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近代革命の社会力学(連載補遺21)

2022-09-27 | 〆近代革命の社会力学

八ノ〇 第二次メキシコ共和革命

(4)20世紀メキシコ革命への展望
 フランス傀儡帝政を崩壊させた1867年の第二次共和革命は、全く新しい体制の樹立ではなく、フランス軍に追われて国内亡命していたフアレス政権が復旧される形で完結した。その意味では、革命であると同時に、従前のメキシコ合衆国の復活でもあった。
 フアレスは67年12月の大統領選挙で、対仏レジスタンスの英雄として台頭してきたポルフィリオ・ディアス将軍を破って再選を果たしたが、以後はフアレスとディアスが復活合衆国における二大ライバルとして対峙することになる。
 フアレスはメキシコのみならず、ラテンアメリカ全体でも初の先住民出自の国家元首であり、農民家庭に生まれ、畑の見張りや下僕から身を起こして法律家の頂点としての最高裁判所長官、さらに政治家に転じて大統領にもなった稀有の人物である。
 その政権下では、自由主義的な政治思想に基づき、先住民族の権利の尊重や政教分離、軍の文民統制などの改革が進められたが、フアレスはその出自にもかかわらず、急進的な社会主義者ではなく、資本主義者として、市場経済化や先住民の伝統的な土地共有慣習の清算など、ブルジョワ自由主義の綱領を推進した。
 一方、民主主義という点では、フアレスが三選を狙って1871年大統領選挙に立候補したことは論争を呼び、この選挙で敗れたディアスが武装反乱を起こすなど、政情不安が深まる中、72年にフアレスが急死したことで流動化した。
 1876年のクーデターでフアレスの旧敵であったディアスが権力を掌握すると、彼は以後、1911年まで断続的に三度大統領を務め、特に1884年から1911年までは連続して長期の独裁政治を行った。
 ディアス体制下では大土地所有制アシエンダは護持されたばかりか一層拡大されため、搾取される農民は貧困層のままであったが、一方では外資導入を通じた経済の近代化が大々的に実行されていったため、ディアス時代はメキシコの資本主義的近代化の時代と重なる。
 このように、1867年第二次共和革命―その前哨としての1855年自由主義革命―は、総体としてブルジョワ自由主義革命としての性格を持ったが、ディアス体制はそれを換骨奪胎して一種の開発独裁制を樹立したと言える。
 このディアス独裁に対する革命運動が1910年頃から開始され、内戦を経て社会主義的な傾向を持つ革命が成立した。この20世紀メキシコ革命は、第二次共和革命では積み残された農地改革や民主主義といった課題の解決を目指して起こされた新たな変革の波である。


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