ザ・コミュニスト

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共産党の危険な野心

2015-09-26 | 時評

従来自他共に認める野党中の野党・日本共産党が「国民連合政府」なる政権構想をぶち上げ、おそらく結党以来初めて政権への本格的な野心を見せている。もっとも、共産党はかねてより綱領でも「民主連合政府」の構想を提示している。

しかしそれは、「日本共産党と統一戦線の勢力が、国民多数の支持を得て、国会で安定した過半数を占め」たうえでの「統一戦線の政府・民主連合政府」とされ、具体的には「民主連合政府は、労働者、勤労市民、農漁民、中小企業家、知識人、女性、青年、学生など国民諸階層・諸団体の民主連合に基盤をお(く)・・・・・・政権である。」と規定されている。

その実現可能性はともかくとしても、綱領上の「民主連合政府」とは、要するに共産党主導での「連合政府」であって、他党との単純な「連立政府」ではない。ところが、今般の「連合政府」構想は「戦争法」(安保法)廃止を目的とした4党1会派(民主、維新、社民、生活、無所属クラブ)との選挙協力・連立という内容であるから、驚きと波紋を呼んでいるのだ。

反共勢力にとっては、たとえ連立であれ、共産党が政権与党入りするのは天地がひっくり返る悪夢であろうが、非党員コミュニストの目からしても、今般の構想には幾多の危険性が認められる。

党派政治が相対化されている地方政治ならいざ知らず、安保法廃止一点での合意で政権樹立という曲芸は国政ではまず無理であろうが―肝心の安保法自体をめぐっても野党間には温度差がある―、仮に成功しても、現在のように野党が断片化した状況では、93年の細川「非自民」八党派連立政権以上に不安定な「野合」政権となりかねない。

ただ、文字どおりに安保法廃止だけを目的としたワン・イシューの暫定政権なら目的達成後、早々に退陣・解散総選挙で手仕舞いすることもできようが、その後、自民党政権が復帰して再び安保法を制定し直せば、すべては元の木阿弥だ。

最近の選挙での伸張で、党が調子に乗るのはわかるが、巨大与党とはなお象とチーターぐらいの差がある現実は否定できない。そういう限界内で可能な等身大の目標は、来年の参院選で再び与野党逆転の「ねじれ」を生じさせ、さらに衆院選では連立与党を安定多数割れに追い込むための選挙協力くらいである。

しかし、現実にはそれすら、確実なめどは立たない。本来なら重要法案をきわどい手法で強行成立させた安倍政権は年内にも解散総選挙に出て、改めて選挙の審判を受けるべきだが、かれらがそのようなリスクを犯すはずもなく、来年まで冷却期間を置いての総選挙となるだろう。

一年間は、安保法の強行によっても大きく揺らいではいない政権支持率を立て直すには十分な時間である。断片化した野党にとっては、一瞬高まった野党への関心を維持するには長い時間である。共産党がそうした現実認識に立たないとすれば、デモの余韻で相当に多幸症的状態に陥っているとしか考えられない。

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