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続・持続可能的計画経済論(連載第34回)

2022-09-25 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第7章 経済移行計画Ⅰ:経過期間

(1)経過期間の概要
 最終的に全世界での貨幣経済の廃止に至る持続可能的計画経済体制の構築を目指す経済移行計画における三つの段階の出発点を成すのが、経過期間である。この時期は、資本主義市場経済を脱却する初めの一歩に相当する最も重要かつ機微なプロセスである。
 歴史上見られた経済システムの全般的な移行事例においても、この経過期間に相当する初めの一歩で大きな混乱が生じやすい。それは、移行を急ぐ政治主導で、しばしばショック療法的な一気呵成の移行が強行されるからである。
 そうした混乱を避けるためには、妥協なき漸進的な手法による計画的・段階的な移行準備のプロセスを確立する必要がある。ここで、漸進的な手法と言うと、しばしば妥協的と同義となり、移行が不完全になることが多い。しかし、漸進と妥協は同義でない。ここで言う漸進とは性急さを避けた着実な前進を意味している。
 具体的に言えば、持続可能的計画経済の柱を成す計画経済システムの構築及び貨幣制度の廃止へ向けた着実な準備を進めることが、この経過期間における最大の眼目である。
 その際、最も究極的かつ難関でもある貨幣制度の廃止に先立って、まず計画経済システムの構築を優先することが合理的である。その入口は、計画経済の対象となる基幹産業の統合である。
 その詳細は後述するが、簡単に言えば、現状ほとんどが株式会社形態で存在している基幹産業を業界ごとに統合した単一の包括会社に束ねるとともに、将来の経済計画機関の前身となる準備組織を設立することである。
 それに対して、貨幣制度の廃止は最も慎重に取り扱うべきプロセスとなるが、経過期間の段階では、まず消費財の貨幣交換によらない無償供給の試行から開始する。
 特に食品を中心とした日常必需品と一部の雑貨的有益品を対象とした物資の無償供給であり、この段階では市場経済と併存する配給制に類似するが、配給制よりも対象品目は多く、経過期間を通じて対象品目を漸次的に拡大していく。


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