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ガンマン合衆国の「正義」とは?

2022-08-03 | 時評

アメリカのバイデン大統領が1日、9.11事件を計画実行したとされる国際テロ組織アル・カーイダの二代目指導者アイマン・ザワヒリ容疑者を殺害したことを公表した(作戦実行は先月31日)。

2011年5月に当時のオバマ政権が実行した初代指導者ウサマ・ビン・ラディン容疑者の殺害ほど話題にならない二番煎じではあったが、組織の二代の指導者をいずれも殺害したことは、政権が代わっても変わらぬアメリカという国の本質を示す出来事と言える。

どちらの殺害に際しても、両大統領は「正義がなされた」と豪語してみせた。容疑者として国際手配されていた人物を殺害することが「正義」であるというのは理解し難いロジックであるが(オバマが憲法学者でもあることを考えれば猶更)、これがガンマン国家アメリカの対処法なのである。

無法の開拓時代が遠い過去となっても、アメリカでは悪人をその場で殺すことは正義であるから、国内で凶悪犯を警察官が現場で射殺するのと同様の感覚で、凶悪な国際テロリストを殺しても、何ら批判は受けない。

実際、アル‐カーイダの両指導者はテロ犯罪の被疑者として国際手配されていたからには、本来なら捜査機関が身柄を拘束したうえで、法廷に起訴すべき存在であるはずのところ、アメリカが軍やCIAなどの軍事・諜報機関主導の作戦で臨むのは、初めから逮捕でなく、殺害を狙っているからにほかならない。

要するに、裁判なしの処刑に等しいことであり、端的に言えば暗殺である。そうしたやり方を「正義」として正当化するのは、まさにテロ行為を「正義」と呼ぶ組織と相似形の発想によるものである。無法行為も国家機関が実行すれば合法になるという手品は存在しない。他のテロ組織に対しても同様の作戦を展開し続けるアメリカも、暗殺作戦のアル・カーイダ(=大本営)と化している。

もちろん、相手は重武装しており、逮捕に抵抗し応戦してくる可能性が高く、そもそも生け捕りにすることは技術的に至難であるという理屈にも一理とは言わず半理くらいはあろうが、組織の頂点にいた人物を殺害してしまえば、9.11のような空前規模のテロ犯罪がどのように計画・実行されたのかが永遠の謎となってしまう。

9.11事件をめぐってはいまだにアメリカによる自作自演説のような陰謀論が流布されているが、陰謀論の多くは政府が真相究明に消極的な事件・事変をめぐって生じる。二人の首謀容疑者を相次いで殺害した9.11事件はその典型例であり、おそらくこの先、永遠に陰謀論が生き続けるだろう。

真実を闇に葬るアメリカのガンマン的手法を正すには、国際社会が暗殺作戦を黙認することなく、批判し、抗議することである。それなくしては、アメリカが自浄的に自らの習慣を正すことはないだろう。

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