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近代革命の社会力学(連載第413回)

2022-04-18 | 〆近代革命の社会力学

五十八 アフリカ諸国革命Ⅳ

(1)概観
 サハラ以南アフリカ地域では、1990年代に第四次の革命潮流が見られた。この潮流に含まれるのは、エチオピア、ソマリア、ルワンダ、ザイール(現コンゴ民主共和国)における各革命であり、数的には多くないが、アフリカ大陸における親ソ及び親米の代表的な諸国において長期支配体制を崩壊させた革命であり、アフリカの地政学を変容させることになった。
 この潮流は、冷戦終結とソ連邦解体革命による余波の一部である。実際、エチオピアは親ソ、ザイ―ルは親米のそれぞれ要となる大国であり、この両体制の長期独裁体制が革命で崩壊したことは、まさに冷戦構造の解体と連動している。なお、国境紛争を抱えるエチオピアとの対抗上、親ソから親米に転向したソマリアの独裁体制の崩壊も、同様の力学に属する。
 これらといささか趣を異にするのは、ルワンダの革命であるが、これはルワンダにおける長年の民族対立に起因するジェノサイドという90年代を代表する人道的惨事を機に、ジェノサイドの被害者側民族を主体とする反体制武装勢力が反転攻勢に出て革命に成功し、正義を取り戻すという稀有の革命であった。
 もっとも、このルワンダ革命はザイール革命と連動しており、ルワンダ革命を担った武装勢力はザイール革命を担った武装勢力と共闘し、両勢力は交錯している。そのため、間接的にはルワンダ革命も冷戦終結後の力学を反映していると言える。
 これら四つの革命すべてに共通するのは、かつてアフリカ諸国革命でしばしば見られた急進的青年将校が主導するクーデター型の革命ではなく、いずれも在野の武装革命勢力が内戦に勝利した戦争型の革命であったことである。これは民衆蜂起による民衆革命とも異なり、背後に民族紛争が絡むアフリカ特有の事象である。
 それとともに、いずれも長期独裁体制の下で、あるいはルワンダのようにジェノサイドという非人道的事態によって社会が全般的な破綻に陥った状況を救い、国家再建を目指す「救国革命」という性格を帯びていたことも特徴的である。
 それぞれの革命の帰結は異なるが、政権党となった革命勢力により最も安定した体制が再構されたルワンダに対し、ソマリアは全面的な無政府・内戦状態から国家の分裂に至り、テロリズムの温床ともなるなど、最も苦境に置かれたまま今日に及び、修復が困難な情勢にある。その中間に、民族紛争・内戦を抱えつつも長期安定体制が続くエチオピアとコンゴがある。


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