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世界共同体憲章試案(連載第13回)

2019-11-08 | 〆世界共同体憲章試案

第9章 天然資源の民際管理

〈諸原則〉

【第45条】

土壌資源及び遺伝資源を除く地球上の天然資源は、本質的に地球人類の共有に属し、その保存、開発及び利用は世界共同体の責任において、かつ生態学的に持続可能な方法によってこれを行なう。

[注釈]  
 広義の天然資源には、土、水、鉱物などの無生物資源と動植物のような遺伝資源(生物資源)の二系統があるが、そのうち、無生物資源については、これを本質的に地球人類の共有とする原則規定である。その点で、天然資源に対する国家主権という伝統的な原則の転換となる。この転換により、天然資源をめぐる紛争を防止し、有限な天然資源の持続可能な民際管理を可能とする趣旨である。

【第46条】

前条の天然資源が埋蔵されている構成領域圏は、各種天然資源の保存、開発及び利用に関して、世界共同体と協働する権利及び義務を有する。

[注釈] 
 天然資源が埋蔵されている領域圏も、その天然資源の保存、開発及び利用に関して何の権利も持たないわけではなく、世界共同体と協働することができ、かつそれは義務でもある。具体的には、後に見るように、各埋蔵領域圏は世界天然資源機関の常任オブザーバーを務め、かつ現地での掘削事業体の運営に関わることができる。

【第47条】
水資源は、世界共同体の調整的な管理の下、各流域領域圏が共同管理機関を通じて、公平かつ生態学的に持続可能な方法によって管理しなければならない。

[注釈]  
 無生物資源の中でも、全生物にとって死活的な枢要性を持つ水資源に関しては、各地の水資源(その多くは大河川)流域領域圏で構成する共同管理機関を通じて、公平かつ生態学的に持続可能な方法でこれを管理することによって、水資源をめぐる紛争や枯渇を防止する趣旨である。

【第48条】

1.土壌資源及び遺伝資源は、何者にも属しない。ただし、世界共同体及び構成領域圏は、その管理下にある土壌資源及び遺伝資源について、生物多様性の維持の観点から、生態学的に持続可能な方法によって管理しなければならない。

2.世界共同体は、前項但し書きに規定する構成領域圏による管理について、監督的にこれに関与する。

[注釈]  
 まさに自然そのものとして不可分の関係にある土壌資源及び遺伝資源は、何者にも属しない無主物とする原則規定である。従って、世界共同体も構成領域圏も土壌資源及び遺伝資源に対する専属権を主張できない。
 とはいえ、土壌資源及び遺伝資源の管理は、土壌を有し、各種動植物が生息する構成領域圏(直轄圏の場合は世界共同体)の管理権限に委ねられる。しかし、それは白紙委任ではなく、世界共同体は、そうした構成領域圏による適切な遺伝資源管理を監督する権限を留保される。


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