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続・持続可能的計画経済論(連載第31回)

2022-05-15 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第6章 経済移行計画

(2)経済移行計画の期間
 一般に、経済システムの全般的な移行には一定以上の期間を要する。従って、経済移行計画は数年という年単位の経済計画とは異なり、ある程度長期的な展望に立った工程的計画となることを免れない。
 まして、貨幣経済の究極である資本主義市場経済システムから、人類史的な変革となる貨幣経済の全廃を最終的な到達点とする持続可能的計画経済システムへ移行するには、一時代を要することは間違いない。
 実際にどれほどの期間を要するかを数字的に示すことは困難であるが、一般的に言って、資本主義市場経済の進展度の高さに比例して、経済移行計画には長期間を要することになる。
 従って、資本主義経済発展が遅滞しており、現在の基準では「途上国」に分類される諸国ほど、経済移行の期間は短期で済む。反対に、「先進国」(=資本主義先進国)ほど、持続可能的計画経済との関係では移行に時間を要する「途上国」となる。
 そのように長短差はあれ、経済移行計画のプロセスは、持続可能的計画経済が完全に定着した段階を到達点として、経過期間→初動期間→完成期の三段階に大きく分けることができる。
 最初の経過期間はまさにシステム移行の只中にあり、経済移行計画の中心的な期間である。この時期を性急に進めると経済破綻を来しかねないので、要注意である。特に現代の「文明人」がほぼ無意識のレベルで身体構造化している貨幣制度の廃止を性急に進めることは禁忌である。
 後で改めて検討するように、この段階でいわゆる経済特区制のような地域的試行制度を導入すべきかどうかは一つの問題である。いずれにせよ、この経過期間は経済移行の成否の鍵を握る最重要段階である。
 続く初動期間は、経過期間を経て第一次の経済3か年計画が施行され、持続可能的計画経済が動き出す期間である。この期間はおそらく世界的にはなお持続可能的計画経済への移行が限定的で、資本主義市場経済を維持している諸国も残されている段階であるので、完全にはまだ移行し切れていない。
 一方で、この期間は初動とはいえ、すでに持続可能的計画経済が始動している限りにおいては経済移行計画の期間を過ぎているとも言えるが、如上の事情から、まだ経済移行計画は終了しておらず、計画の延長期間とも言える。
 この初動期間を過ぎて、世界的にも持続可能的計画経済が動き出した時点で完成期に入る。この段階でようやく世界的にもほぼ貨幣経済が廃され、経済移行計画は完全に終了することになる。


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