収増もある上に、高橋氏は「国の特別会計上で余った資金、すなわち、いわゆる「霞が関埋蔵金」を吐き出す方法もある」という。
概略の財務計算を高橋氏はコラムの中で行っておられ、なんだか消費税増税ありきという大手メディアの政府寄りのPRに、国民は騙されているのではないのだろうか?
(現代ビジネス 経済の死角より貼り付け)
アベノミクスついに沈没
「消費税8%」がすべての間違いだった
2016年02月24日(水) 高橋洋一
●失われた20兆円
'12年の年末、アベノミクスが始まった当初、日本のGDP(国内総生産)は順調な成長を続けていた。アベノミクス開始時のGDPが約517兆円。これが、'14年3月には実に約535兆円にも達した。
ところが、'14年4月の8%の消費税率導入を境に状況が一変した。'14年度第2四半期までに、GDPが一気に約14兆円も急落してしまったのだ。
その後もGDPは伸び悩み、直近の'15年7-9月期の数字は約530兆円。私の試算では、仮に消費増税さえしていなければ、GDPはその後も右肩上がりの成長を続け、今頃は約550兆円まで達していただろう。
差額は20兆円。これだけの金額が、増税によって失われたのだ。
この20兆円分の伸びがあれば、物価も上昇し、賃金も消費も好調という、良好な循環が生まれ、昨年中には「デフレ脱却宣言」ができただろう。日経平均株価も2万円台、為替も1ドル=120円の水準は保てたはずだ。
そもそも、GDPの6割を個人消費が占めている以上、増税による消費減退でGDPが下がるのはわかりきっていた。
増税の影響で失われた20兆円のGDPを国民一人頭で割ると、約15万円。所得が15万円も下がったと考えれば、買い物をする気が失せるのも当然だろう。
いま、日本では格安商品ばかりが売れる、デフレ時代と同じ状況が生まれている。アベノミクスの目標である、2%の物価上昇に相反する事態が起きているわけだ。だが、経済学の常識からして、増税すれば物価が下がるのは自明の理だ。
優秀なはずの財務官僚たちはそんなことすら理解できていなかった。自分たちの歳出権を拡大するため、なんとしても消費増税を可決させようと、「増税をしてもGDPは下がらない」という机上の空論を組み立て、押し切った。
●5%に戻すしかない
失われた20兆円のGDPから試算される消えた税収は約5兆円。一方で、消費増税で増えた税収は約8兆円。
「3兆円多いのだから、増税のほうがいいのでは」と思うかもしれない。
しかし、冷静に考えると、増税によって税収を8兆円増やすのと引き換えに、一人当たり15万円のGDPを吹き飛ばしてしまったのだ。これが日本経済に与えたダメージは、計り知れない。
収益が上がらないのに税負担だけを増やしたので、企業は苦しみ、賃金も上がらない。消費も当然伸び悩む。アベノミクスの理想とは真逆の悪循環にはまりこんでいる。
結局、無知な財務官僚が身勝手な思惑で推し進めた増税で、国民は8兆円を取り上げられたあげく、本来、得られるべき所得までを失ったのだ。
この状況に、本来であれば、「責任をもって2%の物価上昇を達成させる」と明言している日銀の黒田東彦総裁こそが、「増税で物価が上がらないのなら、失敗を認めて減税するか、景気対策をしてください」と政府に強く進言すべきだろう。
だが、黒田総裁は「消費増税で成長が大きく損なわれることはない」と繰り返し発言してきた手前、今更もう何も言えない。起死回生のマイナス金利政策も、消費増税のダメージが大きすぎたため、いまのところ本来の効果が出ていない。
