黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『パスタマシーンの幽霊』川上弘美(マガジンハウス)

2010-05-21 | 読了本(小説、エッセイ等)
あたしたちは海の中の穴に住む。ときどき、穴から出て、町へさまよいだしては、人と暮らしたり。女のひとそっくりになったあたしは男のひとに出会う……『海石』、
近所の人・染谷さんと知り合ったわたし。彼女は、いんちき霊感商法で売るための石を拾っていて……『染谷さん』、
従姉妹のさえ子の結婚式に出席する為、母にひっぱられ、デパートにワンピースを買いにいったわたしは、そのお店の店員・三木さんに出会う。その翌週、観に行った友達のライブで彼女とばったり顔を合わせてからというもの、たびたび話すようになって……『銀の指輪』、
わたしの、いちばん上の兄の娘・一子ちゃん。彼女は、年の割りに大人びていて、とても真面目な女の子でクロスワードパズルを作ることに凝っていて……『すき・きらい・らーめん』、
料理が下手なあたしは、料理をしない恋人・隆司の部屋でパスタマシーンを見つけた。問い詰めるとそれは祖母のものだという。死んだあとも、幽霊になってときどき出てきて、パスタを打ってくれるのだというのだが……『パスタマシーンの幽霊』、
バスケ部の元部長・足立伸吾とつきあっていたあたしは、彼に受験を理由に別れを告げられながらも、あきらめきれず弁当を作って校門前で彼を待っていた。そこへ、数学コンテストで金賞を取って表彰されたことのあることから、顔を知っていた少年・勝呂友紀がたまたまあらわれて……『ほねとたね』、
たびたび誠子のベランダに姿を見せるコロボックルの山口さん。十分の一ほどの大きさしかない彼に片思いをしているのだが……『ナツツバキ』、
三十歳になってから、やたらともてるようになったわたし。なりゆきで四人の男性と同時につきあうことになってしまった。そんなある日見かけた万年筆……『銀の万年筆』、
幼い頃に事故で両親を亡くした弥生ちゃんは、年上のいとこのまるちゃんに引き取られていた。
そんな彼女と、高校の水族館同好会で知り合ったあたし・栗子は、「まるちゃんと結婚したら?」となんでもない気持ちで言ったのだが……『ピラルクの靴べら』、
別れをつげられた中林から呼び出され、会ってしまったあたし・杏子。けれどその時かぎりで、その後連絡はない。おかまの修三ちゃんには、しわしわの黒豆だといわれ……『修三ちゃんの黒豆』、
茨城のひいおじいちゃんの家には火鉢があった。それを“きんたま火鉢”と呼んでいたひいおじいちゃん。大学卒業間近のわたしは、姉から昔から男にうまれたかったと聞いて……『きんたま』、
あたしの人生の節目にあらわれる、不可思議な、あたしそっくりのかたちをとったものを“しっぽ”と呼んでいる。今までに八回あらわれた、そのしっぽだったが……『お別れだね、しっぽ』、
夫は十年前になくなり、息子たちは独立した。一人で暮らす私のところには、くちぶえのうまい小さなヤマグチさんがやってくる。彼は、大きなヒトを好きになったのだというが……『庭のくちぶえ』、
代々伝わる家宝の富士山…それは富士山の形をしたバックル“富士さん”。それにはデートを成功させてくれる力があるというのだが、わたしの恋はなかなか続かず、思いあまったわたしは富士さんを捨ててしまう……『富士山』、
十歳の誕生日から輪ゴムをつなぎはじめたあたし。
とても変わった家族の間で育ったあたしは、輪ゴムのかたまりを揺らし続ける。十年働いた会社をやめ、足ツボマッサージで働きはじめたあたしは……『輪ゴム』、
おなじ職場の川成チーフと、もう二年も一緒に住んでいるあたし。彼は既婚者だが、別居状態。存在感の薄さから、うす味のだしで煮たかぶのようだと表される彼だったが……『かぶ』、
中林からの紹介で、六カ月前から品のよい老婦人・和子先生の料理教室に通っている杏子。一度はふられた中林とふたたびつきあうようになる中で、彼は結婚を申し込んできた。そんな中、和子先生から彼と結婚するつもりなのかと問われ……『道明寺ふたつ』、
恋人の亮介と喧嘩して飛び出したあたしは、公園で出会った倉橋さんに、「女は男をいたぶるな」とお説教される……『やっとこ』、
二年先輩の原田誠子をみていると、あたしはなぜだかいらいらする。意味もなくおどおどとしている態度のせいか。もてるのに、自分ではそれを知らない彼女は……『ゴーヤの育てかた』、
ときどきむしょうにおむすびを作りたくなるわたし。
一年前に陶芸家の潮入さんと知り合い、奥さんがいる彼に、片思いしていて……『少し曇った朝』、
大学四年の秋、フランスにお別れ旅行に出かけた恵一とあたし。ところがパリは、さんざんで……『ブイヤベースとブーリード』、
直江くんに失恋して、たくさん泣いたわたし。歩いている最中さらに思い出して泣きそうになったわたしは、かわりにちょっと吠えたところで、生け垣から老婦人が現れ、おおかみかと思ったといわれる……『てっせん、クレマチス』の22編収録。

短編集。基本は一編完結ですが、一部連作になっていたり。
どれも短いながらも、淡々とした、微妙なこころの揺れを描いた川上さんらしい味わい深い作品ばかり。
個人的には表題作と、『ナツツバキ』あたりが好きかな~。コロボックルの山口さんのお話は、もうちょっと続いて欲しい(笑)。

<10/5/20,21>



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