黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『ひなこまち』畠中恵(新潮社)

2012-07-30 | 読了本(小説、エッセイ等)
十月の炬燵開きの日。長崎屋に櫓炬燵を作りに来た指物師の荷に紛れ、一つの木札を手にした若だんな・一太郎。
そこには「お願いです、助けて下さい」とあり、五月の十日までにと期限も書かれていたものの、あいにく相手がわからない。
そんな中、若だんなの友人である、小乃屋の七之助と冬吉の兄弟が助けて欲しいとやってきた。
先頃、上方にある本家、唐物屋乃勢屋で隠居をしていた祖父が亡くなった。祖父は彼らを可愛がってくれたのだが、親戚たちは江戸に出た彼らのことを疎んじ、生前から財産が渡らないように念を押す始末。
それでも、祖父がろくでなしの船箪笥と呼ぶ箪笥と、そこに入っている根付を兄弟に遺してくれたのだが、伯父の乃勢屋と、その妻の兄である叶屋が、店から何か持ち出すのではないかと疑い、渡す前に中を確認しようとしたら、抽斗が開かなかったという。
開かないのならば渡すことはできないと一悶着の末、ひとまず叶屋の江戸店に預けられたが、そこで怪異が起きているらしい……“ろくでなしの船箪笥”、
近所の味噌屋の大店・加津屋の二階で、落語会が開かれていると聞いた若だんな。過保護な佐助たちを何とか説き伏せ、皆で出かけることに。
本島亭場久という噺家が、怪談話を披露していたのだが、その最中に侍が突然怒り出し、場久に斬りかかったことから、その場は大混乱。
翌日、餅がしゃべり出したり、藤兵衛が昼間からおかしな夢を見たり、皆が悪い夢を見ているかのよう。
上野広徳寺の高僧・寛朝に悪夢払いの札を頼むことにするが、どうやら札の獏が逃げ出したらしく、効き目がないという……“ばくのふだ”、
浅草にある人形問屋平賀屋が、美しい娘を一人雛小町に選び、その面を手本にして、立派な雛人形を作ることになったという。それはさる大名家に納められる品で、その家では跡継ぎたる若君を、昨年二人、あいついで病で亡くしたばかりだということから、新手の側室選びかもしれないという噂がたち、江戸中その話で持ち切り。
選者としては若い娘が縁者にいない人間が望ましいということで、藤兵衛が選ばれるのではないかと日限りの親分は語った。
そんな中、木戸の外に気配を感じ、木札の主ではと後追った屏風のぞきは、うっかり川に落ちてしまい大騒ぎ。気配の主は、日本橋に住む古着売りの娘・於しなだった。雛小町選びに際し、着飾る娘たちに売る為の古着の傾向を、藤兵衛の好みを知って、仕入の対策を練ろうと様子を伺おうとしていたらしい。
ところがそこへ彼女の父が、店の着物が盗まれたとやってきて……“ひなこまち”、
春になり花見に行きたいと言い出した若だんな。妖達も一緒に、上野の広徳寺へ泊りがけで出かけた。
そこに関東河童を率いる大親分・禰々子が現れ、先の一件で西の河童が助けられた礼にと、河童の秘薬を持ってきた。
しかし怪我は治るが痛さが五倍になるものなど、ちょっとひ弱な若だんなには使えない薬ばかり。
そこへ安居という侍が突然現われて、惚れ薬を譲って欲しいという。おまけに自分の女性の好みを禰々子に語り出し、彼女に殴られても、応えた様子のない変わった人物。どうやらその薬を飲ませたいのは、仏門に入りたいと言い出した自分の奥方・雪柳であるらしい……“さくらがり”、
雛小町を選ぶ日が、五月の十日だと知った若だんなはその選者を引き受けてしまう。件の木札の主が、その関係者なのではないかと考えてのことだが、佐助や仁吉たちからはお小言をくらう。
そんな中、安居に譲った黄色い薬…何が起こるかわからない薬…を飲んだ雪柳が、店の前にいたという子供を連れてやって来た。その薬を飲んだのに何も起こらないというが……“河童の秘薬”の5編収録の連作短編集。

シリーズ第11弾。
雛小町探しという名のミスコン話が、そこかしこで騒動のネタに。そして木札で助けを求めてきたのは誰なのか、というのが今回の全体を通した謎かな。
安居さんと雪柳さんは、また出てきそうな気が(というか出てきて欲しい/笑)。

<12/7/30>


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