もし、安倍政権が予定通り、'17年の春に10%への増税を実行すると、どうなるか。8%増税の時と同じくらい、いや、それ以上の致命的なダメージを引き起こすだろう。
3%の増税でGDPが14兆円急落した。ということは、上げ幅が2%なら、単純計算で約10兆円のGDPが一瞬で失われる。さらに、今回は中国経済失速などの要因も加わるため、長期的に考えれば、8%増税時を上回る規模のGDPが失われる可能性がある。
消費増税が引き起こした負の連鎖から脱却するには、いますぐにでも消費税を5%に戻すのがベストなのは言うまでもない。だが、政府もいまさら引き返せないだろう。
それでも、本気で景気回復を目指すのならば、取れる策は消費減税の他にもいくらでもある。
例えば、国の特別会計上で余った資金、すなわち、いわゆる「霞が関埋蔵金」を使う手だ。
「外国為替資金特別会計」には円安の含み益の約20兆円、「労働保険特別会計」には約7兆円もの埋蔵金がある。これを原資に、国民に10兆円規模の給付金を配り、増税の痛みを和らげる。
この「埋蔵金10兆円バズーカ」をぶっ放し、景気に良好な刺激を与えて上向かせたところで、日銀が一気に金融緩和を推し進め、国債の購入量を今の80兆円から100兆円まで増やす。
極端な話に聞こえるかもしれないが、ここまでしてようやく、「8%増税の呪縛」は払拭される。
それほどまでに、消費増税が日本経済に与えたダメージは大きい。
「週刊現代」2016年2月27日号より
(貼り付け終わり)
今の日本の消費者行動はどう見ても、生活防衛に走っているとしか筆者には見えません。
中国人観光客が、何十万何百万円を平気で買い物に使う、爆買いのテレビ報道を見せられて、自分の買物の姿にどれだけ惨めさを感じていた日本人が多かった事でしょう。
しかし、かってのバブル時代の日本人観光客の買い物スタイルも、まったく同じように現地人に見られていたのです。
バブル時代はさておいても、8%の消費税が実施されている今の日本は、どう見ても景気が良いというようには見えない。
例えば、新車の販売現場を見ると、8%消費税実施になって以降は、販売実績は一向にその前年より上向かず、低迷したままだ。
軽減税率を採用するのか、やはり10%に消費税をアップすることに政府が危機を感じているのか、参院選を前にして消費税の話が最近はあまり表面だって出てきていない様に見える。
元財務官僚であった高橋洋一氏の最近のコラムで、「アベノミクス沈没、その原因は消費税8%の実施」であったと書いおられる。
筆者も主張していたように、今の日本のGDPの60%は個人の消費によって成り立っている。せっかく消費が盛り上がろうとしていたタイミングで、5%から8%へ消費税を引き上げたせいで、消費行動が一挙にしぼみ、今に至るまで改善しないままである。
そういった環境で再度の消費税アップは自殺行為そのものだという。 筆者も考えていたように日本経済を再活性化するためには、思い切って消費税を5%に減税することだ。
経済低迷を乗り切る方法には、減税手法は予想以上に効果がある。一見、税収が減るように見えるが、盛り上がった消費からの税収増もある上に、高橋氏は「国の特別会計上で余った資金、すなわち、いわゆる「霞が関埋蔵金」を吐き出す方法もある」という。
概略の財務計算を高橋氏はコラムの中で行っておられ、なんだか消費税増税ありきという大手メディアの政府寄りのPRに、国民は騙されているのではないのだろうか?
