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持続可能的計画経済論(連載第13回)

2018-06-04 | 〆持続可能的計画経済論

第3章 持続可能的計画経済の概要

(5)持続可能的経済計画の実際〈3〉
 前回まで持続可能的経済計画の内実を述べたが、こうした計画をどのようなプロセスで策定するかという手続き的な問題も、計画経済の成否を左右する。
 その点、ソ連式計画経済では支配政党・共産党の統制下に、国家計画委員会を司令塔とする行政機関が主導しつつ、生産企業体(国有企業)も参加する複雑なプロセスを経て計画案が策定されていたが、持続可能的計画経済はそうした官僚的なプロセスではなく、生産企業体による自主的な共同計画となることは既述した。
 その場合においても、計画経済を成功させるポイントとなるのは、いかに現場からの正確な経済情報に基づき、簡素かつ迅速な計画策定プロセスを確立するかである。
 具体的には、まず全土的な共通計画である生産計画A(環境高負荷産業分野)及び生産計画B(農漁業分野)については、該当生産企業体の代表者(計画担当役員)で構成する「経済計画会議」(以下、単に「計画会議」と略す)が計画策定の責任機関となる。
 生産企業体はまず3か年の計画年限の初年度が始まる半年前に各企業体自身による需給予測と労働時間配分を踏まえた個別計画案を提出する。それを基礎資料としつつ、計画会議調査局が環境経済学的な知見をもとに作成した意見書を踏まえ、計画会議で審議したうえでA、Bそれぞれの計画案を策定する。
 このうち、計画Bは農漁業分野の性質上、地方性があるため、全土的な計画とはいえ、広域地方ごとに区分けされた計画となるが、コメのように全土的に流通する主食については全土的な融通計画も必要である。
 計画会議で議決された計画案は、民衆代表機関である全土民衆会議へ送付される。この段階で民衆会議が修正提案をした場合は計画会議に差し戻し、修正の必要性を審議するが、修正不要とされた場合は、原案どおりに可決・成立する(計画会議優先の原則)。
 こうして可決・成立した経済計画は法律に準じた規範性を有するが、通常の法律とは異なり、施行後も計画会議がフォローし、環境経済的な条件の変化に応じて事後的に随時修正される(修正プロセスも、上記と同様である)。
 なお、全土的な計画の中でも製薬に関わる生産計画Cについては計画A及び計画Bとは別枠とし、製薬企業体自身の策定した計画案を直接に民衆会議へ送付し、別途審議・議決することになる。
 以上の全土的な計画に対し、地方的な消費計画の策定は、全く別個に行われる。これは広域の地方ごとに設立される消費事業組合が策定主体となり、広域圏の民衆会議に送付し、審議・議決される。
 消費計画は、消費事業組合の組合員たる広域圏住民からの要望と環境的持続可能性及び健康・安全にも配慮された消費財の生産計画と公平な分配を目的とする流通計画的な性格を帯びた計画である。また、この計画には災害時備蓄のための余剰生産計画が含まれる。


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