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「ハンバーガー外交」を

2017-04-12 | 時評

朝鮮戦争危機をメディアで煽る専門家を称する人々には辟易する。専門家というなら、なぜ軍事衝突を回避するための知恵を出さずして、戦争シナリオばかり並べてみせるのか。

思えば、第三次世界大戦化の危険もあった朝鮮戦争が休戦して60年以上が過ぎ、戦争の惨状を知る人も少なくなった。当時を知る人なら、戦争危機を煽るような真似をしないだろう。戦争を知らないから、ゲーム感覚でシナリオを描いてみせることができるのだ。これこそが、本当の「平和ボケ」症状である。

その点、トランプ大統領は選挙中、朝鮮の金正恩委員長と“ハンバーガーを食べながら”核交渉したいと言っていた。また、プーチン大統領を好感し―その是非はともあれ―、対露関係改善を目指すことも事実上の公約だったはずだ。いずれにせよ、首脳の対話で危機を解決するのは良いことである。

もっと熾烈だった米ソ冷戦時代ですら、米ソ首脳が対話で危機を回避した事例は、キューバ危機(書簡外交)をはじめ数多い。冷戦終結直後、93‐94年の朝鮮半島危機でも、当時のクリントン政権はカーター元大統領を特使として派遣し、金日成主席(当時)と直接交渉して危機を収めた。

近年の首脳たちは友好国同志なら必要以上に「蜜月」を過剰演出する一方、敵対国相手となると直接対話を避け、互いに非難の応酬を繰り広げることが多い。為政者らもコミュニケーションが苦手な傾向にあるのかもしれない。

トランプの公約に良い点があったとすれば、首脳対話で解決しようとする姿勢の一端が見えていたことだが、どうもここへ来て撤回され、安易な軍事攻撃で事を済まそうとする流れが見える。早くも見えてきた政権の行き詰まり打開策だとすれば、あまりにもあざとい。

「ハンバーガー外交」、大いに結構ではないか。少なくとも、アメリカは正副大統領経験者級の特使を派遣して、説得に当たることくらいはできるはずである。


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