ザ・コミュニスト

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犯則と処遇(連載第36回)

2019-03-05 | 犯則と処遇

30 検視監について

 犯則捜査における科学捜査優先の鉄則を実践するうえで、変死体の検視は事件性の判断に重要な役割を果たし、その誤りは冤罪にもつながる。そこで、正確な検視のためには法医学の知見と技能が必須であることから、検視は通常の科学捜査員ではなく、法医学専門家に委ねなければならない。

 しかし、日常すべての検視を医師免許を有する法医学者が担うことは困難なため、検視を専門とする特別職の制度が要請される。これが検視監である。
 検視監は、医学の一分野としての法医学の研究や死因鑑定を任務とする法医学者とは異なり、医師免許が不要である代わりに、試験任用制を採用する。
 すなわち、検視専門員試験に合格した後、法医学に関する実務研修を修了した者を検視監補に任ずる。検視監補は、検視監の指揮の下、現場の検視業務を行う。さらに、検視監補として所定年数の経験を積んだ者の中から、検視監を任命する。

 このように、検視監及び検視監補は法医学の知識を有する実務者ではあるが、法医学者ではないため、在職中も退職後も、法医学者として鑑定業務に従事することはできない。検視監または検視監補が法医学者となるためには、改めて医師免許を取得する必要がある。

 検視監は、一定の地域ごとに設置される検視事務所の所長を兼ねる。検視監は司法職ではないが、司法職に準じた独立性を保障され、検視監による検視は人身保護監の命令に基づき、捜査機関から完全に独立して実施される。
 検視過程を透明化するため、事件性の認められる検視結果は必ず人身保護監が主宰する公開の検視審問を通じて検証する。人身保護監が検視結果を適正と認めたときは確定力を持ち、捜査機関等もこれに拘束される。
 なお、人身保護監が検視結果の確定上必要と認めたときは、検視審問に3名以内の法医を参与させ、その意見を徴することができるものとする。

 ちなみに、検視事務所は事件性の有無にかかわらず、変死体全般に対する検視の任務を負うため、明らかに事故や自殺による変死体や医療過誤疑いのある変死体の検視も行なう。そのため、検視事務所は犯則捜査を越えて、あらゆる死因究明の総合センターのような役割を担うことになるだろう。


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