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キューバと朝鮮

2016-05-11 | 時評

日本メディア上では今月の朝鮮労働党大会に比べるとはるかに小さな扱いにとどまったが、先月にはキューバ共産党大会が開催されていた。キューバと朝鮮―。ともに、類似の社会主義一党支配体制を固守している数少ない中規模国である。

その類似性は、家族支配の点にも及ぶ。キューバでは1959年キューバ革命を指導したカストロ兄弟間での「世襲」が一足先に行なわれており、弟のラウルが政権を握っている。とはいえ、彼もすでに80歳を超え、国家指導者としては2018年の退任が予定されている。

キューバと朝鮮はともに民族自決主義的な志向性を持ちつつも、かつては旧ソ連を政治的経済的な後ろ盾として庇護されていたが、ソ連の解体消滅に伴い、90年代以降、政治的な孤立と経済的な苦境に陥った点でも類似の足跡をたどってきた。

しかし、キューバではラウル政権になってから、市場経済原理の導入を試みており、中国的な社会主義市場経済の方向へ慎重な舵を切っているのに対して、朝鮮では表向きは社会主義原則の堅持を謳いつつ、なし崩しに事実上の市場経済化が進行していると言われる。

国際関係上も、キューバは長らく対決してきた米国との和解に動き、今年、オバマ米大統領の歴史的な公式訪問を受け入れた。革命前の対米従属経済に戻るリスクを犯してでも、雪解けの利益を優先しようという実利政策であろう。

一方の朝鮮は正反対に、核開発を強行し、対米関係を緊張させているが、真の目的は対米戦争にあるわけではなく、挑発して米国を交渉の場に引き出そうとすることにあると見られる。しかし、米国も安易にそうした策に乗る気配はない。

半世紀以上、恐怖政治的な抑圧も用いながら世襲によって維持され、現在曲がり角に立たされているキューバと朝鮮の両社会主義体制であるが、その方向性に関してはかなりの相違点が生じている。国民生活の水準を図る尺度の一つである一人当たりGDP(購買力平価)でもキューバの約10000ドルに対し、朝鮮は約1800ドルと差がある。

キューバの党大会は前指導者で現体制の創始者であるフェデル・カストロも登場し、弟ラウルともども高齢化した革命第一世代の「お別れ」大会となったが、朝鮮の党大会は若い三代目指導者金正恩の正式な披露目大会の様相を呈した。

今日では独異な体制を維持する東西両国の歩みがどうなっていくのか、世界の政治経済上は小さな比重しか持たないとはいえ、急激に崩壊すればともに大量の難民を生じかねないだけに、関心をもって注視する必要があると思われる。


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