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共通世界語エスペランテート(連載第15回)

2019-07-19 | 〆共通世界語エスペランテート

第2部 エスペランテート各論

(1)文字体系

 世界語の相対的な条件として、習得容易性という性質は最重要のものである。その点、かきことばをともなう言語習得において最初の関門は文字であるが、世界語の文字体系は極力簡便であることが習得容易性をたかめる。
 エスペランテートでは、英語等とも共通するラテン式アルファベット(ローマ字)を使用する。おそらく、ラテン式アルファベットがもっとも簡便な文字体系だからである。

 この点で世界語の絶対条件となる言語学的中立性がとわれるが、今日ではおおくの非西欧言語でもラテン文字表記を正書法表記もしくは補助的な表記として公認していることにかんがみると、ラテン文字の採用は許容される範囲内といえるだろう。

 エスペランテートの文字体系は、英語より5個少ない以下の21文字(大文字/小文字)で構成される(カッコ内は発音)。
 エスペランテートで大文字が使用されるのは、文頭単語のはじめの一文字のほか、人名や地名等の固有名詞である。固有名詞は、そのすべてを大文字で表記する。例:YAMADA TAROU(山田太郎)

 A/a[アー] B/b[ボー] C/c[ツォー] D/d[ドー] E/e[エー] G/g[ゴー] H/h[ホー] I/i[イー] J/j[ジョー] K/k[コー] M/m[モー] N/n[ノー] O/o[オー] P/p[ポー] R/r[ロー] S/s[ソー] T/t[トー] U/u[ウー] W/w[ウォー] Y/y[ヨー] Z/z[ゾー]

 上記のうち、W/wは下記の準文字hw及びbwにおいてのみもちいられる形式文字であり、単独ではもちいられないので、実質的な文字数は20個とみなすこともできる。

 P/pは単語の語頭にたたず、語末にもつかない。また、P/pはうしろにかならず母音をともない、子音をともなうことはない。ただし、外来語の固有名詞のばあいは、そのかぎりでない。

 rは原則として、まきじたで発音されるが、arのように、rが単語の語尾につくばあいは、まきじたにならず、標準英語のrのような歯茎接近音となる。なお、まきじたができないばあいは、各自の母語のr音の発音で代用してよい。

 文字のくみあわせによる追加的な準文字として、つぎの4種がある。これらを大文字化するときは、筆頭文字(それぞれc s h b)だけを大文字にする。

 ch[チ] sh[シュ] hw[フッ] bw[ブッ]

 hwとbwは、うしろにかならず母音をともなって、ファやブァのように発音される。fやvのような唇歯摩擦音ではない。

 英語には存在するが、エスペランテートには存在しない文字として、つぎの5文字がある。

 F/f  L/l  Q/q  X/x  V/v 

 これらのうち、F/fやV/vのような唇歯摩擦音をもつ言語は英語やエスペラント語をはじめすくなくないが、日本語のように、これをもたない言語も存在するため、世界語たりうる中立性という観点から、エスペランテートでは唇歯摩擦音が排除される。

 また、歯茎側面接近音とよばれるL/lは、その発音が不明瞭になりやすく、ききとりにくい難点をもち、日本語のようにこの音素をもたない言語も存在することから、エスペランテートでは排除される。

 ただし、上掲6文字は人名・地名等の固有名詞を表記する際には一種の外来語として使用されうるので、完全に排除されるわけではないことに注意を要するが、エスペランテート固有の文字体系からは排除されるのである。


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