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共産教育論(連載第32回)

2019-01-22 | 〆共産教育論

Ⅵ 生涯教育制度

(2)学術研究センターの役割
 共産教育は等級的教育制度を擁しないということは、既存教育制度では高等教育の拠点となってきた大学制度も存在しないことを意味する。単純化すれば大学制度は廃止されるということだが、厳密には学術研究センターに再編・改組されると言ったほうがよい。
 この大学改め学術研究センターは、大学が持っている機能のうち、学術研究の面を純化し、純粋の研究所として再編するものである。具体的には、理学部・工学部・経済学部等々の大学の各学部(及び大学院)がそれぞれ研究所として独立し、それら研究所の集合体が学術研究センターとして総括される形になる。
 ただし、医学部や法学部、教育学部などのように高度専門職の養成と結びついた学部については、それらの研究機能も後で述べる専門教育制度体系を成す高度専門職学院に統合されるため、学術研究センターからは外れることになる。
 学術研究センターは研究所の集合体として統合的に運営されるが、各研究所はそれぞれ独自に研究者を育成する。そのため、研究職を志望する場合は、基礎教育課程を終えた段階で、まず研究生として各研究所に「就職」し、先任研究者の下で実地訓練や、必要に応じて座学も受けることになる。
 学術研究センターは教育機関ではないので、教授職を頂点とする権威的な職階制システムは存在せず、職階制を廃した研究部門及びその内部の研究プロジェクトごとの責任者制度によって運営される。
 こうして学術研究センターは研究機関として純化され、教育制度体系から外れるのではあるが、生涯教育体系と全く無縁というわけではない。前回も触れたが、生涯教育は多目的であり、教養の向上も目的に含まれ得る。
 そのため、学術研究センターは生涯教育機関とも連携し、センター研究員が生涯教育機関で講師として講座を持ち、その研究成果を社会還元する試みは積極的に行なわれるであろう。そのような場としての生涯教育機関の実際については、次節で改めて述べることにする。

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