黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『鳥のうた、魚のうた』小島水青(メディアファクトリー)

2012-06-17 | 読了本(小説、エッセイ等)
小学六年生の夏休み。幼い頃亡くなった姉の存在を知った孝志は、彼女に会ってみたいと鶏を祠に供えて願う。
かくして彼の目の前に現われた人の頭をつけた鶏は、『木綿のハンカチーフ』を唄うことで姉らしいと知れた。彼女が棲む無人の廃屋にたびたび出かけていたが、そんな様子をクラスの不良・尾崎たちに見つかる。
姉は彼らの前で不吉な予言をして……『鳥のうた、魚のうた』、
出産までひと月に迫り、実家に帰省していたわたし。
久しぶりに旧友の飯島亜紀子と話していたところ、“安藤くん”が亡くなったと聞かされる。かつてイナゴの佃煮が好物だといったわたしをからかった彼。
その後、周囲にたびたび虫が置かれるようになり、その事件の犯人が安藤くんだという噂が広まって……『安藤くんのプレゼント』、
ある日、浜に打ち上げられた怪魚。その胃袋から人魚があらわれた。
彼女の歌声を聞いた村人たちは、皆、海を目指して身を沈めて、二度とは戻らず、漁村には耳が聞こえない蝉丸だけが残された。
その人魚にせいと名付け、一緒に暮らし始めるが……『豊漁神』、
鷺達に傅かれる姫と呼ばれる少女は、人の夢を見た。見慣れぬ鵲が一羽、尾長に追い回された末、鷺たちの群れにたどり着いた。夢占をするという鵲に、占ってくれるようにと頼む姫。
車の後部座席に身を横たえたみのりは、罰なのかもと考えた。
初夏の早朝、ジョギングしていたみのりは、野良猫の轢死体を埋葬しようとしていた男に出会い、声をかけた。しばらく後に再会した男とジョギングするようになった。
そして今、その男の運転する車の後部座席に身を横たえたみのりは、罰なのかもしれないと考えた。
記憶を遡り、小学三年の折、あまり好きではなかった近所の女の子・えいちゃんが、怪我をしたのを笑ったことを思い出す……『アンのこめかみ』、
草屋敷に建つ古アパート、月光荘の一室を借りている友人の柿崎が、わたしに電話してきた……八月の熱帯夜だというのに、部屋の中に雪が降っていると。
昨年、学生時代に知り合った妻・雪子を亡くした柿崎。彼女はわたしの友人でもあった。
その雪子の遺した、形見の鏡台が原因だという。そこにはお化けが棲んでおり、白い手が伸びているのを見たというのだが……『雪女を釣りに』、
伯母の明子から、自宅で絵画教室をしている従兄の松雄とその息子・トリ(秀一)の世話を頼まれた奈々。
玉虫の死骸を、ひと夏のうちに三個見つけ、それを七日間しまっておくと、会いたいと願った死人につかのま会わせてくれるという、土地のおまじないを祖母の志乃から聞いたことがあった。
トリから玉虫を貰い、一週間たった頃、三人の幼い子供たちが現われた。彼らは死んだ玉虫で、奈々の願いを叶えに来たという……『去ぬ夏は甘苦きとぞジャムの瓶』の6編収録。

幻想短編集。表題作は第6回『幽』怪談文学賞短編部門大賞受賞作。
装丁は印象的な青。さりげにペンネームの由来だという蛾も潜んでいたり。
背筋が凍るホラー、というよりは、ひんやりとした手触りを感じるようなお話が多めかな。
今後が気になる作家さんかも……虫は嫌ですが;

<12/6/17>


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