(現代ビジネス 経済の死角より貼り付け)
アベノミクスついに沈没
「消費税8%」がすべての間違いだった
2016年02月24日(水) 高橋洋一
●失われた20兆円
'12年の年末、アベノミクスが始まった当初、日本のGDP(国内総生産)は順調な成長を続けていた。アベノミクス開始時のGDPが約517兆円。これが、'14年3月には実に約535兆円にも達した。
ところが、'14年4月の8%の消費税率導入を境に状況が一変した。'14年度第2四半期までに、GDPが一気に約14兆円も急落してしまったのだ。
その後もGDPは伸び悩み、直近の'15年7-9月期の数字は約530兆円。私の試算では、仮に消費増税さえしていなければ、GDPはその後も右肩上がりの成長を続け、今頃は約550兆円まで達していただろう。
差額は20兆円。これだけの金額が、増税によって失われたのだ。
この20兆円分の伸びがあれば、物価も上昇し、賃金も消費も好調という、良好な循環が生まれ、昨年中には「デフレ脱却宣言」ができただろう。日経平均株価も2万円台、為替も1ドル=120円の水準は保てたはずだ。
そもそも、GDPの6割を個人消費が占めている以上、増税による消費減退でGDPが下がるのはわかりきっていた。
増税の影響で失われた20兆円のGDPを国民一人頭で割ると、約15万円。所得が15万円も下がったと考えれば、買い物をする気が失せるのも当然だろう。
いま、日本では格安商品ばかりが売れる、デフレ時代と同じ状況が生まれている。アベノミクスの目標である、2%の物価上昇に相反する事態が起きているわけだ。だが、経済学の常識からして、増税すれば物価が下がるのは自明の理だ。
優秀なはずの財務官僚たちはそんなことすら理解できていなかった。自分たちの歳出権を拡大するため、なんとしても消費増税を可決させようと、「増税をしてもGDPは下がらない」という机上の空論を組み立て、押し切った。
●5%に戻すしかない
失われた20兆円のGDPから試算される消えた税収は約5兆円。一方で、消費増税で増えた税収は約8兆円。
「3兆円多いのだから、増税のほうがいいのでは」と思うかもしれない。
しかし、冷静に考えると、増税によって税収を8兆円増やすのと引き換えに、一人当たり15万円のGDPを吹き飛ばしてしまったのだ。これが日本経済に与えたダメージは、計り知れない。
収益が上がらないのに税負担だけを増やしたので、企業は苦しみ、賃金も上がらない。消費も当然伸び悩む。アベノミクスの理想とは真逆の悪循環にはまりこんでいる。
結局、無知な財務官僚が身勝手な思惑で推し進めた増税で、国民は8兆円を取り上げられたあげく、本来、得られるべき所得までを失ったのだ。
この状況に、本来であれば、「責任をもって2%の物価上昇を達成させる」と明言している日銀の黒田東彦総裁こそが、「増税で物価が上がらないのなら、失敗を認めて減税するか、景気対策をしてください」と政府に強く進言すべきだろう。
だが、黒田総裁は「消費増税で成長が大きく損なわれることはない」と繰り返し発言してきた手前、今更もう何も言えない。起死回生のマイナス金利政策も、消費増税のダメージが大きすぎたため、いまのところ本来の効果が出ていない。
もし、安倍政権が予定通り、'17年の春に10%への増税を実行すると、どうなるか。8%増税の時と同じくらい、いや、それ以上の致命的なダメージを引き起こすだろう。
3%の増税でGDPが14兆円急落した。ということは、上げ幅が2%なら、単純計算で約10兆円のGDPが一瞬で失われる。さらに、今回は中国経済失速などの要因も加わるため、長期的に考えれば、8%増税時を上回る規模のGDPが失われる可能性がある。
消費増税が引き起こした負の連鎖から脱却するには、いますぐにでも消費税を5%に戻すのがベストなのは言うまでもない。だが、政府もいまさら引き返せないだろう。
それでも、本気で景気回復を目指すのならば、取れる策は消費減税の他にもいくらでもある。
例えば、国の特別会計上で余った資金、すなわち、いわゆる「霞が関埋蔵金」を使う手だ。
「外国為替資金特別会計」には円安の含み益の約20兆円、「労働保険特別会計」には約7兆円もの埋蔵金がある。これを原資に、国民に10兆円規模の給付金を配り、増税の痛みを和らげる。
この「埋蔵金10兆円バズーカ」をぶっ放し、景気に良好な刺激を与えて上向かせたところで、日銀が一気に金融緩和を推し進め、国債の購入量を今の80兆円から100兆円まで増やす。
極端な話に聞こえるかもしれないが、ここまでしてようやく、「8%増税の呪縛」は払拭される。
それほどまでに、消費増税が日本経済に与えたダメージは大きい。
「週刊現代」2016年2月27日号より
(貼り付け終わり)