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持続可能的計画経済論(連載第14回)

2018-06-05 | 〆持続可能的計画経済論

第3章 持続可能的計画経済の概要

(6)持続可能的経済計画の実際〈4〉
 前回まで述べてきた経済計画はドメスティックなものであるが、地球環境の持続可能性に配慮する環境計画経済は、その究極的な完成形態においては、地球全域をカバーするワールドワイドな計画を必要とする。
 それを実際に可能とするためには、個別国家の枠組みを超えた地球全域での政治的統合―世界共同体の創設(その概要については別連載でもたびたび述べているが、改めて計画経済と絡めて最終章で言及する)という難事業を経る必要があるが、そうした政治問題についてはここではいったん棚上げし、世界規模での経済計画の概容について考えてみたい。
 このような世界規模の計画経済にあっても、基本的にはドメスティックな経済計画の策定と同様に、行政機関主導の官僚制的計画経済ではなく、生産企業体自身による共同計画となる。また計画の中心が環境高負荷産業分野となる点も同様である。
 この場合、ドメスティックなレベルでの環境高負荷産業分野の企業体がワールドワイドな統合体(例えば世界鉄鋼事業機構体、世界自動車製造事業機構体など)を結成し、それら統合体が計画策定の責任主体となることが想定される。こうした企業体合同による世界経済計画機関は、ドメスティックなレベルでの経済計画会議に相当するものであって、その組織的な構造もほぼ同様に考えてよいであろう。
 以上の計画はドメスティックな経済計画で言えば生産計画Aに対応するが、食糧分野に特化した食糧計画も必要となる。これはドメスティックな計画で言えば農漁業分野の生産計画Bに対応するもので、環境的に持続可能かつ安全な農漁業の世界規模での展開と食糧の公平な世界的分配を目的とし、その策定責任主体は、世界食糧農業機関である。さらに基礎的医薬品の平等な世界的普及のため、ドメスティックな生産計画Cに対応する製薬計画は、製薬事業機構体が世界保健機関と連携しながら、策定する。
 これらワールドワイドな経済計画は、その範囲内でドメスティックな計画が策定される総枠としての条約的な意義を持つと同時に、資本主義的な世界貿易に代わる世界的な物財融通計画の意義を持つ。
 従って、それはドメスティックな計画策定手続きが開始される前に策定・施行され、それに基づいて経済計画会議がドメスティックな経済計画を策定・施行することになる。


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