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近代革命の社会力学(連載第443回)

2022-06-16 | 〆近代革命の社会力学

六十三 レバノン自立化革命

(1)概観
 2005年2月から4月にかけて中東のレバノンで発生した革命は、それまで25年にわたり続いてきた隣国シリア軍の駐留とシリアによる常態的な内政干渉、及び親シリア派政権に対する民衆蜂起に端を発したものである。
 この革命も前章で取り上げた民衆諸革命と併せ、時期的な共時性からしばしば「色の革命」としてくくられることもあるが、基本的に自国体制に対する革命であった前者と異なり、レバノンの革命は外国の属国状態からの自立を求めた革命である点に構造的な相違があることから、ここでは別途扱うものである。
 もっとも、レバノン自立化革命でもセルビア革命で大きな役割を果たした青年運動オトポールの指南を受けた青年運動組織が参加しており、ユーラシア横断革命との一定のつながりは認められる。
 一方、時期的には、レバノン自立化革命は2010年以降、シリアをも含む中東アラブ諸国で継起する連続的な民衆革命の波動(いわゆる「アラブの春」)の前夜的な位置にあるが、レバノンの社会構造は周辺のアラブ諸国とは異なっており、レバノンの革命が「アラブの春」の端緒であったとは言えない。
 とはいえ、情報社会の進展により、レバノンの革命事象は周辺地域にも少なからず触発的なインパクトを与えていることからして、レバノンの2005年革命は、ユーラシア横断民衆諸革命とアラブ連続民衆革命とをつなぐような位置にあった事象と言える。
 そうした意味で、レバノンは決して大国とは言えないながらも、20世紀末から21世紀初頭にかけてユーラシア・中東にかけて広く拡散し、世紀転換期の世界情勢にも影響を及ぼす新たな革命潮流を作り出すかすがいのような役割を果たすこととなった。
 また、自立化革命という点に関しても、これは歴史上しばしば見られた宗主国に対する独立革命とは異なり、すでに独立を達成した諸国が外国の干渉から脱するべく起こされるもので、ポスト植民地主義時代における新たな革命の類型に数えられる。
 その点、後に改めて取り上げる2014年のウクライナ革命もロシアに対する自立化革命であるし、古くは1952年のエジプト共和革命も、法的には「独立」していながらなおイギリスに従属していた当時のエジプトがイギリスからの自立を追求する自立化革命としての性格を併有していたと言える。


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