
1985年(昭和60年)の年末の時代劇スペシャルとして日本テレビで放送された作品
これか紅白歌合戦の裏番組としては当時はかなりの高視聴率を叩き出し、後に毎年紅白の裏番組に日本テレビは時代劇を放送するのが数年続きました
私は数ある忠臣蔵の映像作品の中でこのドラマが1番好きなんですね
忠臣蔵と言えばオールスターキャストと言うのが定番ですが、この作品も大石蔵之介は里見浩太朗、吉良上之介は森繁久彌、浅野内匠頭は風間杜夫…その他にも名優から小粒なアイドルも含めて豪華なメンバーを揃えて大型時代劇の名に恥じない作品
二日間で約5時間のドラマだけに各赤穂浪士達のそれぞれの事情や夫婦愛、親子愛など細かいバックボーンも描かれています
短いエピソードだが、グッと来るような演出と情感のある三枝成章の音楽がいちいち泣かせます
このドラマで私が特に印象的なのは垣見五郎兵衛の下り
討ち入りを画作する大石蔵之介が垣見五郎兵衛の名を語り、潜伏する為に宿を取る
しかしそこに本物の垣見五郎兵衛が現れどちらが本物か?と対峙する
開き直った大石はガンとして自分は垣見五郎兵衛と譲らないんだが、決定的な証拠が出て偽物とバレる…しかし大石の風呂敷の家紋を見て本物の垣見五郎兵衛が事情を全て悟り、自分こそ偽物として敢えて引き下がる…まさに武士の情けを見せる垣見五郎兵衛扮する西田敏行の芝居がいいんです
深々と頭を下げる涙を浮かべ大石蔵之介…最高の役者が作り出す名シーンであります
基本的な流ればよくある忠臣蔵の展開だが、細かいエピソードの積み重ねが作品の幅を広げていき、そのエピソードもしつこく描かれる訳ではないのでダレる事なくテンポよく描かれる
森繁久彌扮する吉良上之介も圧巻の悪役ぶり、仇討ちされる前に舞を踊るのは不自然に見えるが、ある意味時代劇として一種の様式美なようなものか…
多岐川由美さん初め、女優陣も男のドラマの中にちょうどいいバランスで配置され、昨今ここまで上手く作られたTVドラマはあまり見かけない
下手なバラエティよりこう言う重厚で見応えあるドラマを復活させて欲しいです
また主題歌が良いんですよ
当時は忠臣蔵で音楽と言えば三波春夫先生が浮かんでくるイメージだったが、浪曲調ではなくいわゆるニューミュージック系の曲(今は演歌のカテゴリーに入るんかな?)
で堀内孝雄が歌う「憧れ遊び」
♪雪を掻き分けサクッ、サクッ、サクッ
と言った三波春夫節全開の浪曲調でなく
♪君を花に例えたら 笑うだろうか
から始まる小椋佳の詩による忠義の為に死んでいく男達のそれぞれの愛する人への想いのようなラブソングが絶妙な場面で流れて泣かせます