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近代革命の社会力学(連載第453回)

2022-07-05 | 〆近代革命の社会力学

六十五 キルギス民主化革命

(2)縁故独裁の再現前化と革命への急転
 20世紀末から21世紀初頭にかけて続発したユーラシア横断民衆諸革命の中で、キルギスのみ5年を置いて二次革命が発生した要因として、革命後の政権が前政権と酷似した縁故独裁政治に陥り、革命が巻き戻されたことがあった。
 その点、キルギスもアジア的な縁故政治の土壌を共有していたことが影響している。実際、革命後の選挙で勝利したバキエフ新大統領は、権力世襲も念頭にビジネスマンの次男を経済開発を担う政府経済機関の長に抜擢したほか、警察官出身の実弟を保安・警備機関の長に据えるなど、親族で政治経済の要職を固めていった。
 こうしてバキエフ政権が2005年革命から短期間で第二のアカエフ政権と化していく中、06年から野党勢力の抗議行動が開始され、07年4月には大規模な騒乱に発展するが、バキエフは大統領権限を縮小する憲法修正で譲歩したうえ、同年末の解散・総選挙では翼賛政党・輝ける道を結成して圧勝した。
 この選挙では不正疑惑が浮上したが、バキエフ政権は南部に強力な支持基盤を持つ一方、外交的には中国・ロシアとの関係を強化しつつ権力を護持した。09年7月の大統領選挙でも、野党候補者が投票日に政権側の不正を理由に立候補を取り下げたため、バキエフ現職が圧勝した。
 対する野党勢力は05年革命時にバキエフ政権の誕生にも貢献した社会民主党を中心に連合人民運動を組織していたが、不正選挙疑惑を革命蜂起に結びつけるほどの力量は示せず、抗議運動は不発に終わった。 
 こうして2009年の時点ではバキエフ政権の長期化の兆しが濃厚であったが、それが翌年には革命に急転する背景として、09年から燃料価格が高騰する中、電力供給の停滞による輪番停電が導入されるなど、市民生活を悪化させる経済危機が生じたことがある。
 バキエフ政権が経済対策として中国企業の支援による送電線の増設などの関係強化に動いたことは、キルギスを勢力圏とみなすロシアの不興を買い、ロシアが2010年4月、キルギス向けエネルギー輸出に関税をかける措置に出たため、燃費や輸送費の高騰を誘発した。
 そうした状況下、2010年4月、北西部の町タラスで大規模な反政府デモが発生した後、政権が発動した非常事態宣言下で有力野党指導者が拘束されたことに抗議するデモが首都ビシュケクでも発生、暴動を伴う騒乱に発展していく。


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