黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『中井英夫作品集 Ⅲ』中井英夫(三一書房)

2008-08-02 | 読了本(小説、エッセイ等)
1827年9月、仏蘭西ブルタアニユのフゼエル。ポンムルウル男爵の城館に巴里からやってきた、若い作家志望の男オノレ・バルザツク。
オノレの父・ベルナアルが男爵と親しかったことから、そこに身を寄せることになった彼は、王党派木菟党の反乱の中心地であるそこへ、作品を書く為にやってきた。
ある日、顔半面が火傷でひきつり、右眼はつぶれて、口はうさぎ口、という醜い容貌の男が、オノレに会いたいといって訪ねてきたといういたという……『麤(あら)皮』、
かつては一世を風靡した魔術師Q。それから何十年と過ぎ、すっかり落ちぶれてしまった彼は、ある日、亡き妻Rの“伝言”を聴くようになる……『幻戯』、
地下のバアで働いていた男は火をつけ、飛び出した。向かった先は、銃器店。そこは違う次元の断面のようなところで……『銃器店へ』、
私がその老人を初めて見かけたのは、晩春の暮れ方。まるで見えない階段を昇るかのような動作で、“確かにここいらの筈”と呟く老人。そのふた月後、その姿を見かけた私は……『翼のあるサンダル あるいは蟾蜍の記』、
青年はひたすら夜を待った。夜になれば親しい友人のような顔をして“彼”が訪れてくれるからだ。行きつけの近所のスナックで出会い、会話を楽しむようになった相手は……『影の狩人』、
西武線に飛び込み自殺した青年・宇陀青史。彼の家は、父・草史、祖父・樹一郎と三代連なる一族で、毒草を育てていた……『死者の誘い』、
雑誌のアンケートで好みの異性のタイプとして“寝顔の美しいひと”と答えた女流画家・斉木みねの存在を知り、惹かれる太田三郎。やがて、三郎は銀座で開かれているみねの個展に行き、そこから彼女と親しくなる。みねのアトリエへと招かれた三郎だったが……『星の砕片』、
同じ広告会社で働く友人・柚木皓の生まれ故郷である、日本海にある小さな島T**に、彼とともに渡った私。そこには、彼の家族…父・律、母・紅らが住んでいて、彼らの家に泊まることに。その夜、私は妖しい夢をみて……『鏡のなかへの旅』、
青年・峻は、土堤で空き瓶に呼び止められる。かつては人間だったという空き瓶は、自分がその姿に至るまでの身の上を語り……『空き瓶ブルース』、
岡田三輪子は、同じ職場で働く年下の青年・矢島峻に着物を仕立て、プレゼントした。しかし彼は、山に出かけて行ったまま帰らぬ身に。その後、理想の男性・八木沢太一郎に出会い、付き合い始めた三輪子だったが……『藍いろの夜』、
山の手の家に、夫・葉室康雄とともに暮らす麻子は、赤緑色弱を抱えていた為に、子供を持つことを躊躇していた。ある日、知り合いである柚木夫人から、祖父が中将だったという高校生・相沢滋人を紹介された麻子は……『青髯公の城』、
女子大の助教授である兄・早田隆之に呼ばれた裕。隆之の妻・歌乃が謎の置き手紙と、彼女に似たこけし、そして暗号を残して消えたのだという。彼女の行方を探す為、東北の地を訪れた裕は、途中で出会った宮下青年と共に暗号を解きつつ、その行方を追うが……『人形たちの夜(抄)』を収録。

中井さんの自選短編集。テーマは『変身』。
この全集は、『虚無への供物』の巻と、何冊かは読んでいましたが、これは未読。今回は『麤皮』を読むためだけに借りましたが、『虚無~』テイストなお話もあったり、ぐるっとそれまでの内容がひっくりかえってしまうような結末のものがあったりと楽しめました。

<08/8/1,2>


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